38 魔法は誰でも使えるようです
超強力な指導陣が決まります。
午前10時、4人の教師陣が訪問して来た。学科全般を教えてくれる王立学院専任教授のドーチェ準男爵、貴族マナーとピアノを教えてくれるベローチェ伯爵夫人、魔術を教えてくれるダンドール魔導士学院主任教授、最後は剣術と馬術を教えてくれるシュリンガー王城守備団長の4人だ。中でもシュリンガー団長は7剣聖の一人で、王国最強と言われてる人だ。4人とも皆、知る人ぞ知る超有名人らしい。
あのう、この教授陣、とても怖いんですけど。ドーチェ専任教授って、確か数学の天才と言われており、弟子が何百人もいると言われている人だ。
ベローチェ夫人は16歳で世界的なピアノコンクールで優勝した天才で、そのピアノの調べは天使の演奏と言われているほどだ。
ダンドール主任教授は、次期宮廷魔導士団長と言われていたが、魔法の研究を優先して学院に転がり込んだ変人ゴホン、英才らしい。
シュリンガー団長は、婚約式の際の模擬試合で審判をしてくれた方で、当代一の達人と言われている剣士だ。当面の私の目標とすべき人物でもある。
今日は、挨拶だけと思ったら、午後から剣術と魔法の実技があるそうだ。でも、この教授陣、何故か王室の意図が透けて見えるんですが。帝王学というか、国王候補に対する教育をしようとしているとしか思えないんですけど。まあ、将来のことはわからないんですけどね。
シュリンガー団長は、あらゆる武器を使いこなすが、特に双剣を使わせると圧倒的強さを示す。あんなに素早く剣を繰り出しているのに、打突部位が極めて正確なのだ。特に後ろ突きなどは、絶対に背中に目があるとしか思えない。それに、時間差で同じ部位を攻撃されると、どうしても最初の防御で隙が出来たところに、次の打突が来るので躱しにくいのだ。
もう、第三者が私たちの戦い方を見ていると、双方の剣の軌跡しか見えないと思う。撃ち合っていると分かるのは、「カカカカカカカカキーン!」とお互いの剣が弾かれる音が連続で聞こえているだけだろう。
ブルーム殿下には悪いが、合間に相手をしてあげるので許して下さい。
◆
(シュリンガー団長視線)
今日から、ブルーム第三王子殿下の帝王教育が始まった。俺は、前から早く始めろと言っていたのに、漸く始まったのだ。本当は、近衛騎士団長が教育担当なのだが、今、空席だから仕方がない。まあ、あの小狡いダルシアに教わるよりは、俺の方が百倍はいいだろう。現王太子のアンドレイ王子は、国王の器じゃあないってのは、良識のある貴族なら皆分かっている事だ。なのに我が国を弱体化する事に腐心しているバカ貴族のせいで、最も国王としての適性のあるブルーム殿下を排除するなんて、何を考えているんだ。
それよりもブルーム殿下のご学友兼護衛に選ばれたフレデリック、ランカスター侯爵家の3男だが、あの坊主には驚いた。まあ、以前馬鹿ダルシアをコテンパンにやっつけた事から予想は付いたが、あのガキは異常だ。どこの世界に、両手に4キロのオモリを付けて、振るのもやっとのロングソードを軽々と振る5歳児がいるんだ。しかも俺の双剣での技、絶対に受け切れない筈の『秘技風車剣』を全て受け切りやがった。それも一つ2キロのオモリを両手両足に付けてだ。
5歳のガキでこんなんだという事は、将来が怖いぜ。俺も剣聖で御座いなんて言ってられやしねえよな。しかし、楽しくって笑いが止まらないぜ。
◆
シュリンガー団長の稽古の後は、ダンドール主任教授の魔法の授業だ。裏手の魔術教練場に行ってダンドール主任教授が来るのをを待つ。ダンドール主任教授は50過ぎの背の高い人で、長くて白い顎髭が特徴だ。
待っていると、私たちの目の前の空間が変に歪み黒い穴が空いたかと思うと、そこからダンドール主任教授が出て来た。私には未だ使えない『空間魔法』の一種、『瞬間転移』だ。ダンドール主任教授は、黒いローブに黒い三角帽子、自分の身長よりも長いワンドを持っている。物語に出てくる魔法使いそのものだ。
「フォッ、フォッ、フォー。驚かせたかの。儂はダンドール、お主らに魔法を教える者じゃ。」
「「よろしくお願いします。ダンドール主任教授。」」
「ダンドール、儂のことはダンドールと呼び捨てで構わん。なんなら『ダンちゃん』でも良いぞ。」
あ、この人も残念かも知れない。
「ダンドール様、私でも、先ほどの空間魔法が使えるでしょうか?」
「ふむ、魔法を使えるかどうかの要素は3つじゃ。魔法適性があること。十分な魔力量を有すること。最後に、魔力操作、つまり魔力を適正に使えるかどうかじゃ。儂が教える事が出来るのは、最後の魔力操作のやり方のみじゃ。」
