09 荒野の隠れ家:再構築
分解した部品を持ち込んだ次の訪問で、オズは表示機を元の形へ組み直した。
さらに次の訪問では、焼けた基板を調べた。
使えそうな部品を別の機械から外し、形の合わない端子を削って無理やり合わせる。
電源部分は、そのままでは蓄電器へ接続できなかった。
オズは新しい変換回路を組んだ。
何度も失敗した。
線を間違えて火花を散らし、部品を一つ駄目にした。
電気は通っているのに、表示面には何も映らない日もあった。
それでも、作業をやめようとは思わなかった。
失敗するたびに、動かなかった理由が一つ分かる。
次に何を試せばいいのかが増えていく。
何も起きない方が、よほど退屈だった。
その日も、オズは表示機の背面へ頭を突っ込んでいた。
接点を一つ磨き、配線をつなぎ直す。
電源を入れる。
低い音が鳴った。
表示面の中央に、細い光の線が走る。
「お」
光はすぐに消えた。
オズは背面へ手を伸ばし、調整用の部品をわずかに回した。
もう一度、電源を入れる。
表示面全体が青白く瞬いた。
次の瞬間、白と黒の粒が激しく明滅し始める。
音声はない。
意味のある文字も、映像も表示されていない。
ただの砂嵐だった。
それでも、砂の中に埋もれていた古い箱は、確かに光を取り戻していた。
「よし」
オズは作業台の前へ腰を下ろした。
頭上では、拾った照明が頼りなく明滅している。
壁際では、換気用に組んだ小さな送風機が、今にも壊れそうな音を立てていた。
研磨機は固定を追加したはずなのに、振動するたび少しずつ位置をずらしている。
安定して動くものなど、一つもない。
オズは砂嵐の映る画面を眺め、それから洞窟の中を見渡した。
「悪くないな」
シンギュラリ・シティでは、必要なものは最初から用意されていた。
故障したものは回収され、新しいものへ交換される。
役目を終えたものを、誰かが苦労して直す必要などない。
決められた用途以外へ作り替える必要もなかった。
ここには、何も用意されていない。
正しい使い方を教える者もいない。
何を置くか。
何を直すか。
何を作るか。
すべて、自分で決めることができた。
洞窟の入り口から差し込む光が、いつの間にか橙色へ変わっていた。
端末が短く振動する。
オズは時刻を確かめた。
喫茶店が閉まる前には戻らなければならない。
オールドベルの店内に残した自分だけが、閉店後も席へ座り続けるわけにはいかなかった。
「今日はここまでか」
名残惜しそうに表示機の電源を切る。
砂嵐が一点へ収束し、消えた。
続いて照明を落とす。
洞窟の中へ、元の薄暗さが戻ってくる。
オズは工具を片づけ、入り口へ向かった。
機律イドは、荒野には何もないと言った。
オズは、その言葉を否定するつもりはなかった。
ただ、何を「ある」と呼ぶのかまで、イドに決めてもらうつもりもなかった。




