第17話 加工
基本的に暇人であるザックとダイアナは、ほとんど興味本位で俺たちについてきた。
どこにかって?
リリスのところだ。ただ、用があるのはリリスではなく、彼女の支配下にあるドワーフのほうで、彼らにオリハルコンの原石を加工可能なものに変えてもらう。いやいっそ加工してもらったほうがいいのかもしれないが、どう思う、ダイアナ?
「いいんじゃないかしら。ドワーフだって加工したがるわ、きっと」だそうである。
希少な魔法金属の塊を見せびらかして持ち運ぶような趣味はないので布で包み、リリスの里に赴いた。
伝説のパーティ3人とシャノンで。これがまずかった。
以前と同じように門番が出迎えてくれたが、俺たちの姿を見ると血相を変えて、上司を呼び出しに行った。しばらく待たされる。
なんだ、どうした。すげー偉そうなやつが来たぞ。勲章の代わりなのか魔物の牙を加工したネックレスをつけ、質のいいローブを羽織ったエルフが三人、俺たちを出迎えた。彼らの顔は蒼白で心なしか震えている。
リリスが彼らの後ろから現れた。
「何か、新たな脅威が、現れたのか?」
「何言ってるの、リリス」ダイアナがぽかんとして尋ねた。リリスは困惑している。
「だって、わざわざ、パーティ全員、集まるなんて、尋常じゃない、事態が、おこったのかと」
ダイアナはああ、と納得したように言って、
「尋常じゃないっていえばそうね、尋常じゃないわ」
お偉いさんたちが動揺している。三人のうちの一人、女性のエルフが今にも倒れそうになっている。
「魔族の大群がこちらに押し寄せているのですか?」震える声で三人のうちで最も年長のエルフが尋ねた。
「いや、そういうことじゃなくて……もう見せたほうが早いわね」ダイアナは俺の方を見る。俺とシャノンは地面に置いていた包みを開く。
「これ、は?」
「オリハルコンの原石よ。ミスリルもあるわ。ドワーフたちに加工してもらおうと思って」
エルフたちは口をあんぐり開けて、魔法鉱石を凝視した。
ドワーフの工房に魔法鉱石を運びこむと、彼らは戦争に勝ったように大喝采した。彼らは飢えた民衆のように魔法鉱石の周りに集まり、我先に触れると感動の声を上げ、それが収まると、どう配分して何に使うかの議論を始めた。
「本当に自由に加工してしまって構わないのですか?」工房の長である年配のドワーフが俺に尋ねた。
「ああ、いい。少しくらいなら失敗しても構わない」その言葉にドワーフたちはさらに歓声を上げる。
ドワーフたちはすでに俺たちの存在を忘れてしまったように話し合っている。議論が長引きそうだったので、工房を出た。
ドワーフたちがどのように魔法鉱石を使うか議論するのに一日かかり、それから実際に加工するのに数日かかった。
「このようになりました」テーブルの上に加工されたものたちが並ぶ。
インゴットがそれぞれ一つずつ。剣、矢、杖もそれぞれ作られている。そして二つの合金で作られたナイフが一つ。
ザックたちは興奮した声を上げた。
剣は等身大ではないものの、ザックは今すぐにでも試し切りをしたそうに、柄をつかんで揺らしている。
ダイアナは杖を手に取ると、何かを試すように魔力を流した。すぐに顔が満足げにほころぶ。
「すごい魔法伝導率」ダイアナは杖に頬ずりした。
リリスも矢を見て、ダンジョンで試そうとうずうずしている。
あのーさ、お前たちのじゃないんだけど。歓喜する彼らを見てそうも言えず、俺はため息を吐く。シャノンもザックと同じようにミスリルの剣を持ってはしゃいでいる。
「ルベル様! すごく軽いですよこれ!」
はいはい、わかったわかった。俺はインゴットを二つとも布に包むと、工房長に言った。
「すまないな。報酬はこれを売ったら渡しに来るよ」
「貴重な体験をさせていただいたのに報酬までいただけるのですか」
「これからいろいろと世話になると思うからな」
そういって握手をした。
さて、いくらになるのやら。




