08 荒野の隠れ家:分解
放課後。
オールドベルに自分の信号を残し、監視システムの認識をごまかして外郭を越える。
洞窟の隠れ家で作業に使える時間は、日没までの数時間だけだった。
喫茶店が閉まる前には戻らなければならない。
店内に残した信号だけが、閉店後も席へ座り続けていれば、さすがに不自然になる。
限られた時間の中で、オズは少しずつ洞窟へ物を運び込んだ。
小さな部品は鞄へ入れた。
金属板は紐で束ね、地面を引きずった。
入り口を通らない大きさの物は、外で分解した。
外板。
配線。
基板。
内部の骨組み。
一度ばらばらにしてから洞窟へ持ち込み、内側でもう一度組み直す。
岩壁へ金属板を渡し、拾った支柱で固定すると、傾いた作業台ができた。
別の板を壁際へ積み上げ、部品を並べる棚にした。
左側には配線。
中央には歯車と端子。
右側には、まだ用途の分からないもの。
分類の基準は、オズにしか分からなかった。
最初に蘇らせようとしたのは、砂の中から掘り出した小型モーターだった。
外装は赤茶色に錆び、軸は指で押してもほとんど動かない。
オズは作業台へモーターを置き、外装を外した。
内部には、砂と固まった油が詰まっていた。
細い工具で汚れをかき出す。
焼けた配線を外し、別の機械から抜き取った銅線を巻き直す。
欠けた端子の代わりには、形の近い金属片を削って取り付けた。
小型電源をつなぐ。
モーターは一度だけ震え、そのまま止まった。
「惜しい」
端子の位置を変える。
二度目は、短い火花が散った。
「おっと」
焦げた臭いが鼻を刺す。
配線を確かめ、もう一度だけ接点を磨いた。
三度目。
古びた軸が震えた。
金属同士を擦り合わせる耳障りな音を立てながら、ゆっくりと回転を始める。
オズの口元が持ち上がった。
「まだ生きてんじゃねぇか」
そのモーターへ減速用の歯車を組み合わせ、金属製の枠へ固定した。
必要に応じて、先端部分だけを付け替えられるようにする。
鋼線を巻けば、重い物を引き寄せるための巻き上げ機になる。
円盤を取り付け、表面へ粗い研磨材を貼れば、錆びた部品を削るための研磨機になった。
最初に円盤を回した時は、振動に負けて土台ごと床の上を移動した。
「待て待て待て」
慌てて電源を切る。
固定用の足を追加し、岩の隙間へ金属棒を打ち込んだ。
二度目はその場に留まったものの、回転するたびに作業台全体が低い音を立てた。
まともな機械とは呼べない。
それでも錆びた金属板を押し当てると、赤茶色の粉が削り落とされた。
磨かれた部分だけが、鈍い光を取り戻している。
オズはその研磨機を使い、次の部品を作った。
一つのガラクタが、別のガラクタを蘇らせるための道具になる。
道具が増えれば、加工できる物も増えた。
洞窟の外で見つけた割れた発電パネルは、使える部分だけを切り出した。
数枚をつなぎ合わせ、岩陰へ固定する。
発生した電気は、古い蓄電器へ溜めた。
容量は小さい。
天候にも左右される。
それでも、洞窟の天井から吊るした照明を点灯させるくらいなら、どうにかなった。
初めて光がともった時、照明は激しく明滅した。
一度消えた。
もう一度ついた。
「安定しねぇな」
そう言いながら、オズは笑っていた。
洞窟の奥まで光が届く。
ただの岩穴だった場所に、作業台と棚が浮かび上がった。
その次に手をつけたのは、旧世代の映像表示機と思われる分厚い箱だった。
見つけた時には、半分以上が砂に埋まっていた。
背面は大きく膨らみ、現在の薄いモニターとは似ても似つかない形をしている。
重すぎて、そのままでは洞窟まで運べなかった。
オズは外で外装を外し、内部の部品を一つずつ取り出した。
厚い表示面だけは、修理したモーターを巻き上げ機へつなぎ、鋼線でゆっくりと引きずった。
洞窟の入り口では一度向きを変え、岩へぶつけないよう少しずつ内側へ滑らせる。
すべてを運び込むだけで、その日の作業時間はほとんど残らなかった。




