表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/79

一杯やりましょう

泡盛って美味しいんですかね?

 修学旅行も一段落した次の週。

 山井(やまい)保梨(ほなし)、忍者は無事戻ってこれたということで、お酒を飲もうと保健室に集まる予定を立てていた。

 もちろん、生徒全員もう学校にはいない。


「泡盛、持ってきましたよ」


 と山井が一升瓶を掲げてみせた。

 ラベルには「泡盛」と達筆で書かれている。

 保梨はコップ三つとストロー、一本を準備していた。


「忍者さんは?」


 と山井が保健室を見渡して訊く。保健室には、忍者が見あたらなかった。


「あぁ、今忍者さんは校内を見回ってるんですよ。もう少ししたら来ると思います」

「そうですか──」


 山井は一升瓶をテーブルに置いて、近くの丸イスに腰を下ろした。

 保梨も丸イスを引っ張ってきて、少し距離をとって座る。


「……ふぁ〜……すいません」


 山井が欠伸を手で隠しながら言う。


「溜まってた分やってたら、夜遅くまで起きてることが多かったもんで──」


 とまた欠伸をする。


「大丈夫ですよ、気にしないでください」


 両手を振って、保梨は微笑んだ。


「……そろそろ来ますかね」

「どうでしょう──」


 二人で出入口を見ていると、ちょうどドアが開いた。


「申し訳ない、時間がかかってしまって……」


 と忍者が謝りながら入ってくる。


「大丈夫ですよ」

「そうですよ──さ、座って座って」


 保梨と山井は笑って、丸イスを勧める。

 忍者は失礼、と一言言ってから座った。


「じゃ、飲みましょうか──」


 と山井がコップに注いで、コップを勧める。

 すると保梨が、ちょっと待ってください──と言って立ち上がり、棚に向かうと、お菓子を取り出してきた。


「泡盛だけじゃあれかな、と思いまして……お煎餅をワタシが」

「かりんとうを拙者が買ったでござるよ」


 と保梨と忍者が言う。

 山井はおお、と言ってから口を開いた。


「ありがとうございます──じゃ、乾杯しましょう」


 三人でコップを掲げて、カンパーイとコップを軽くぶつける。


「……ふぅ。修学旅行、お疲れさまでした」

「お疲れさまでした」

「あっという間だったでござるな──」


 しみじみとコップを口に運びながら、三人は頷く。


「もう、いつもと変わらない日常ですよ」


 と山井がいただきます、とお煎餅を食べる。


「それでいいじゃないですか、皆の友情も深まったみたいですし」


 といただきます、保梨はかりんとうに手を伸ばす。


「修学旅行での、集団行動、考えて動くことを大切にしていってほしいでござるな──」


 ちゅーっとストローで、忍者は服の隙間から飲む。


「ですねー、自由な奴ばっかですからね」

「そうですか? 真面目な子もいますよね」

「数人ですよ、数人──」


 と山井は保梨に向かって言う。うちのクラスは大体自由な奴ばっかですよ、と次はかりんとうに手を伸ばす。


「そうでござるか? ん、美味いでござる」


 と忍者もかりんとうを食べる。


「そうですよ──皆自由だし、変……個性的な奴が多いし、大変ですよ」

「でも楽しそうですよね」


 と保梨が笑って山井を見る。

 忍者も頷いて、山井を見ている。

 山井は少し考えてから、ふっと頬を緩ませた。


「……ま、そうなんですけどね」


 と一口泡盛を飲む。


「あはは、やっぱり〜」

「生徒も幸せ者でござるな」


 少し頬を赤らめて、保梨は笑う。

 忍者は目以外隠れているのでわからないが、少し目の下が赤くなっていた。


「だといいんですけどね──」


 と山井は苦笑いした。



 それから他愛もない会話をして、飲み会は終了を迎えるのだった──





秋乃「酔っ払いの誕生か……」

章「失礼だぞ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