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37 ご学友って大変なようです

 フレデリック君は、ご学友になってしまいます。

 3月末、父上から帰還許可が出た。王城内の根拠の無い噂は、あの場にいたアンドレイ殿下の取巻きの証言で真実が明らかになったそうだ。まあ、あの『鑑定水晶』を使ったら、12〜3歳の子供が嘘を突き通すことなど無理に決まっていたんだけどね。


 それよりも、王城内で剣を抜いたアンドレイ王子の処分で揉めたらしい。結局、正体不明の賊に襲われそうになった私達を助けようとして、剣を抜いたと言うことにしたらしい。また第二後宮には近づかないようキツく申し渡されたらしい。


 それだけなら良かったのだが、私がブルーム殿下のご学友兼護衛を命じられる事になった。しかし、それっておかしいですよね。幾ら5歳になったって、5歳ですよ。5歳。賊に襲われた際に、5歳の少年に戦わせるんですか?まあ、戦うけど。


 あと侯爵邸で勉強することが、そのまんま第二離宮でブルーム殿下と一緒に勉強することになった。本当は1学年違うんだけど、ブルーム殿下はほとんど勉強していないので、同時にスタートとなっても問題ないそうだ。






 4月の第2週、国王陛下から正式に勅命が下される事になった。勅命の示達を国王陛下から直接下される時は、謁見の間が使われるのだが、今回は簡略に応接室で行われるとのことだった。


 王室のお迎えの馬車で、王城の中に入る。今日は正面玄関から、職員に案内されて第一後宮に向かう。


 え?応接室じゃあないんですか?


 王室と第一後宮は別棟になっているが、中2階で渡り廊下が繋がれている。万一の際は、この渡り廊下を落として、敵の侵入を防ぐようになっているらしい。第二後宮とは偉い違いだ。


 案内されたのは第一後宮の最上階にある展望室だ。渡り廊下の先からは、メイドさんが案内してくれた。展望室は、サロンのようになっており、眼下には広大な花園が広がっていた。室内には、国王陛下と王妃陛下、それとイグノリア第二王子殿下とブルーノ第三王子殿下がいらっしゃった。アンドレイ皇太子殿下はいないようだ。


 私は、室内に入り国王陛下の8歩手前で膝を付き臣下の礼を取る。


   「ヘンリー・フォン・ランカスターが三男フレデリック、思し召しにより罷り参りました。」


   「うむ、これを。」


 勅書であろう、封書を載せた豪華なお盆を年配の侍女が静々と運んでくる。


   「ブルームの学友兼護衛を命ずる。」


   「ははあ!、たしかに承りました。」


 これで、勅命示達は終わりだ。しかし、通常のご学友選任は内務卿からの口頭伝達と聞いていたので、今回は異例とも言える処遇だ。国王陛下達が座っている席に案内された。末席と思われる席に座ると、王妃殿下が口を開いた。


   「アンドレイの一件、本当に申し訳ないわねえ。あの子、なんでああなっちゃったのかしら?」


   「いえ、こちらには何も被害はありませんでしたから。」


   「本当に良かったわ。あなたが怪我をしていたら、アンドレイがどうなったことか。」


   「は?どういう意味ですか?」


   「ああ、あなたは知らないだろうけど、アンドレイ、人気がなくてね。国王って人気商売ですもの。」


 あのう、そんな重要事項、さらっと言っちゃって良いのですか。国王陛下は、そっぽを向いている。うん、この場を仕切っているのは王妃陛下に間違いないわ。


   「シンシア嬢のことだって、本当は一緒に暮らしたいのに、敵性国の人間は危ないっていう重臣がいるから、ね!」


 いや、「ねっ!」て言われても。ようやく国王陛下が口を開いた。


   「フレデリック、そちは強いらしいのう。」


 あ、どこまで知っているんだろう。傭兵に襲われたことは内緒にしていたはずだが。王子の命を狙われたなど、責任問題だ。


   「隠さなくても良い。領地での襲撃、傭兵のほとんどをお主が討伐したそうではないか。それに山賊の討伐も、お主以外は雑魚を処理しただけだと聞いておるぞ。」


 あ、だめだ。国王陛下の情報収集能力を軽く見ていた。全てバレていると思って間違いないだろう。ここは、素直に


   「恐れ入ります。」


   「そこで何か恩賞をと考えたが、何が良いかの。」


 恩賞と聞いて、即答した。


   「ぜひ、第二後宮にピアノを賜りたく。また、ブルーム殿下の食生活の改善を!」





 私がブルーム殿下の学友になった次の日、早速、ブルーム殿下のお住まいになる第二後宮に向かった。馬車で向かうのだが、護衛騎士が2騎随行している。馬車の中は、私とスザンヌさんだ。


