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LEGEND MONSTERS(レジェンド・モンスターズ)-The Extra-  作者: プリンアラモード
分霊の書
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⑦神威の黒龍―――バール

全8話に及ぶ「分霊の書」シリーズの第7弾。書は『神威の黒龍』、著はバール。

『バッファルの書』における黒龍・バハムートの伝承を借用して描かれた物語。傍観者としての著者自身が物語の視点となっている。

バールはかつてシャインズ王国の騎士であり、ガープという朋友がいた。しかし、彼は自分の手でガープを殺すことになり、ガープ復活という野心のために悪魔と契約を交わしたのであった。終盤にはこの愚行を物語に合うよう、上手く自嘲している。なお、この物語は晩年に記されたものである。

今回はその中から大戦の部分を中略して、一部を抜粋。元の黒龍に関する伝承との類似点や相違点、著者が自分の愚行をどのように自嘲するかを考えながら読んでほしい。

 ある神代の暮れ方のことである。私は悪しき龍の生誕を知覚した。龍は巨大樹に移る王龍、女帝龍に並べて魔界で生まれ、その漆黒の鎧に覆われ未だ内に秘めた邪悪を神に隠したままである。

 だが、私は世界そのもの、あらゆる物理を超えて存ずる概念である。つまりは、傍観者であり、神にも人にもこれを告げる権利はあらぬ。いや、そもそも告げる口すら持たぬのである。

 そして、私の危惧は神も知らぬ間に現実と化す。その黒き龍、すなわち黒龍は魔界を暴れ、やがては天界へと続く門を破壊。天界へ渡らんとした。これを初め、知覚したのは魔界の王、閻魔であった。閻魔は女神ヘラより悪魔の軍勢を賜り、彼らに

「行け、悪魔よ。天界魔界の安寧のため、かの龍をここに連れ戻すのだ。」

と命じる。ヘラに絶対服従を命じられたこの悪魔らはこれに従い、龍の後を追った。

 この知らせはすぐに天界へも届いたが、やはりかつて決別した神と女神のでは、天界と魔界とでは弊害が大きすぎたのだ。天界の神に上手く伝わったのは龍が天界へ向かっているとのことのみである。そのため、龍の後ろを行く悪魔を見るなり、龍の暴走に託つけ魔界が天界を攻めに来たとの誤解を生んだ。天帝は天使を集め、

「行け、我らが御使いよ!悪魔もろともかの黒龍を打ち払うのだ!」

と。天使たちは悪魔が黒龍に攻撃するのが見えていたが、天帝と仰せには決して逆らえない。

 「βροντη.」

「αστέρι.」

「πλανήτης.」

「βροχή.」

「λόγχη.」

などと何処か古代神国の言語で詠唱。雷が轟き、星が流れ、球が爆ぜ、光が降り、また線が走った。多くは黒龍に阻まれ消えていくが、不発のものは悪魔に直撃、次々落とす。これに龍は酷く喜んだ。ただし、その喜びは龍のみの喜びであり、この天使介入を好機と見た。

 己が天に向かうとの知らせはある。ただ、その知らせに己の邪悪を伝えるものはない。奴らが己を襲うのは単に天界侵入の罰が故である。しかも、悪魔を倒すとも己を倒すではなく、己を倒すに託つけて悪魔を倒さんとする志を強く感ずる。ならば、己は身を翻し悪魔をともに倒すことで罰は免れ、あわよくば天界の安住も叶うではないか、と龍は推し量る。

 この策はすぐ実行に移された。黒龍は今までの悪魔無視を停止し、その口から暗紫の炎を放つ。受けた悪魔らは燃え尽き落下し、免れたものは天使の攻撃、その不発で落ちていく。天を利用し襲い来る龍はまさに凶悪。成す術なく悪魔は天界魔界の間で死屍累々を呈した。

 このことがかつて天界魔界に生じた不和、及び戦乱の起因となる。瞬く間に天と魔は戦火に包まれ、悪魔と天使、あるいは天の神と魔の民が斬り合うことを始めた。


 * * * * *


    (中略)


