第15話 伝説の魔法使い ダイアナ2
ギルド創設のめどは立ったものの、よくよく話を聞くと金貨3枚で買えるのはギルドを創設する『権利』だけであり、それは要するに形のない、建物も何もない状態しか確保できないということで、このままでは青空ギルドなる、単なるおばちゃんたちの井戸端会議、ないし、おじいちゃんたちの雑談会程度のものにしかならない。
それはギルドではない、雨天中止のギルドなど聞いたこともない。
またもや金が必要なわけだが、今持っているオリハルコンとミスリルでは足りない。
「というわけで取りに行こうと思う」俺は言った。
ダイアナは目を輝かせたが、シャノンは口をひん曲げやがった。
「オリハルコンが地面一面に……、それにミスリルが壁いっぱい……、高性能な実験器具が作れるわ」とダイアナ。
「またあそこに行くんですかぁ?」とシャノン。
「待っててもいいぞ」
「ううう」シャノンはうなっている。そこまでしてどうしてついてこようとするんだね。
「早速行きましょ」ダイアナは立ち上がると、俺の腕を抱いた。やわらかい胸が押し付けられる。俺の二の腕が完全に谷間の中に埋没する。
それを見たシャノンが目を見張って、自分の平均的な胸を見て、俺をにらむと立ち上がった。
「私も行きます」そう宣言すると、ダイアナと反対側の腕を抱く。
両手に花である。うらやましいだろこの野郎。
あの、シャノンさん、肩外れそうなんで力弱めてくれませんかね。
俺は《ダンジョン生成》スキルを使って、ザックのダンジョンへの扉を開いた。
「ぎゃあああああああああ」ダイアナが叫ぶ。シャノンも2回目なのに叫んでいる。
あ、ダイアナにちゃんと説明すんの忘れてたわ。でっかい魔物がいますよって。きもいのもたくさんいますよって。
両耳が耳鳴りするほど叫ばれて、俺は顔をしかめた。ムカデみたいにおびただしい足を持つ魔物が俺たちのすぐそばを通り過ぎる。
「無理無理無理無理! デカすぎ! 怖すぎ! キモすぎ!」
ダイアナが俺の体にしがみつく。俺のあばらが悲鳴を上げている。
「早く、オリハルコン、採取してくれ」息も絶え絶えに俺はいう。
「え! 何言ってんの! 無理に決まってんでしょ! ぎゃあああああ!」
またあのヒルみたいな口の粘膜野郎が徘徊している。俺の盾を踏むんじゃねぇよ。やつが踏んづけたところにどろどろの液体がくっついている。気持ちわる。
黒衣のドラゴンが今日は起きていて、俺たちの方をじっと眺めている。相変わらず、オリハルコンでできた巣の中で体を伏せているが。俺たちに興味があるのかと思ったが、すぐに目をそらして、また眠りについた。
「ぎゃあああああああああ」太く短い蛇みたいな魔物が転がっている。
もうたくさんだ。うるせぇんだよ。
「中止だ! 中止!」俺は言うとスキルを発動して、扉を開いた。
「どうしてオリハルコンとミスリルがあんなにたくさんあるのかわかったわ」ダイアナの店に戻る。
彼女は木製のコップを震える両手で持って、あの得体のしれない飲みものを飲んだ。
「あの手の魔法鉱石は魔力の結晶みたいなものなのよ。強力な魔物たちが住むダンジョンで、冒険者がやつらを何度も倒したときに、魔物の死骸がダンジョンに吸収されて、魔力の塊となる、それが魔法鉱石」
ダイアナはコップをテーブルに置いた。まだ体が震えるようで、肩を抱くようにして腕をさすっている。
「わからないのは誰が魔物を倒しているかってことよ。魔物同士の戦闘では死骸はダンジョンに吸収されずに、小さな魔物たちの食べ物になるわ」
「ああ、それなんだが」
俺はちゃんと説明した。ダンジョンには前に行った時もあの手の魔物がうじゃうじゃいたことを。あれはザックのダンジョンであることを。
ビンタされた。
「なんでそれを早く言わないのよ! ルベルのバカ! っていうか、ザックのほうがもっとバカだけど」
「すんません」
「そういうことだったの……。ザックはずいぶん強くなってるみたいね」
「人間の動きじゃありませんでした」シャノンが空を見つめて言う。
「強くなったといえば、俺の魔法が尋常じゃないレベルになってる」
俺が火炎球で山肌を削った話をすると、彼女は小さく頷いた。
「ダンジョンにはふつうダンジョンマスターと呼ばれる魔族がいるでしょ? 彼ら魔族はダンジョンが魔物を生み出せば生み出すほど、ダンジョンのレベルが上がれば上がるほど、魔力を強大にしていくのよ」
「それは聞いたことがある」
「今のあなたはザックのダンジョンのダンジョンマスターでしょ? ザックがバカなことをすればするだけ、ダンジョンのレベルが上がって、その結果あなたの魔法が強力になってるのよ」
そういうことか。それは、なんとも、
ザック、なんてことしやがるんだ。感謝半分、呆れ半分といったところ。
「それはともかく、どうやってオリハルコンを回収する? 私いやよ、周りにあんなうじゃうじゃいた状態で回収するの」
「じゃあ、ザックに頼んで、周りの魔物蹴散らしてもらえばいいだろ。それで文句ないか?」
ダイアナは唇を尖らせた。
「あいつに会いたくない」
「なんで」
「べたべたしてきて、うざいからよ」ダイアナは頬杖をついて、顔をそむけた。
「ずっと俺の盾張っておくから、近づけねぇよ」
「それなら安心」ダイアナは笑った。




