第13話 伝説の弓使い リリス2
シャノンがものすごく嫌そうな顔をした。
「私はいきませんよ」
「俺だって行きたくないわい」
俺は周囲に不可侵ダンジョンを形成して、リリスのダンジョンに足を踏み入れた。
壁に永久光石が埋め込まれていて、迷路の道を照らしている。
一体あいつはどこまで進んだんだ? 探すこちらの身にもなってほしい。
1階層の角を曲がると血の跡が地面についている。魔物の血は消えてしまうから、これはリリスのものだ。
俺は血液をたどって、2階層に降りていく。
何かが俺のダンジョンにぶつかった音。姿は見えない。
血液をたどると、リリスの腕が地面に落ちている。触りたくねぇが仕方ない。俺は俺のダンジョンに小さな穴をあけて、白く細い彼女の腕を拾い、切断面を地面のほうに向けて持っていく。
ここからそう遠くへは行っていないはずだ。おそらく大量の出血で力尽きて倒れているだろう。
その考えは甘かった。
俺の目の前に、リリスを咥えた魔物が現れる。2本の脚にはかぎ爪、体は丸く、顔は巨大な口と、全方向についた目で構成されている。
魔物は俺を見つけると、リリスを離し、消えた。
俺の周囲にめぐらされた盾にぶつかる音、と同時に、やつが地面を蹴った音が聞こえた。細い通路の壁を走り、行き止まりを折り返してこちらに向かって来たのだろう。
壁にかぎ爪の走行痕がついている。俺にはその動きが全く見えなかった。
かぎ爪が俺の盾をとらえた。それは一瞬の出来事。やつは俺の目の前にいる。壁を蹴った音がいまさらになって聞こえてくる。
こいつ、音より速く動けるのか?
俺の手に負えない。それはリリスにとってもそうだ。そこまで速い生物を俺は知らない。
俺はリリスのもとに走ったが、魔物が一瞬で俺の目の前に現れる。
くそ、邪魔くせぇ。かぎ爪は通らねぇんだよ。学習しろ、カス。
俺は魔物をよけて前進する。ほとんど匍匐前進だ。相変わらず魔物は、俺の行動目的を理解できていない。俺の無敵の盾に喧嘩を売り続ける。
俺はリリスのもとにたどり着き、遺体を俺のダンジョンの中に収容する。今すぐ回復をしたいがこう何度も攻撃を食らっている状態では無理だ。
もし意識が途切れてダンジョンが消えてしまえば、その瞬間、俺が死んでしまう。これだから移動用ダンジョンは面倒だ。固定ダンジョンは意識しなくてもそこにあり続けるのに。
俺はリリスを背負い、服を血液で汚しながら一階層に上っていく。しつこい魔物は自分の獲物を奪われたことにようやく気付き、今まで以上に俺に攻撃してくる。
攻撃してくるのはいいが、お前、そのせいで怪我してるぞ? 魔物はダンジョンにぶち当たらるたびに傷を負い、血液を垂れ流している。
バカな奴だなあ。速さを得るために脳みそを代償にしたらしい。羽虫くらいの脳みそしか入ってねぇんじゃねぇか?
俺はようやくダンジョンの入り口に到達し、そこで立ち止まる。リリスのダンジョンを出たら彼女は本当に死んでしまう。
二つの柱の間を通り抜ける前に俺は立ち止まった。
後ろから魔物が迫っていたが、見えない壁に何度もぶち当たり、ぶち当たった衝撃で体のいたるところをさらに怪我したようで、最終的にはかつての速度も出ず、勝手に死んだ。
最後まであほな奴だった。
魔物は地面に溶けるように消滅する。
俺はリリスの腕をあるべき位置において回復魔法をかける。腕がもとの位置に戻り、傷跡も残らず治癒する。リリスは目を覚ます。
「私、は……、あ、腕が……」
「ダンジョンのレベル加減したつもりだったんだけどな、だめだったみたいだ」
俺はリリスとともにダンジョンを出た。
「ルベル様! 血が……」
シャノンは俺の体を見て驚愕した。
「俺のじゃなくてリリスのだ」
「すまない、ルベル」リリスは頭を下げた。
「いや、俺のせいだし」
リリスは腕をじっと見ている。
「どうしてこんなきれいに治せるんだ? 何か高級なポーションを使ったのか?」
いや、それがですね。俺はリリスに事の次第をすべて話した。腕を失った人間まで回復できること。それがギルドを作るきっかけになったことまですべて。
「そう、か。能力が上がって、いるんだな。とにかく、感謝する、ルベル。蘇生と、腕を治して、くれたこと。この腕が、なければ、弓も引けぬ」
その後、リリスと俺はダンジョンのレベルを下げて、ともにダンジョンに入ることで魔物のレベルを鑑みて、適切なダンジョンを作り上げた。
「金は渡せなくて、済まないが、ギルドを作った、後は、必ず助けになる」リリスは俺たちが里から去る直前そういった。
「ああ。よろしく頼む」俺たちは握手をして別れた。




