87 魔物殲滅が続くようです
今回は、チート殲滅回です。
アイル村の魔物達は、完全殲滅した。取り敢えず、魔物の死体を全て集め、燃やすことにした。さすがに300体のオートマトン兵、1時間もしないうちに、村の外に1000体近い魔物達が積み上げられた。魔石だけは取り出していたが、素材的には大したものがないので、そのまま焼却するのだが、ここからは、私の仕事だ。少し大きめなファイアを空中に浮かし、魔力を注ぎながら圧縮していく。火球の表面温度が2000度以上になった段階で、火球の下の魔物の山が溶解しながら燃え上がっていく。火球を魔物の山に徐々に近づけていくと、魔物の山が完全に炭になってしまい、その後に真っ白な灰になってしまった。これ以上、火球を地面に近づけると、大地が溶岩になってしまうので、その段階で、降下を止めておいた。
グレイ達は、あまりの熱さで、ジリジリと下がっていて最終的には、火球から100m以上離れた位置で固唾を飲んで見続けていた。すべてが焼却し終えたので、火球を上昇させていく。火球は、周囲の空気を温めて、真っ白な雲を生じさせながらどんどん上昇していった。どれくらい上がっていったのだろうか。もう、肉眼では火球の大きさが判別できないくらい上昇させてから、火球を爆発させた。うん、きれいな花火だ。さあ、これでアイル村の魔物掃討戦は完全に終了した。これから、西にあるレイトン村に向けて出発する。さすがに、いままで魔物がたむろしていた村の中で宿泊する気にはならないので、西側に離れた地点で野営することにした。
野営地は、レイトン村まであと10キロの地点にある小高い丘の上にして、20m四方の土壁を盛り上げておく。ゴブリンやオーク程度では乗り越えられない高さにして、その中にテントを張って野営することにした。遠くでは、ゴブリンやオーク達の品のない鳴き声が聞こえてきたが、まあ、この野営地に近づいたら周囲を警戒しているオートマトン兵の餌食だ。
翌朝、レイトン村に行ってみると、無人の村の中に、魔物はいなかった。シロを飛ばして周囲を探索させたところ、ゴブリンやオークの集団が北に向かって敗走していることが分かった。どうやら、ナイル村の生き残りがレイトン村まで通報に走っていたようだ。別に、ゴブリンやオークに恨みがあるわけではないので、放置で良いのだが、あんなに大発生した理由については、しっかり調査しておく必要があるだろう。部隊を連れて追撃するのも、面倒くさいので、私一人で上空から追跡していく。高度500mで、魔物の群れの後方1キロ位の地点を追尾しているので、敵に気づかれることはないだろう。
魔物達は、北の森の中に入っていった。木立が邪魔になって視認ができなくなっているが、魔物探索スキルでは、所在がはっきりと認識できている。森に入って2キロ位進んだところで、魔物達が1か所に固まっている。どうやら、奴らの集落に到着したようだ。ゆっくり森の中に降下していく。地上に接近してみると、オークやゴブリンとは明らかに違う魔物の気配があった。濃密な魔力と瘴気があたりに充満している。おそらく、魔物のボスか、この大量発生の張本人だろう。『隠密』スキルを使って、気配を消して地上に降り立った。500匹位のオークやゴブリンが土下座をしている。その中心には、身長2m以上ありそうな人型の魔物がいた。黒いローブを着ているので、顔ははっきりと顔までは見えないが、フードからはみ出している真っ黒な角が2本見える。この魔物は何だろう。『盗聴』スキルで、奴らの会話を聞いてみる。
「それで、お前たちは、僅か数百の人間の兵達が怖くて逃げかえってきたのか。アイル村の仲間たちは、全滅したのだぞ。お前らは戦わずして逃げ帰り、恥ずかしくないのか。」
「ウギャ、グゲ、グギョ、グギョ、グデ,クギャギャ、ウギャ!」
「言い訳は良い。ヌエノ、前に出ろ。」
「ウギャ、ウギャ、ウギャ、ウギャ、!」
「ならぬ、戦って死んだ者たちに許しを請うんだな。フン!」
ローブの男が、手を目の前のオークにかざした。オークが黒い瘴気に囲まれたと思ったら、一瞬で溶けて消滅してしまった。何だ、あの魔法は。あ、『ワールドグリモワール』の中に似たような魔法があった。確か、闇魔法の『メルト・イレイザー』とか言う魔法だ。しかし、あの魔法は人間には使えないはずだ。使えるのは、神様は別にして魔王や魔族、悪魔、上級吸血鬼だったはず。ということは、あいつは人間ではないのか。
敵の正体が分かったからには、こんなところには用はない。しかし、このまま帰るのは、どうもすっきりしない。うん、少しは人間の脅威を教えてあげよう。
9ミリパラベラム弾のプルーフ仕様版を取り出し、魔力を小さく、小さく圧縮していく。私の小さな親指ほどに圧縮した魔力をパラベラム弾に乗せて、後方に噴射させる。当然、パラベラム弾は、加速しながら、目標に向かって飛んでいく。もちろん、自動追尾付きだ。狙ったのは、敵の眉間だ。
シュボン!
