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17 神の加護が必要らしいです。

フレデリック君、神の加護、持ってないんですか?

 メルボルン領から帰ってからは、毎日の鍛練の他に魔法の勉強が日課になった。難解なワールド・グリモワール(世界魔導書)を読み解くのは至難の技だったが、何とか治癒魔法の方法を知りたかったのだ。聞くところによると、教会には何人か治癒の力を持っている人がいるが、その力は『神の奇跡』と言われるほど稀有のもので、一般には縁のないものだったらしい。魔導書には、魔法適性には7番目の属性があり、その属性は生来に具備するものではなく、後天的にある事象を経て取得するものらしいと記載されていた。


 記述は、そこまでで、それ以上調べようとすると、何ページを見ろとか、何の研究論文に記述があるとか極端に意地悪になる。これは、きっと私が未だ治癒魔法を取得するレベルになっていないからだろう。


 レベルと言えば、最近、自分のレベルを鑑定していなかったことを思い出した。


   『鑑定』


   フレデリック・フォン・ランカスター

   アスラン暦458年2月14日生まれ(4歳)

   人間族 男性

   レベル 3

   HP  439

   MP 2970

   魔法適性 全て

   称号:日本からの転生者


 レベルが3に上がっている。思い当たるのは、盗賊3人を討伐した事くらいだ。きっと戦闘経験を積み重ねる事によってレベルが上がるのだろう。レベルの平均値や上限などは全く分からないが、まあ、平素の生活には関係なさそうなので、たいして興味はない。


 それよりも、鑑定項目に『HP』と『MP』と言う欄が増えている。これはきっと『HP』がヒットポイント、『MP』はマジックポイントの略称だろう。幾ら学生時代に剣道ばかりしていたとしても、大流行したRPG用語位は知っている。自分の数値が他人より多いのか少ないのかは分からないが、幼い頃(今も幼いが)きっと多少は多いだろうなと思う。


 体力強化では、今日から朝の屋敷周回は15周にした。目標時間は60分、つまり5キロを20分で走る事になる。元の世界では、4歳の幼児が走れるタイムではないが、異世界転生特典があるこの世界、今までの周回結果からも達成可能だろう。兎に角、『継続は力』だ。続ける事が大切だ。


 周回が終わると、屋内道場で素振りをする。今までは全て屋外鍛錬場で行っていたが、素振り用木刀、稽古用木刀それに模擬剣と3本を持って歩くのが面倒なので、素振り用木刀は道場の木刀架台に置きっぱなしにする事にしたのだ。


 素振りは、800本、100本毎に肩を回したりストレッチをして、筋肉や関節に過度のストレスを与えないように配意する。今は無理だが、いつかは素振りで風切り音が唸るようになりたいものだ。


 夏までは3か月以上ある。それまでには、『治癒魔法』を習得したいが、未だ糸口が掴めないでいる。他の魔法については、少しだけハイレベル化している。ファイアはフィアボールに、ウオーターは、ウオーターボールへと上位魔法を習得した。ただし、威力を小さくするのに苦労している。単に小さくしようとすると圧縮してしまい、逆に威力が増してしまうのだ。微妙な魔力コントロールが必要なみたいだ。


 風魔法はウインドウからウインドウカッターへとレベルアップした。これは日本では『鎌鼬』と呼ばれた現象で、高速に流動する空気分子が真空状態を生成し、対象の分子構造を破壊吸収する現象らしいが、イオン化がどうとか流体力学の作用がどうとか、私には分からないことはマルッと無視して結果だけをイメージして使えるようになった。


 土魔法は、アースからアースバレットにと進化したが、この魔法は、他の魔法と違って大地か鉱物がそばに無いと使えない。ファイアは、空気中の酸素と炭素や水素など酸化できる分子で燃焼させるらしいし、ウオーターは、当然、酸素と水素を結合させて水を生成させるので理解しやすいが、アースだけは原子レベルで組成物が近くにないといけないらしい。


 光魔法のライトは簡単だ。魔力エネルギーを光に変換するだけらしいが、本当は素粒子レベルの反応だなんて知らなくて良い無駄知識だ。ライトの上位魔法はないが、ライトビームというレーザー光線みたいなものができるよう練習しているが、一気に難易度が上がってしまって全くできない状態だ。レーザー銃やビームサーベルは男の子の憧れなんだけどね。


 闇魔法は、仕組みがよく分からないが、光成分つまりフォトンをどこかに移してしまうのがダークと言う魔法らしい。これは空間魔法の一種で、上達すれば質量のある物資値も転移出来るらしいのだ。空間魔法、なんて魅力的な名前だろう。いつか使えるようになりたいものだ。


 魔法の訓練は、流石に部屋の中ではできないので、朝、5時半に起きてから屋外鍛錬場で何回か練習しているだけだ。魔法陣をイメージして魔力を放出すれば、うまくいく時は難なく出来てしまう。後は射出する速度や範囲の調整だが、都市の真ん中で大規模魔法を放つわけにもいかず、チョコチョコと小さな規模で空に撃つくらいだ。