えーと、全魔法適性を持ち、膨大な魔力量を持っている私にとって、空間魔法はゲット確定だね。でも、そんな思いは表に出さず、フムフムと聞いている。
ダンドール主任教授は、水晶玉を懐から出して来た。
「この水晶玉は、『能力鑑定玉』じゃ。お主らの能力を鑑定するのじゃ。まずブルーム王子、そなたの手をこの鑑定玉に当てるのじゃ。」
ブルーム王子が、恐る恐る右手を水晶玉に触れさせた。
「鑑定」
ダンドール主任教授が、呪文を発動させると、水晶玉が白く光った。
ダンドール主任教授が、何かをメモに書いている。おそらく鑑定結果を書いているおだろう。描き終わってから、メモを見せてくれた。
ブルーム・フォン・アスラン
アスラン暦456年10月28日生まれ(6歳8か月)
レベル 1
HP 14
MP 39
魔法適性 風 水
スキル:ピアノ演奏
剣術初級
うん、こんなものだろう。この数ヶ月の成果かな。でもピアノ演奏のスキルって、どんだけ才能があるんだろう。
「フレデリック、僕、魔力があったよ。適正属性も二つもあったよ。これも練習の成果だね。」
うん、良かったね。私が、口頭で魔力があると言っても、こうやって目に見える形で確認できるとやはり嬉しいのだろう。
次は、私の番だ。結果を見て驚かないでくださいね。別に恐れることもないので、普通に水晶玉の上に右手を乗せる。
「鑑定」
水晶玉が7色に光って消えた。ダンドール主任教授が、結果をメモに書き綴りながら、顔色が真っ白になってしまった。結果を見せて貰う。きっと凄い結果だろう。
フレデリック・フォン・ランカスター
アスラン暦458年2月14日生まれ(5歳2か月)
レベル 8
HP 測定不可
MP 測定不可
魔法適性 測定不可
スキル:測定不可
へ?うん、これは驚くよね。何も分からないと言う事が分かりました。ダンドール主任教授が何回か鑑定していたが、結果は同じだった。これって絶対に神様の仕業だよね。参考までに、今の自分の鑑定結果は
フレデリック・フォン・ランカスター
アスラン暦458年2月14日生まれ(5歳2か月)
人間族 男性
レベル 8
HP 827
MP 4,239
魔法適性 全て
称号:日本からの転生者
神童
スキル:剣道錬士6段
逮捕術上級
高校教諭(体育)
中学教諭(体育)
瞬動(中級)
鑑定(初級)
神の加護
錬金術(上級)
「フレデリック、お主、なんの魔法が使えるんじゃ。」
「だいたい生活魔法ならなんでも使えますよ。」
ファイア、ウオーター、ウインド、アース、ライト、ダークと全ての生活魔法を無詠唱で使って見せた。ダンドール主任教授が、口をあんぐり開けている。
「お主、適性属性が全てじゃと。しかも、全て無詠唱で。」
「はい、小さい時からそうでした。」
「何を言っとるんじゃ。今でも十分に小さいじゃろうが。」
こうして、魔法の授業も私とブルーム殿下とは別メニューでこなす事になった。私は、ダンドール主任教授から、ぜひ空間魔法を学んでおきたい。
ブルーム殿下の魔法学習は、まず魔道具に魔力を流す訓練だ。ちょっと太めのワンドに青色の魔石が嵌められている。風魔法の触媒として使うようだ。詠唱も何も必要ない。魔力さえ流せれば魔法が発動する。この練習は、自分の魔力が魔法になるイメージを持ちやすくするためだ。
この練習は、ブルーム殿下にとって面白かったらしく、魔力が尽きるまでやってしまった。
「フレデリック、僕、頭が痛い。」
そう言って、意識を失ってしまった。私は、地面に倒れる前にブルーム殿下を支え、そのまま第二後宮まで背負って帰った。ダンドール主任教授は、入口まで付いて来てから帰ってしまった。まあ、教師としての自覚もなさそうだから良いんだけどね。
私は、ブルーム殿下を背負って2階の部屋まで運び、ベッドに寝かし付けてから部屋の様子を見たが、本当に何もない部屋だった。ベッドとこぢんまりとしたチェストだけ。ランカスター領で練習したピアノの楽譜が、チェストの上に置かれている。バイエルとチェルニー、ソナチネだ。
壁際には、大切そうに素振り用の木刀が置かれていた。シンシア様が心配そうに付いてきていたが、単なる魔力切れなので1時間も寝ていれば気が付きますと教えてあげると、ホッとしていた。
ブルーム殿下は、1時間ほどしたら目が覚めた。でも、何故かテンションが高い。
「母様、母様。僕ねえ。僕、魔法が使えたんだよ。こうブワッと風が起きたんだよ。僕ねえ、魔法が使えたんだね。嬉しいな。」
何故か涙ぐんでいるシンシア様。今日のお勉強は、これで終わりだ。
ブルーム殿下に魔法を使わせたくない者がいるようです。
次話は、本日17:00に掲載予定です。
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