07 荒野の隠れ家:発見
荒野へ何度か足を運ぶうちに、オズは機律イドが真実を語っていたことを理解した。
少なくとも、嘘はついていない。
外郭の向こうに、人の暮らす街はなかった。
地平線まで続く乾いた大地。
砂に埋もれた建物の骨組み。
風に削られ、元の形すら分からなくなった残骸。
どれだけ歩いても、人の声は聞こえない。
通信を探っても、意味のある信号は拾えなかった。
飲める水も、食べられる植物も見つからない。
場所によっては、携帯端末の環境計が警告色を示した。
すぐに命を脅かす数値ではない。それでも、人間が長く暮らしていける土地ではなかった。
機律イドの言葉は正しかった。
ここには、人間が安心して暮らせるようなものは何もない。
ただ――あえて口をつぐんだことなら、ありそうだった。
誰にも価値を認められなくなったものが、荒野のいたるところに転がっていることだ。
「……最高じゃねぇか」
オズは砂の中から、潰れかけた金属の箱を引き抜いた。
元は何に使われていたものなのか、見当もつかない。
角は大きくへこみ、外板には深い亀裂が走っていた。
傾けると、内部で小さな部品が転がる音がする。
隙間から覗いているのは、何本もの細い配線だった。
近くには、錆びついたモーターが半分ほど砂に埋まっていた。
歯の欠けた歯車。
割れた回路基板。
用途の分からないスイッチ。
片方だけ残った小さなスピーカー。
どれも壊れている。
そのままでは何の意味もなく、何の役にも立たない。
機律イドなら、利用価値なしと判断するだろう。
オズには、そのすべてが宝物のように輝いて見えた。
持ち帰れるものを鞄へ詰め込む。
大きすぎるものは位置を端末へ記録した。
次に来た時、まだそこに残っている保証などない。それでも、荒野で誰かに持ち去られる心配だけはなさそうだった。
細い洞窟の入り口を見つけたのは、それから何度か荒野を歩いた日のことだった。
崩れた岩壁の根元に、縦長の裂け目が走っている。
人ひとりが身体を横にすれば、どうにか通れる程度の隙間だった。
オズは入り口の前へしゃがみ込み、小さな照明を差し込んだ。
光の先には、さらに奥へ続く空間がある。
「なんだよ。あるじゃねぇか」
肩を岩へ擦りながら、裂け目を抜ける。
数メートル進むと、急に左右の壁が離れた。
内部は思っていたよりも広い。
天井も高く、奥には乾いた岩肌が続いている。
雨水が流れ込んだ痕跡はない。
端末で空気と放射線量を調べても、短時間の滞在なら問題のない範囲だった。
何より、外からは簡単に見つからない。
オズは洞窟の中央に立ち、ゆっくりと周囲を見渡した。
「ここにするか」
誰へ確認するでもなく、その日からそこはオズの秘密基地になった。




