第14話 伝説の魔法使い ダイアナ1
さらに翌日。俺たちは、伝説のパーティで最後の一人、ダイアナに金をせびりにきていた。
「ここってどこですか」ダンジョンから出るとシャノンは言った。
「ウォルテア。魔法学校がある街」
俺たちは門を潜り抜け街の中に入る。魔術の街というだけあって、歩く人々はみな奇妙な格好をしている。ローブに身を包み、猫背で、せかせかと歩いていく。
彼らの間を縫ってやってきたのは街の端のほうにある、小さな魔法道具屋。
「本当にここであってるんですか?」
「あってるよ」
俺は店を見上げる。貧相な店だが、三階建てで石造りってだけ、俺らよりもましか。
「おい、お前ら冒険者か」通りかかった男が俺たちに尋ねる。
「ええ、そうですよ」シャノンが答える。俺は違うんだけども。というか君も違うよね。
「その店に入るのはやめたほうがいいぞ。店番してるやつはいいが、上に住んでる店の主人が頭のおかしいやつでな。外に出るときは笑い顔の仮面をつけてるし、ほかの店では値が張るくせに何に使うかわからないものばかり買っていく。怪しいやつがやってる店だぞ」
注意しろよ、そういって男はいなくなった。
俺はシャノンを見て苦笑いしてから戸を開いて店に入る。
「いらっしゃい」出迎えたのはダイアナではない。彼女は上の階で研究に没頭しており、店のほうはもっぱら、弟子に任せっきりにしている。
「ああ、ルベル様。お久しぶりです」
「ルベル!?」
上から叫び声が聞こえた、とおもいきやどたどたと階段を下りてくる音がして、ダイアナが奥のドアを開いて飛び出した。
「久しぶりー!!」勢いそのままにダイアナが俺に抱き着く。
俺は彼女の胸についたデカい脂肪に思いきり頬骨をとらえられ、首があらぬ方向に曲がる。胸が俺の顔の位置にあるということは、彼女が思いきりジャンプしたということで、そのあとに起きることはわかると思うが、俺の首は今度は彼女の方向に引っ張られ、さらに変な音がする。
「元気だった?」赤い長髪を振り乱してダイアナは叫んだ。俺は今元気がなくなったよ、と首をさする。
「ごめんごめん」あははと笑って、さらに抱き着くダイアナ。
シャノンが眉間にしわを寄せてダイアナをにらんでいる。怖い。
「何しに来たの?」
「ちょっと相談事があってね」
「なになに? なんでも相談乗るわよ。さ、上がって上がって、狭いけど」
ダイアナはそういって俺の手を引いて、上の階へ連れて行った。テーブルの上に乗っていた羊皮紙の山を地面に置くと、
「さあ座って」と彼女は席をすすめた。
「ギルドを作る?」ダイアナは目を見開いた。
テーブルの上には彼女特性の飲みものが木製のコップにつがれていたが、それは粘度の高い液体で深い緑色で、表面がてらてらと光っていた。彼女はそれをうまそうに飲み干すとつづけた。
昔から変わらずひどい舌バカだった。弟子がかわいそうだ。
「それでお金が必要なのね」
「金貨3枚くらいだろギルド作るのに必要な金は」
「まあ街にもよるけど大体そのくらいね」彼女は顎をさすってそう言った。
「俺は金がなくてね。懸賞金がまだ残ってれば、いくらか貸してほしいんだが……」
それを聞くと、ダイアナは苦笑した。
「助けたいのはやまやまなのよ。でも私もお金ないわ。この店作るのに結構使っちゃったし、それに研究にもだいぶかかったわ。今は下でやってるお店で食いつないでる感じ」
「そう、か」
ついに金の出どころの候補がすべて潰れてしまった。俺は額を手で押さえた。あれだけ豪語して、この結果だ。ギルド作れませんでしたぁでは話にならない。
くそ、どうする。
「ねえ、さっきから気になってたんだけど、ルベル、ポケットに何入れてるの? そんなに小さいのに魔力がすごいことになってるわよ」
「ん?」
ポケットに何か入れていたか? 俺は手を入れて、テーブルの上に載せていく。
大銅貨数枚。銀貨3枚。
それに、ああ、ザックのダンジョンで見つけた白と青の石。
「ちょ、ちょっとそれ見せてくれる?」ダイアナは二つの石を手に取って、眺めた。
徐々に目が開き、口が開く
「どこで見つけてきたのこれ! それもこんな雑にポケットに入れとくなんて!」ダイアナは叫んだ。
「いや、ダンジョンの中にあったんだ。あとで鉱石に詳しいやつにでも聞こうと思って」
「これ! ……この青いやつ」ダイアナが指でつまんだ石を俺の顔に近づける。
「これ、オリハルコンの原石よ! それにこっちの白いやつはミスリル!」ダイアナの指は震えている。
「いくらすると思ってんのよ! オリハルコンはこの親指大の大きさで金貨2枚はくだらない! ミスリルだって同じ大きさのこれで金貨1枚はする!」
「え」
「つまりね、ルベル。あなたギルドを作れるくらいの鉱石を持ち歩きながら、ギルドを作るためのお金を探し回ってたのよ」