 兎に角、『努力に優る天才なし』、凡才の私としては、繰り返し繰り返し、同じことを愚直に実践していくだけだ。






 5月も終わろうとしている頃、剣術も魔法も目標とするレベルには達しただろうと思われて来たある日、ワールド・グリモワールを読んでいると、今まで見たこともないページが現れていた。あれ、こんなページってあったかなと思って読み込んでみて驚いた。探していた治癒魔法に関する記述だった。


 記述によると、治癒魔法は『聖魔法』属性の魔法の一種で、初歩の初歩は聖魔法を体に纏う『ホーリー』と言う魔法らしい。しかし、その属性を得るためには、『神の加護』と言うスキルが必要らしい。スキルって何だろう。日本語では、『経験』とか『能力』と言う意味で、後天的に獲得できるものとされているが、この世界でも、きっとそうなのだろう。


  私のスキルは、何だろう鑑定で調べる事が出来るのだろうか?


   「鑑定」


   フレデリック・フォン・ランカスター

   アスラン暦458年2月14日生まれ(4歳)

   レベル  3

   魔法適性 全て

   称号:日本からの転生者

   スキル:剣道錬士6段

       逮捕術上級

       高校教諭(体育)

       中学教諭(体育)


 このスキルって、日本にいた時の取得した段位や資格だよね。


 『神の加護』スキルはないので、これは、取得方法を調べなければならない。


 『神』と言う言葉から聖職者、教会に関係あるかも知れない。これは一度教会に行ってみる事にしよう。スザンヌさんに聞くと、この国の宗教は一神教で、創造神テスラ様を奉っているのだが、教義が異なり3大宗派に分かれているそうだ。


 我がランカスター家は、自由と平等を尊ぶ教義の開明派だそうだ。他に、人族至上主義の原理派、どんな罪を犯しても功徳を積めば許される利得派となっているそうだ。なんか開明派で良かった気がする。


 早速、スザンヌさんとルッツさんと一緒に開明派の教会に行ってみる。王城近くの教会は総本山で、大教皇がトップにおり、見習いのシスターまで入れると500人位が教会で勤めているそうだ。王国は、特定の宗教に肩入れする事なく、戴冠式や結婚式などの宗教行事は順番制になっているそうだ。


 教会に入ると大きなドアが2つあり、右側が一般信徒、左側が教会関係者の入り口になっている。


 勿論、右側の入り口から中に入ると、ものすごく高い天井に大きなステンドグラスと、元の世界でもよく見る教会仕様になっていた。入ってすぐが寄付受付カウンターになっており、貴族だけ、一段高くなったカウンターで受け付けていた。どうも平民に幾ら寄付したか知られたくない貴族が多いらしいのだ。


 スザンヌさんが貴族用カウンターで金貨1枚を寄付すると、受付のシスターが大袈裟な動作で、『神のご加護を。』と祈ってくれた。はい、その『神のご加護』を貰うためにはどうしたら良いのでしょうか?


 私は、1人で祭壇の前まで進み、その場で跪いた。左右には大勢の方が跪いている。両手を胸の前で組み、目を瞑ってテスラという神に祈ってみる。


 暫く迷走していると、目を開けていないのに、あの白い空間にいる事が分かった。驚いて目を開けても白い空間だ。突然、聞いた覚えのある声が聞こえた。


   『久しぶりだね。4年3か月ぶりだよ。もっと早く教会に来るかと思ったのに。」


   『貴方は神様?テスラ様?』


   『そう呼ばれることもあるけど、本当は違うんだよ。私の本当の名前は%$,#■◇☆☆○%>と言うんだよ。でもこの名前、人間には発音できないよ。』


   『じゃあテスラ様でいいや!』


   『あれ、ずいぶん軽くなったよね。どう、転生した人生。悪くないでしょ。世界最強への道、まっしぐらじゃない。転生特典、マシマシだからね。』


   『その転生特典だけど、一つだけお願いがあるんだが。えーと、【神の加護】だっけ。それが欲しいんだけど。』


   『えー?最初からついてるよ。転生セットだから、外す方が難しいんだよ。あと、魔法属性は全てってなってたでしょ。【聖属性】も当然入っているからね。もう少し、あの本を読んでみてよ。分かるから。』


   『そんなの、読めなければ分からないよ。でも、良かった。これでベス嬢の母君の病気を治せるよね。』


   『うーん、難しいと思うよ。治癒魔法って対症療法だから。結核菌を殺すことは出来ないはずだよ。』


   『そうなんですか。何とか出来ないですか?』


   『それじゃあ、特別にジャジャーン!転生特典、【錬金術上級】をスキルに追加。あれ、これって、あの青い猫がポケットから取り出すノリなんだけど。』


   『錬金術上級って何?』


   『嫌だなあ、錬金術だよ。薬品や合金を作るスキルだよ。転生後にサービスなんて、あまり例がないからね。感謝しなよ。』


   『ありがとうございます。このお礼は・・・』


   『あ、今は未だ小さいからいいの、いいの。その内、まとめて貰うから。その時は宜しくね。』

   

 転生特典は、結構チートです。久しぶりの神様?登場です。

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