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35話「蠱毒-デモン- その3 vsヌイ」

「出し惜しみはなしだ。最初から全力でいかせてもらう……!」


 ヌイはそう言うと、深呼吸をしてスキルを詠唱する。


「レアスキル発動。《獣力解放》!」


 するとヌイの目が発光して、何やら圧のあるオーラを放ち始める。

 髪や耳の毛が逆立って、闘争本能を剥き出しにする様はまるで獣のよう。

 コネミはたしか身体能力を向上させるスキルだって言ってたっけ……。


(来る……!)


 ヌイは地面を蹴って、土埃を上げながら近付いてくる。瞬く間に距離が目と鼻の先まで縮まる。防御しなければ間違いなく即死する。

 私は咄嗟に木刀を振って防御姿勢を取るが、相手の攻撃の衝撃に耐え切れずに、後方に吹っ飛んだ。


「くっ……」


 転けないように着地するが、相手の猛攻が止まらない。

 ヌイはステップを踏みながら、何度も木刀を振って仕掛けてくる。一発一発が重くて、対処しようにもできない。


(さすがはレアスキル……全然攻撃する隙がない……! でもレアスキルを前に防戦一方で済むだけマシかも……)


 本来なら、もうすでにやられていてもおかしくはない。

 それを吹っ飛ばされながらもいなすことができているのは、私の積んだ戦闘経験の賜物と言える。

 しかも相手はまだ入学してたかたが数ヶ月の生徒。剣戟の技術はまだまだ発展途上だ。そう簡単にやられることはない。


「何で対応できるんだ……? お前、本当に人間なのか……?」


 私は相手の攻撃を何度も受けながら返す。


「ちゃんと人間だよ……。何てたって私は元王女だからね」

「もはや謎理論だろそれ……」


(にしても、どうやって勝とうかな……)


 私は攻めあぐねていた。

 一応、私にも『荒れ狂い』や『闇堕ち』といった身体能力を向上するスキルはある。

 対抗自体はいくらでも可能なのだが、それらのスキルの果てにあるのは『暴走信者』。同系統のスキルある以上、使うわけにはいかない。

 オトナシ流に関しても、魔王討伐への有効打となるので、使用は避けたい。

 学生としての私と、暗殺者としての私で、使用するスキルをそれぞれ差別化していないとバレる可能性があるのだ。


 以前、リーダーと対峙したときにオトナシ流は使用したことはあったが、あのときは技の練度が未熟だったので、幻影が発生しなかった。

 でも今は鍛錬によって、そこそこ安定して発生させられるようになったので、今はもう使えない。

 本当にどうしたものか……。そう考えているうちに、ある一つの案が思い浮かぶ。


(あ、一つだけ条件を満たせそうなものがあったな……)


 私は早速それを実行することにした。このまま攻撃を受け続けるだけでは、状況は何も変わらない。

 私は木刀を握る手を緩めて、ヌイの攻撃を受け止める。木刀は手からすっぽ抜けて、どこかへと飛んでいってしまう。


「もっと強く握っておくべきだったな……。もらった……!」


 ヌイは武器を失った私に目掛けて豪快に木刀を振るってきた。

 武器を失わせたことで勝利を確信したのか、少しだけ動きが単調になっている。

 私はそうなるのを見越した上で、躱しながら相手の懐に潜り込む。間一髪で体の横をすり抜けていく木刀。命を刈り取る音が耳に響く。

 何とか避けられた私は、そのままヌイに抱き付くようにして飛びつく。


「なっ……!」


 ヌイは激しく動揺した。

 だがまだ勝利は決まっていない。背中を刺されればその時点で終わる。私は、彼が冷静さを欠いているうちに、スキルを提唱した。


「レアスキル発動《爆爆》……!」


 その瞬間、魔法陣が私の腕を伝ってヌイの体へと付着して、周囲一体が何も見えなくなるほどの大爆発が起きた。

 煙が少しずつ晴れてくると、口を手で押さえる私の姿だけが残る。ヌイはすでに消失していた。


「爆発するハグ、これが本当の『火ッ暴ハグ』ってね。……正面から抱きついたけど」


 爆爆、それがヌイを倒せる唯一の方法だった。

 これなら相手を確実に倒せるし、暗殺者としての私とも差別化はできる。

 一応、ムクロガミの暗殺でも使ったことはあるけど、現場にいた者にとっては暴走信者の印象のほうが強いだろうし……。

 それに元は入学前のテロリストが持っていたスキルだ。ここまでくると、もはや二人いようが三人いてもって感じがする。

 

 今までレアスキルを伏せてた理由に関しても、『テロリストと似たようなスキルで誤解を招きたくなかった』とさえ言っておけば、周りは納得するだろう。

 実際、入学当初の人間への冷ややかな視線は今以上に強かったので、疑う者はいないはずだ。


「よし……」


 私は辻褄が合っていることを再確認した上で、木刀を拾い始める。

 もう近くに生徒はいないので、ひとまずは危険が及ぶ心配はない。私は辺りを見渡す。

 現時点で残りの生徒の数は十名程度にまで減っていた。どこもかしこも交戦中で、私には戦場を選ぶ自由がある。

 十名の中には、ユラネやアゲコもコネミも残っていた。強力なスキルを所持している人間は、必然的に生き残りやすい。他の名前の知らない生徒もレアスキルくらいは所持しているのだろう。


 私は、その中からユラネと戦うことを決めた。

 深い理由はとくにない。ただ、何となく戦ってみたいと思った。それだけ。

 ユラネは『二重思考』というレアスキルを使いこなす。脳の処理速度を二倍にすることで、相手の攻撃がスローモーションに見えるようになるというものだ。

 さらには思考力そのものも二倍になるので、対処能力も格段に向上する。

 ここまで生き残っている辺りからも察せられるが、容易に勝てるような相手ではない。だからこそワクワクする。


(実際に戦うとどうなるかな……?)


 私は交戦中のユラネのもとまで走った。

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