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37話「蠱毒-デモン- その5 vsアゲコ」

 走って間もなくした頃のこと。私と同じように、アゲコモこちら側に向かって走り出したことが分かった。


(アゲコも気合十分ってことかな……)


 戦うのはあの日以来。

 あのとき私は、ただ逃げることしかできなかったので再戦に燃えていた。もっとも、向こうは知る由もないだろうが。

 私は開けた空間まで出ると、木刀を地面に勢い良く突き刺す。突き刺したまま、アゲコが来るのを待った。

 そして間もなくして彼女はやって来た。


「お待たせ! 友達だからって容赦しないよ!」


 ものすごい威圧感だった。

 ユニークスキルの勇者の光を身に纏っていて、神々しい光が体から放たれていた。

 あまりにも圧倒されすぎて、闘志すら削がれるような強大すぎるオーラ。

 だが、それでも倒してやる。私は相手の言葉に返答すら行わずに、勢い良く叫んだ。


「レアスキル発動、《爆爆!》」


 その瞬間のことだった。

 私の声に少し遅れて、辺り一面が爆ぜる。広範囲、かつ高威力。最大出力の爆爆。

 反動がデカすぎて、ライフが少々削れるほどの私の全力を今、アゲコに叩き込んだ。

 アゲコの叫び声が一瞬だけ聞こえたが、それも爆発音によってすぐさまかき消される。

 後先なんて考えていない。むしろこれくらいしないとアゲコなんて倒せないだろう。


(痛いっ……。けど、これで倒せた……はず……)


 私は反動による痛みに耐える。もはやまともに動くことも叶わないなかで、煙が上がるのを待った。

 やがて視界が晴れてきて目に映ったのは、


「ケホッ……ケホッ……。目がやられるなぁ……」


 私の全力を耐え切った、アゲコの姿だった。


「嘘……でしょ……?」


 どうやら、ユニークスキルの効果が十二分に発揮されてしまっているようだ。

 そうでもなければ、レアスキルを生身で、ましてや一般生徒が受け切れるはずもない。

 万策が尽きた。出会い頭のこの一瞬で、何と勝負の行方は決まってしまったのだ。


「その顔を見るに、もう手は残ってない感じかな? でもだいぶやばかったよ。ユニークスキルがなかったら絶対やられてたし、今の防御で力を結構持ってかれちゃった。私もまだまだだなーって……」

「化け物……」

「ふふっ、まあこれが現実だったらこうもいかなかったけどねー。これは相手が悪い人じゃない限りあまり効果はないからさ」

「……」


 アゲコは、


「それじゃあ終わりにしようか。ナキネちゃんが全部の力を注いだから、私も残ってる力を全部出そうかな? 耐えられちゃったら終わりだけど、条件は対等なほうが美徳だしね」


 そう言って一気に力を解放する。まだこんなに力が残っていたのかと、私は密かに絶望を覚えた。

 アゲコは、


「いくよ! レジェンドスキル発動、《楽観暗示》!」


 そう言って、剣を私に向かって直接振り下ろした。


(やだ……負けたくないっ……!)


 振り下ろされる刹那のうちに、私はそう思う。

 だが思ったところで何かが変わるわけではない。爆爆が通用しなかった時点で敗北は確定。

 暴走信者やオトナシ流はこの先のことを考えると絶対に隠さなくてはならない。つまりここから状況を逆転させることなんて……


 あ、一つあったな。


 私は思考した瞬間に、小さな声でぼそぼそと呟く。


「レジェンドスキル発動、《影鎧》……」


 私がそう発した直後、アゲコの木刀が振り下ろされて、周囲一帯が光に包まれて何も見えなくなった。

 誰も何も見えなくなるなかで、少しずつは光が収まっていく。そして皆が見たのは、


「な、何でぇ……?」


 力を使い果たしてその場に倒れ込むアゲコと、無傷のまま座り込んでいる私の姿だった。

 私は爆爆の反動の痛みに少しだけ慣れたので、木刀を拾ってゆっくりと立ち上がる。

 もう動くことのできないアゲコに木刀を向けて、


「ごめんね、私の勝ちだ」


 それだけ言って木刀を何度も振り下ろして、少しずつライフを削って倒す。

 ド派手な技が繰り出されたわりには、最後はあっけない地味な光景に終わった。

 アゲコの体が消失すると、どこからかクラッカーの音が一斉になって、カラフルな紙吹雪が舞い始める。


[ただいまをもって蠱毒の終了をお知らせします。勝者はオトナシ・ナキネ。生徒の皆様、素晴らしい闘いぶりでした。お疲れ様でした]


 そんなアナウンスが流れて、私の視界は再び眩しい光に包まれて、白く染まった。

 私は蠱毒の勝者となった。

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