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コクと甘味のある葡萄ジュースで脳を活性化させる事にした私は、ゴクゴクと流し込んだ。
「・・・君は葡萄ジュースが好きなんだな」
その様子を見ていた彼は、呑気にお茶を飲んでいる。
(・・・やっぱり、ダメ。
結婚の話の前に、幽霊の事を解き明かさない限り、集中できそうもない)
私は飲み干したコップをトレーに戻した。
「私、解明したい謎があるのです。
それが解決しないと用件を話せません」
「なんだ?謎って?」
時間もないので、私はカボチャサラダに手を掛けながら口を開いた。
「さっきの彼女はいったい何ですか?」
「ただのクラスメイトだが?」
甘いカボチャの味を堪能したいところだが、そんな暇はない。
私は即座に飲み込んだ。
「では、何故今まで彼女をいないかの様に扱っていたのですか?
てっきり、私にしか見えない幽霊なのかと思っていたのですよ」
次はキノコハンバーグを口に入れる。
「幽霊って・・・。
君みたいな才女が、そんな非科学的な事を思う方が驚いたな」
彼は嫌味ったらしく笑っている。
「話を逸らさないで下さい。
無視をするなんて、酷いと思いませんか?
人格者だと思っていたのに、とても残念です」
「・・・悪いが、君は何を知っていて僕が悪いと言っているんだ?
被害者は善で加害者が悪だと言いたいのだろうが、それは見方によって立場が変わるとは思わないか?」
「・・・それは、どういう事ですか?」
すると彼はカトラリーを置き、手を組んで話し始めた。
「あれは、この学園に入ってからすぐの事だったーーー」
1年と2ヶ月前、入学式を終えた僕は自分のクラスへ入り、自分の席を探した。
すると彼女、名前はレゼラブル男爵令嬢が隣の席だったんだ。
最初は、クラスメイトとしての付き合いだったのだが、段々と彼女は僕に恋愛感情を抱いた。
だが僕は、彼女をそういう対象として見ていなかったから、少しずつ距離を置いたんだ。
けれど彼女は、それを恋の駆け引きだと思い込み、なおも追いかけて来た。
だから僕は、彼女に伝えたんだ。
「僕は君を好きではないし、これから先も好きになる事は無い。
だから、付きまとうのをやめて欲しい。
とても迷惑だ」
・・・だが、彼女には何一つ伝わらなかった。
きっと、僕の言葉を聞いていないのだろう。
そんな自分の感情ばかりをぶつけてくる彼女に嫌気が差した僕は、何度も何度も言い募った。
それこそ、気が遠くなる程にね。
だが結局、彼女は自分の事が最優先なんだろうな。
僕の気持ちや心情を気遣ってくれる事は無い。
・・・だから思ったんだ。
話を聞かない奴の話を、僕も聞く必要はないって。
「ーーーどうだ?
これが、君が僕を悪だと言った真相だよ。
さぁ、今のを含めてどう思った?」
私はカトラリーを置いて居ずまいを正した。
「・・・よく知りもしないで口を挟んでしまって、本当にごめんなさい。
けれど、今の状況が続くのは、お互いに良くないと思います」
彼はカトラリーを手に持ち、食事を再開させた。
「もちろん、分かっている。
だが今日、君を婚約者だと言った時、初めて僕から目を離しただろう?
・・・いい傾向だと思ったんだ」
(うん?・・・それって・・・ちょっと待ってよ!)
「あの!私を巻き込むつもりですか?」
すると彼はニヤリと笑った。
「巻き込むだなんて人聞きが悪いな、婚約者様?
僕達は言わば、運命共同体だ。
互いの問題は、互いに協力して解決しないとダメだろう?」
(なんで!?何でこんな事になってるの!)
婚約する前よりも面倒になっているではないか。
だから思わずポロッと出てしまったのだ。
「・・・いっそ、彼女を婚約者にして下さいよ」
その瞬間、急いで口を押さえたが時すでに遅し。
私の目の前には、綺麗な笑顔を浮かべた魔王が座っていた。
「今更何を言い出すのかと思ったらそんな事か。
君には少し、考え方を変えてもらわないといけないな。
・・・そうだ。用件があったのだろう?
もう昼休憩が終わるから、また放課後に迎えに行くよ」
そう言い置いた彼は、いつの間にか食べ終わったトレーを持って去って行った。
私は、最後に残っていたプチトマトを口に放り込む。
(・・・あれ?これって、放課後も潰れるってこと?)
モグモグしていると、妙に酸っぱいプチトマトに身体が震えた。
(ーーーそれじゃ、今日もナナフシに会えないじゃない!)
その現実に気付いた私の心も打ち震えたのだった。