 * * * * *


 さて、第二次の天地争乱が発してからいくらの年月が経ったであろうか。世界である私には時の概念はなく、それを分かるはずもない。ただ、地上には人が爆発的に増え、天も魔も完全に荒廃し、おそらくは酷く長い時が経っているの違いない、と推し量ることはできた。

 しかし、未だ争乱を終結する気配を見せない。気付けば黒龍と天との間には同盟関係が築かれ、永世中立と相互防護、勝利龍の神化が約束されていた。

「黒龍よ、悪魔の軍勢を焼き尽くせ!」

と天帝が言うと黒龍は炎を放って悪魔を燃やし、突如現れた冥神ハデスが黒龍を狙えば、雷槍でそれを貫いた。

 そこへいよいよ、魔界の王と神が現れた。閻魔と女神ヘラである。

「相変わらずあなたは愚行を重ね続けるのね、ゼウス!」

ヘラが天帝を睨み付け、

「ゼウス様。大変申し訳ありませんが、これが魔界の取り決めですので。討ち取らせていただきます。」

と閻魔も丁重な言葉とともに剣を構える。

「ほう、ではまずこの黒龍を倒して見せよ。」

だが、ゼウスは怯まず黒龍をけしかけた。

 先手を取ったのは黒龍の方であった。暗紫の炎が閻魔に飛び、彼を包む。

「これしきの炎...地獄の業火に比べれば足元にも及ばぬわ!」

だが、彼は焦ることなくその手の剣でこれを振り払った。続いて、彼は飛び立ち同じ剣を振り下ろした。だが、龍の黒き鎧がそれを許さない。

「効かぬぞ、魔界の王よ。」

と龍は閻魔の心へ直接言葉を送っま。だが、閻魔は構わずただ一点に剣を打ち付けた。

 これを知ると龍は身を翻し、長い尾で閻魔の鳩尾を殴りつけた。彼は後ろに飛ばされた。その体が空中にある内、龍は先程よりも強い炎を放ちこれで包んだ。しかし、これもまた閻魔は払ってしまい、

「冥王弦月刃。」

と反撃に移った。閻魔の剣から放たれたみ赤の三日月は龍の首を狙う。ゼウスはすぐこれを雷で打ち払い、隠れて力を口先に力の収束を開始した。炎の球は徐々に肥大化し、剣を鎧に打つも弾かれ無視され、炎の球そのものを斬ろうにも無形に炎は間もなくもとの形態を取り戻した。

 故、成す術なく龍の炎を最大にまで成らせてしまった。閻魔は逃げるがその炎の巨大は無意味に帰し、その圧倒的な威力を前に燃え尽きた。人の生誕からこの時までの間、死人を裁くを休めなかった冥王の死であった。

 冥王を失ったヘラはゼウスと龍が共にでは勝てぬと感じ、魔界へと降りていった。この戦いの内に悪魔も全滅、天使も全滅。天と魔には神しか残らず、魔界のヘラが降伏したことでこの戦いを終結を迎えた。


 黒龍は天帝に神になることを許され、闇と炎の神として君臨した。その象徴たる闇は力を収まることなく増幅を起こし、炎はその力を単に補い、天界魔界の修復の頃には天帝にも迫る強神と化していた。

 そして、この龍は元より悪しき存在である。天帝から力を奪い、天を乗っ取らんとしていた。しかし、あの時、永世中立を誓った天帝では己にそのようなことはできぬ。そこで傍観者である私に契約を提案し、天帝を世界から追放することを求めた。無論、普通の思考であればこれを受諾する余地はない。だが、私は自分でも気付かぬ野心があった。『枠としての世界』から『中身として世界』への転換、つまりは人への回帰である。ここを突かれた私は、

「良いだろう。」

とこれを許し、天帝の存在そのものを世界から排除してしまったのだ。

 こうなると黒龍が天帝の後継となるは必然である。龍は従わぬ神を天から追放し、思うがままに天使を動かした。私はこれを変わらず傍観者として見届けた後に人として母の体に宿り、生まれ育つ。

 世界を捨てた今の私には天界が今いかなる様かなど知る由もなく、ただ妄想に更けるのみである。

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