↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
10/21

08 荒野の隠れ家:分解

 放課後。


 オールドベルに自分の信号を残し、監視システムの認識をごまかして外郭を越える。

 洞窟の隠れ家で作業に使える時間は、日没までの数時間だけだった。


 喫茶店が閉まる前には戻らなければならない。

 店内に残した信号だけが、閉店後も席へ座り続けていれば、さすがに不自然になる。


 限られた時間の中で、オズは少しずつ洞窟へ物を運び込んだ。

 小さな部品は鞄へ入れた。

 金属板は紐で束ね、地面を引きずった。

 入り口を通らない大きさの物は、外で分解した。


 外板。

 配線。

 基板。

 内部の骨組み。


 一度ばらばらにしてから洞窟へ持ち込み、内側でもう一度組み直す。


 岩壁へ金属板を渡し、拾った支柱で固定すると、傾いた作業台ができた。

 別の板を壁際へ積み上げ、部品を並べる棚にした。


 左側には配線。

 中央には歯車と端子。

 右側には、まだ用途の分からないもの。


 分類の基準は、オズにしか分からなかった。


 最初に蘇らせようとしたのは、砂の中から掘り出した小型モーターだった。

 外装は赤茶色に錆び、軸は指で押してもほとんど動かない。


 オズは作業台へモーターを置き、外装を外した。

 内部には、砂と固まった油が詰まっていた。


 細い工具で汚れをかき出す。

 焼けた配線を外し、別の機械から抜き取った銅線を巻き直す。

 欠けた端子の代わりには、形の近い金属片を削って取り付けた。


 小型電源をつなぐ。


 モーターは一度だけ震え、そのまま止まった。


「惜しい」


 端子の位置を変える。

 二度目は、短い火花が散った。


「おっと」


 焦げた臭いが鼻を刺す。

 配線を確かめ、もう一度だけ接点を磨いた。


 三度目。


 古びた軸が震えた。

 金属同士を擦り合わせる耳障りな音を立てながら、ゆっくりと回転を始める。


 オズの口元が持ち上がった。


「まだ生きてんじゃねぇか」


 そのモーターへ減速用の歯車を組み合わせ、金属製の枠へ固定した。

 必要に応じて、先端部分だけを付け替えられるようにする。


 鋼線を巻けば、重い物を引き寄せるための巻き上げ機になる。

 円盤を取り付け、表面へ粗い研磨材を貼れば、錆びた部品を削るための研磨機になった。


 最初に円盤を回した時は、振動に負けて土台ごと床の上を移動した。


「待て待て待て」


 慌てて電源を切る。


 固定用の足を追加し、岩の隙間へ金属棒を打ち込んだ。

 二度目はその場に留まったものの、回転するたびに作業台全体が低い音を立てた。


 まともな機械とは呼べない。

 それでも錆びた金属板を押し当てると、赤茶色の粉が削り落とされた。

 磨かれた部分だけが、鈍い光を取り戻している。


 オズはその研磨機を使い、次の部品を作った。


 一つのガラクタが、別のガラクタを蘇らせるための道具になる。


 道具が増えれば、加工できる物も増えた。


 洞窟の外で見つけた割れた発電パネルは、使える部分だけを切り出した。

 数枚をつなぎ合わせ、岩陰へ固定する。

 発生した電気は、古い蓄電器へ溜めた。


 容量は小さい。

 天候にも左右される。


 それでも、洞窟の天井から吊るした照明を点灯させるくらいなら、どうにかなった。


 初めて光がともった時、照明は激しく明滅した。

 一度消えた。

 もう一度ついた。


「安定しねぇな」


 そう言いながら、オズは笑っていた。


 洞窟の奥まで光が届く。

 ただの岩穴だった場所に、作業台と棚が浮かび上がった。


 その次に手をつけたのは、旧世代の映像表示機と思われる分厚い箱だった。

 見つけた時には、半分以上が砂に埋まっていた。

 背面は大きく膨らみ、現在の薄いモニターとは似ても似つかない形をしている。


 重すぎて、そのままでは洞窟まで運べなかった。

 オズは外で外装を外し、内部の部品を一つずつ取り出した。


 厚い表示面だけは、修理したモーターを巻き上げ機へつなぎ、鋼線でゆっくりと引きずった。

 洞窟の入り口では一度向きを変え、岩へぶつけないよう少しずつ内側へ滑らせる。


 すべてを運び込むだけで、その日の作業時間はほとんど残らなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。