 私は、ブルーム殿下の警護も兼ねているので、婚約式の際に父上からもらったショートソードを帯剣している。まあ、この剣を抜くようなことが、王城内であったら大変な事態になるときなんですけど。王城内に入っても、ずっと回り道をしてお城の後ろ方法、第一後宮から大分離れたところに第二後宮が立っている。途中、森のような樹々にさえぎられて、第一後宮からは第二後宮は見えないだろう。事実、昨日、屋上の展望台から裏手を見たが第二後宮がどこにあるのか分からなかった。


 第二後宮に到着したのは、午前9時少し過ぎだったが、ちょうどピアノが搬入されるところだった。ピアノは縦型のアップライト型だったが、第二後宮の部屋の広さを考えると、グランドピアノを置くのは無理だろう。馬車から降りて、玄関から入っていくと、シンシア様がニコニコしながら、ピアノの置き場所を指示していた。ブルーム殿下もとてもうれしそうだった。シンシア様は、私が玄関先で立っていたら、すぐにこちらに来て、深くお辞儀をしていた。なんかお姫様にお辞儀されても困るんですが。


  「フレデリック君、今回は本当にありがとう。ピアノ、ずっと欲しかったのよ。でも、今の身分では我慢するしかないと言われて。」


 最後は、涙目だったが、それは見なかったことにしよう。ブルーム殿下と私の家庭教師は午前10時に来ることになっている。全部で4人だそうだ。今日は顔合わせで、本格的な授業は今日の午後かららしい。うん、どんな人が来るか楽しみだ。とりあえず、『ご学友』になりました記念のスイーツをお土産に持ってきました。前の世界でも好きだったシュークリームだ。この世界のシュークリームは、カスタードクリームではなく、生クリームを使っているので、少々食べにくいけど、貴族は上品に食べるので、こぼさないでしょう。あ、シンシア様、こぼしたクリーム、拾って食べないでくださいね。


 お茶が終わってから、シンシア様のピアノを試し弾きする時間だ。うん、久しぶりだろうから、簡単な曲にしようね。あ、『きらきら星』ですか。この曲は、子供の時の童謡にあったはずだ。何となく覚えている。でも、シンシア様の『きらきら星』は、途中から私の聞いたことのない曲調にかわってしまい、なんか絶対にこれ、『きらきら星』じゃないって曲になってしまった。あとで聞くと、この曲は、モーツアルトが作曲した『ああ、お母さん、あなたに申しましょう』の12の変奏曲で別名『きらきら星変奏曲』と言うらしいのだ。


 素晴らしい演奏が終わったので、拍手をしていると、


   「駄目だわ。3箇所も間違えてしまったわ。」


 私には、完璧に聞こえたんですけど。それよりもブルーム殿下が目を輝かせている。


   「母様、とても素晴らしかったです。初めて母様のピアノを聴きました。僕、感動してます。」


   「ブルちゃん、『母様』ではないでしょ。


   「あ、いけない。母上様、僕も弾いていい?」


   「え、ブルちゃんが弾くの?」


   「うん、僕、ランカスターのお城にいる時に、少し練習したんだ。」


 ブルーム殿下は、私の知らない曲を弾き始めた。ワルツ調の綺麗な曲だ。左手の低音部でしっかり3拍子を奏で、右手で主旋律を軽快に弾いている。後で聞いたら『バイエル80番』という曲らしい。


 ブルーム殿下は楽譜も見ずに弾き終わって、チラッとシンシア様の方を見ている。あ、シンシア様、泣き始めちゃった。ブルーム殿下も泣いているシンシア様を見て、ピアノの椅子を飛び降りて、シンシア様の方に走り寄る。


   「母様、いえ母上様、どうしたのですか?大丈夫ですか?」


   「ええ、大丈夫。ごめんなさいね。心配しないで。ブルちゃん、あなた、この曲、どの位練習したの?」


   「あのう、ランカスターの叔母様から1回弾いて貰って、それで3回位かな、練習したの。」


   「そう3回ね。それで楽譜はどうしたの。」


   「うん、2階の僕の部屋に置いてあるけど、楽譜がなくても曲を聞けば弾き方が分かるんだ。」


 なんか凄い事になっているけど、それよりも二人が平素、『母様』、『ブルちゃん』と呼ばれていた事が分かってしまった。まあ、私だけの時は構わないけれど、王族としては、やっぱりまずいのだろう。


 ブルーム殿下は、絶対音感があるようです。

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[気になる点] ブルーノなのかブルームなのか 王子なのか皇子なのか どっちなんだい
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