500m位離れている私のところまで、命中音が聞こえてきた。視覚的には当たって破裂しているのが見えるのだが、音は1.5秒遅れで聞こえてきた。頭の上半分が吹き飛んだようだ。しかし、敵は、まだ立っている。え、倒れないの?
その男は、なんか気持ち悪いものが頭の下半分から生えてきて、グニュグニュとしていたら、再生してしまった。あ、なんだか、原生動物が2つに分断されてもそれぞれが再生するのに似ている。男は、再生したばかりの目で、こちらを睨みつけている。500mという距離は、通常の魔法の射程距離外だ。広域殲滅魔法なら、私のところまで到達するだろうが、そのころにははるか上空に避難しているから、今のところ、私は安心だ。
夥しい数のオークやゴブリンたちは、いったい何が起きたのかわからないまま、男の傍から逃げ出そうとしている。男は、懐から大きな魔石を取り出し、何か印を切っている。何だろう。あ、私の目前、地上10mのところに真っ黒なゲートが開いた。そのゲートから火球が撃ち込まれてきた。もちろん、見た瞬間に、10m位後方に瞬動で回避する。
ズババババン!!!!!
火球が地面に着弾して、あたりは火の海だ。なるほど、ゲートをあんな風に使うこともできるのか。フーン、でも、まあ、これで完全に彼は敵認定だね。私は、3斤の木刀を取り出し、上段に構えてから、『空間移動』で彼の真正面に移動する。0.02秒後、彼の頭上には、3斤の木刀が振り下ろされた。
グゲギョ!
頭が潰れてしまった。それだけではなく、首から下も、ちょうど何か重量物が肉体を圧しながらブチブチと切り裂いていくような感じで、彼の体が2つに分かれた。ウエーッ!
何か気持ち悪いものが、彼の分断された傷口から垂れ流されている。あ、心臓あたりから魔石が転がり落ちてきた。血と何かにまみれている。とても拾う気がしなかったので、そのまま踏みつぶしておいた。欠片が散乱していたが、そのまま『メルト』で溶かしてしまう。さっきの気持ち悪い闇魔法とは違い、純然たる高温のファイアで溶かしてしまう物理的効果を使った魔法だ。物理と魔法、え、矛盾していないかって。うん、気にしないことにしている。何たって8歳児だし。
気が付かなかったけど、さっきのオーク達が、私の周りで土下座をしている。えーと、なんだろ。この違和感。私を中心として10m位の円形には、先ほどの男の残骸(灰)と男に溶かされたオークの残骸しかない。それで、半径30m位の円形にオークやゴブリンが密集して土下座しているのだ。誰も顔を上げない。先頭のオークなど、ブルブルと震えながら土下座している。私って、そんなに怖い顔をしているのかな。
いくら魔物といえども無抵抗な者を殲滅するのは、私の精神衛生上良くない。ここは、彼らに確認してみよう。
「あなたたちは、何処から来たの?」
「グギャ、ブヒ、グゴ、グギャ!」
ダメだ。全く分からない。あ、でも、さっき男は彼に人間の言葉で話しかけていたよね。でも、彼は、しゃべれないし。あ、もしかして。私は、彼の喉に手を当てて、『錬成』で声帯を構築してみる。生物学的に人間のような声帯を持っていないために、言葉を話すことができないのではと思ったのだ。
彼の喉が、ホンワカと光り、『錬成』が終了した。これで、人間のように声を発することができるだろう。
「われら、森の奥、もっと日の沈む方、3日かかった。」
うん、彼らは、もっと西の方から来たのね。あと、どうしてこんな方に来たのか聞いてみる。
「では、貴方たち、どうしてここまでやってきたの。」
「あの角の人間、魔法、言うこと聞きたくなる。逆らえない。」
どうやら、従魔の魔法を使って服従させていたようだ。本来、森のオークやゴブリンは、小さな集落を作って採集により食べ物を得ている。彼らの持っている武器程度では、ウサギ程度しか狩れない。人間だって、武器を持った成人男性がいれば、よほどのことがない限り、戦闘を避けるために逃げてしまう。そこが、ダンジョンの魔物と大きく違う点だ。
高圧縮のエネルギーは、核融合反応を起こしてしまいそうです。
次話は、明日6:00に投稿します。




