①『天地の大激戦』―――(不明)
全8話に及ぶ「分霊の書」シリーズの第1弾。書は『天地の大激戦』、著は不明。
『バッファルの書』における新天地争乱から様々な世の真理を説き、かつて神への猛烈な批判として、多く神秘学者から誹謗中傷すら浴びせられた。
しかし、後に起こったナビリス革命によりその価値が認められるようになり、今では復刻版も出るようになっている。
ここではその中から「愛」についての項を抜粋。「愛」とは何か、「恋」との違いは何か、また「恋愛」が生まれる時とは何か...作者の考えるその全てが、新天地争乱を基に語られる。
宇宙の誕生から永遠の平和までの描く神話書『バッファルの書』には約1000万年前、つまり神代の時に起こった争乱についても記されている。
『いずれ、新しき天地争乱起きて・・・・・・』という冒頭から、『・・・・・・いと長きこの戦はこれにて終わる。』という末尾で終わる、全五章に渡る天地争乱の記をそれぞれ要約すると次のようになる。
やがて、新たな天地争乱は起こり、その争乱は以前に起こったものよりも激化した。天界には多くの神々が付いたが、神の少ない冥界も数では劣っていなかった。この時、天変地異とともに生と死が繰り返され、その中でバッファル島にのみに生息するレジェンドモンスターが誕生した。そして、この戦いは10万年ほど続くこととなる。
10万年も続いたのには大きな理由があった。それは争乱が激化するに連れて、地球内部にある並行世界の者が戦いに参加するようになったことである。神々は争乱のため、並行世界の統治が疎かとなり、中には冥界側の理念を聞き、神々に反逆する者もいた。その理念とは「愛の理」であり、その者たちにゼウスはもう1柱の主神であるヘラを裏切り浮気を重ねた、卑劣な神だとされた。
並行世界の干渉により、地上との境界が崩れ、その中にも争乱の影響が出るようになった。その影響は様々だが、世界樹が炎上したことが特に際立っていた。巨大なこの樹はすぐに燃え尽きることはなかったが、クイーンドラゴンに曰く万年もあれば燃え尽きるとされ、それは地球の滅亡も意味していた。しかし、キングドラゴンはこの争乱に参加し、野放しにしてしまった。
クイーンドラゴンのみでは世界樹の炎上を遅らせることもできず、それから1000年近くが経った。その頃、ゼウスの妾であ
るノルンは2柱の子であるクロノスを生み、このクロノスは2年も経たない内に立派な青年へ成長した。成長したクロノスは、長引く争乱と世界樹炎上の事実を知り、彼の持つ時空操作によって世界樹の炎上を止めることができた。
しかし、このクロノスはヘラによって呪い殺され、またノルンも愛を裏切った報復としてヘラの手下である悪魔に刺殺された。これに怒ったゼウスは権能を使って無理矢理、人を神の兵力として使役した。これを知ったクロノスはノルンとともに閻魔と交渉し、クロノスのみが冥界を抜けた。その後、彼はゼウスに語り掛け、争乱を止めるように言った。やがて、ゼウスが決断を固め、自ら終戦を告げ、長い戦いが幕を閉じた。
ここでまず、問題になってくるのは、『愛の理』である。
確かに浮気とは愛を裏切る行為であり、神であろうと、いや、神同士であれば人同士にも同じく許されざることである。だが、それは『愛の理』の名の下に妾やその子を消したヘラも同じである。そもそも、それはその『愛の理』は偽物のはずである。
本来、「愛」とはゼウスとヘラによって、自らを象徴に万物へ等しく分配されたものである。同時にそうあるべきであり、天使がたった1人ではなく、その総体に「愛」を注ぐのもそのためだ。
それをその根元であるゼウスが自らが優先されると勘違いをし、はたまたヘラが復讐という形でこの「愛」そのものを裏切るたいうのは非常に滑稽である。しかも、ゼウスはさらに人類から一時的でも「愛」を奪っているのだ。これらは「愛」を否定しかしない。
そして、世の中には少なくとも、愛を裏切れば報いがあるとの認識も存在している。だが、それは全くの見当違いだ。先述の「愛」の分配ということを鑑みれば、報いがあるのはは自らの「愛」を押し付けた時であることに納得できるだろう。
神秘学の立場から見れば、「愛」こそが真に平等な概念である。我々が持つ「愛」は誰が誰に対して、示しても求めても良いという融通の効くもので、その提示と祈願の並存の際に「恋」は生まれ、見事、それが一致するとそれが「愛」と合わさり「恋愛」として発展するのだ。
この「恋愛」とは相手を失うだけで、「恋」に退化し、自分で示し求めることはできても、相手から示され求められということは不可能である。これはとても悲しい事実であり、たかが平等の「愛」のためにこのようなことがあってはならない。それを知らない無責任な神こそがゼウスとヘラである。




