No.11 歪んだ塔と蒼い剣 - 8
いきなり配られたアリの巣の様なこの画像。
それが地図であると堂々と言い切った後、その地図上に表示されている不可思議なマークの答えすらも皆に言い張ったスウェントル。
現在右上に位置する「赤い点」はボスの居場所であり、中心部の下側に位置する「青い点々」は自分達プレイヤーであるということ。
そんな考えを密かに抱いていたソーマの事など露知らず、プレイヤー達は彼の一語一句に耳を傾け、彼─スウェントルは今後の作戦について話し始めた。
「この点は僕達とダンジョンのボスだ」
そして作戦の説明は、この一言から始まった。
急にこんなものを配られて、これを地図だと決めつけられて、挙句の果てにはこの点は自分達だと言う。
そんな驚き続きの説明をされて「はい、そうですか。」と簡単に鵜呑みするものは流石にいなく──、
「何でそうすぐに断定出来るんだよ!?」
「もしかしたら罠かもしれないじゃないっ!」
彼が説明を始めた矢先に、その様な言葉も飛び交ったりしたのだが「では青い点の数を数えて欲しい」そう言われて点の数えた後、その数が転送されたプレイヤーの数である32と一致した上で──、
「罠だとしてもそれを頭の隅に入れておけば対処は出来るだろ?」
そんな風に追い打ちをかけられてしまい、声を上げたプレイヤーが縮こまったのは束の間であった。
そうして、スウェントルは説明を続けた。
しかし先程の展開を見て、皆これ以上何か言ったとしても、よく言えば対処、悪くいえば言い返される ということを理解したからなのだろうか、その後彼の説明を妨げる者は誰1人として現れなかった。
「そして、これはそれを前提にした作戦であると考えておいてくれ。取り敢えず僕達は今から、左側に沿ってダンジョンを進んでいこうと思う」
スウェントルが思い描いている作戦は、簡単に言えば以下の通りであった。
まず現在地である第2の始まりの場所である程度の準備をする。主にポーションの残りの確認、武器等の整備などだ。
そしてそれが終わり次第、プレイヤー全員で地図を確認しながら左上に向かってダンジョン内を進んで行く。
方法は至ってシンプル。狭い空間内でも隊列を組み、できる限り最小限の魔力と体力を使ってモンスターを倒していく。そして1度の戦闘を終える事に先頭の集団が後ろに下がり、交代で戦闘を行うと言うものだ。
そしてこのような隊列を組み、左上へと向かっていくのには訳があった。
「今からやろうとしているのは、ダンジョン攻略じゃない」
スウェントルが声を張って皆に目的を伝える。
「ここのモンスターの強さがどれ位なのか皆に体感してもらうために行うものだ。だから、勝てないと分かれば無理はしないでほしい」
狭い中でも隊列を組み、順番に戦闘を行うことによって全員が相手の強さを把握する。
そしてそれを元に最終目的がどれ程の強さなのか予測し、計画を練る。
スウェントルがこの様な事を提案する背景には、そんな目的が隠れていたのだ。
そして、何故進んでいく方向が左上なのかと言うと──、
「僕が左上に向かって行こうと思ったのにも理由がある。出来る限り、ボスとの遭遇は避けたいからだ」
地図を完全に信用してしまってはいるが、現在の所ボスは右上から右下へと向かっている。そのため、自分達はその逆である左から進んでいくことによって遭遇率を少しでも下げようという考えがあったからだった。
そうして全プレイヤーに作戦が伝わり、如何にも不安や緊張感が漂っていると言った表情をしている者もいる中で、一同は第2の始まりの場所の奥でこちらを見つめている3つの別れ道の1番左側。
最もボスの遭遇率が低いと思われる道の暗闇の中へと潜って行ったのであった。
※
「ポーションは緊急時以外出来るだけ使わないでおいてくれ!回復やエンチャントは近くのメイジに頼む方がいい!」
恐怖心を煽るような暗く、静かな一本道。
第2の始まりの場所から左側の道を進み、少し経った頃。相変わらず先頭で舵を切っているスウェントルが口元に片手を当て、戦闘前に後ろに向かってその様な注文をした。
後ろにいるプレイヤー達の中でも反応はバラバラであり、緊張しているのか、首だけを縦に振る者も居れば、やる気が出てきたかのように武器を上に掲げながら返事をする者。そして少数の人々は、残念ながら無反応であった。
因みにソーマ達は現在、スウェントル一行の近くの列に入り込んでいた。いわゆる先頭集団と言うやつだ。近くで声を上げる彼に対し、少年の場合は小さく返事を返すだけで他には何もなかった。
道は戦闘が出来ないほどでは無かったが、数多く存在するダンジョンの中では比較的狭い方ではあった。ざっと、5、6人が横に並んで歩けるレベルではある。
近くにある壁は薄茶色い土や砂で作られており、足元も砂のような砂利の様なザラザラとした物質で出来ていた。
そして奥の方は目を凝らしても見ることは出来なかったが、少し前の方までは壁付近でフワフワと浮かんでいるエルドの光のお陰で、見る事は可能であった。
1歩、また1歩。一定のリズムを刻みながらも、体感時間では相当ゆっくりと足を動かしていく。実際にはその倍ほどには早く進んでいたのだが。
その様なおかしな状態下に置かれながらも、ソーマ達、スウェントル達の視界の先に何やら中位の影がポツポツと浮かび上がってくる。
モンスターが近づいてきている証拠だ。時間が経つにつれて、リザードマンのような長く太い尻尾が生えていることがわかる。
「来るぞ...」
スウェントルが小さくそう呟きながら、近くにいる者達に声を掛ける。
それによって彼も含めた先頭のプレイヤーが手を強ばらせながらも武器を取り出した。徐々に歩くスピードを緩めていく。そうすると、ソーマが体感していた足の早さに段々と現実が追いついてきている事に気がついた。
そうして、敵の姿が彼らの前に現われる。
「あれは......待て、あれはなんだ?」
目の前に現れたそのモンスターは、彼らが想像していたものとは少し異なる姿形をしていた──、




