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ケーキ屋さん

女子三人のお話。

 ある日の休み。関野(せきの)は腕時計をちらちら確認しながら、集合場所で待っていた。

 前々から、ケーキ屋に行こうという約束をしていて、それが今日なのだ。


「関野さーん、お待たせー」


 ヒナミが手を振ってやってきた。

 学校で見る制服姿とは違い、やっぱり大人びて見える。


「大丈夫だよ──あとは夏見(なつみ)さんだけだね」

「そうだね。今日はケーキいっぱい食べちゃお!」

「ふふ。食べ過ぎないように気をつけてね──」


 大丈夫だよ〜、とヒナミが笑っていると、柚子(ゆこ)が少し駆けてきた。


「ごめん、遅れちゃった」

「大丈夫だよ」

「うん、まだ二分前だから」


 と関野が腕時計を確認して微笑む。


「じゃあ、二人とも早いんじゃない」

「いや、その……楽しみで」


 と関野は照れ笑いして、


「私は早くケーキ食べたくて」


 とヒナミが笑う。

 それから、三人で顔を見合わせて笑った。



 関野の先導のもと、ケーキ屋に向かう。


「関野さんのオススメは何?」

「私のオススメは、イチゴたっぷりのイチゴタルトかな」


 とヒナミに答える。


「チョコケーキはあるの?」

「もちろん──」


 と関野に笑顔を向ける。

 二人は想像して、ふにゃっとにやける。


「二人とも顔が……!」

「あー、楽しみ〜」

「ほんとね──」


 嬉しそうに笑う二人を見て、関野は良かった……と安心する。


「あ、あそこ。ケーキ屋さん──」


 と関野が指をさした。

 少し先に、小さいながらも存在感のある建物が見えてくる。


「へー、結構大きいんだね」

「うん。店内も落ち着いてて、良い所だよ──」


 関野が先に店に入り、後に二人が続く。

 店内は、数人が席に座ってケーキを食べていた。


「いらっしゃいませ。ご注文は?」


 にこやかな店員が、関野たちに声をかけた。

 関野はイチゴタルトを注文し、ヒナミも同じものを頼んだ。柚子はチョコケーキを注文した。


「お持ち帰りですか? それとも食べていかれますか?」

「食べていきます」

「承知しました。あちらの席で、しばらくお待ちください──」


 店員が手で示した方に行き、三人は窓際のテーブルに、丸くなるように腰掛けた。


「すごいね、何か喫茶店みたい」

「でしょ? 私も初めて来たときはちょっとびっくりしたもん」


 と関野が苦笑いして二人を見た。


「だって『食べていかれますか?』って。ケーキ屋さんで初めてだよ」

「ほんとほんと──」


 ヒナミと柚子が話していると、店員がお盆に乗せてやってくる。


「お待たせいたしました。イチゴタルトとチョコケーキになります──ごゆっくりどうぞ」


 店員はケーキを置くと、にこやかに下がっていった。


「わー、すごいすごい! イチゴたっぷり!」


 とヒナミが感動というように、手を合わせる。


「チョコケーキもすごいね。ザ、チョコ、って感じ」


 と柚子も目をキラキラさせる。


「じゃ、食べよっか」

「そうだね、じゃ──」

「「「いただきます」」」


 それぞれ、フォークで一口サイズに切り、そっと口に運ぶ。


「……、ん〜! おいしい!」

「うんうん!」


 二人が頬を押さえて言うので、関野は可笑しくて少し笑った。


「はは、二人の反応が思った以上に良かった」

「だって、ほんとにおいしいんだもん」

「ほんと! すっごくおいしい」

「喜んでもらえて良かった──」


 と関野も食べる。

 口の中に、しっとりとしたタルトとイチゴの酸味と甘味が絶妙にマッチする。


「……おいしい」


 心から、関野は思った。

 


 食べ終わり、話題は自然と恋バナになる。やはり、女の子だ。


「柚子ちゃんは、舛田(ますだ)くんのこと好きでしょ?」

「ぶっ──な、なによ」


 突然ヒナミが言ってきて、柚子はお冷やを噴きそうになる。


「全然進展しないし。バレンタインはチョコあげるでしょ?」

「はっ?! いや、あげないことは、ない、けど……」


 と柚子はもごもごと口ごもる。

 それからパッと顔をヒナミに向けると言った。


「ヒナミだって、あげるでしょ?!」

「え? あぁ、うん。お世話になってる人とか、仲良くしてくれてる人にはね──関野さんは? 篠山(しのやま)くんにあげないの?」


 ヒナミに話題をふられ、関野は一瞬考えてから頷いた。


「あげるよ。仲良くしてくれてるから」

「やっぱり? じゃあ柚子ちゃんもあげるよね、舛田くんに」

「……う、ん」


 と柚子は顔を赤くして頷いた。


「じゃあ、頑張ろうね──」


 とヒナミが笑った。

 何を頑張るのか関野にはわからなかったが、うん。と頷いておいた。



「……じゃ、そろそろ帰ろうか」

「そうだね、帰ろう──」


 少し話して、そろそろお開きにしようとなった。

 代金を割り勘して、店を出る。

 空は夕陽がきれいだった。


「……きれい」

「ほんとね、きれい──」

「うん……」


 と三人は夕陽を見る。

 少しして、関野が口を開いた。


「今日は、ありがとうございました。楽しかった──」


 ヒナミと柚子は、顔を見合わせる。


「これからも、仲良くしてほしいです……」


 照れ笑いで言った関野に、二人も笑って頷いた。


「もちろんだよ!」

「よろしくね──」


 二人に笑顔を向けられて、余計に顔が熱くなる。

 関野は満面の笑みで頷いた。


「はい──!」


 二人と友だちになれて良かったと、改めて関野は感じるのだった──





秋乃「ケーキかぁ、章買ってきて」

章「嫌だね」

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