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18 神の加護を見つけたようです

久しぶりの神様登場です。神様との会話は教会でできるようです。

 自分の部屋で床に座って瞑想する。体内を魔力が駆け巡る。静かに静かに心を落ち着かせる。邪念のない清らかな光をイメージする。その光は、心を癒し、体を癒す光だ。疲れた時に温泉に入りゆったりすると、温泉の温かさが体を癒す。春の日差しに微睡むときの気持ちよさをイメージする。この光は、人を癒す光だ。


 フウと息を吐いて、目を開ける。体内の不純物が除かれた気がする。気のせいかも知れない。それでも構わない。魔導書には、『聖魔法』の魔力は、毎日瞑想し、魔力を循環させることが大切だと書かれていた。


 直ぐに聖魔法を使えるようになる事は無いそうだ。聖職者が、毎日神に祈る事により聖なる力を得られるのは、体内の魔力が癒しのエネルギーに変換されるためだ。傷口を綺麗にし、傷口の細胞分裂を活性化させ、怪我人の痛みや恐怖という負のエネルギーを中和させる。それが癒しの魔法の基本だそうだ。


 私には、生来の『神の加護』のスキルと『聖魔法』属性の適性があるという事が分かった。後は、他の魔法と同様、練習してレベルを上げれば良いのだが、聖魔法だけは対象が無ければ練習する事ができない。


 呪文にしても『聖なる精霊』という存在が確認されていないので、精霊の力を借りることもできない。少し行き詰まっていたら、魔導書にはヒントがあった。


 聖魔法は、聖なる光の力を借りる。その聖なる光とは、聖書の冒頭に書かれている、


   『神は混沌の天と地に最初に光を造られた。』


 この光とは、あの転生の際に自分を包み込んだ光、教会で祈りを捧げた時に、周囲を照らしていた光なのでは無いだろうか。それならイメージできる。よし、イメージしたぞ。


   「ホーリー」


 自分の前に白い光が現れた。『ライト』の光とは違う心の底が癒されるような光だ。出来た。聖魔法を習得した。『鑑定』で確認してみる。


   「鑑定」


フレデリック・フォン・ランカスター

   アスラン暦458年2月14日生まれ(4歳)

   人間族 男性

   レベル 3

   HP  511

   MP 3135

   魔法適性 全て

   称号:日本からの転生者

   スキル:剣道錬士6段

   逮捕術上級

   高校教諭(体育)

   中学教諭(体育)

   神の加護

   錬金術上級


 さあ、後は実践だが4歳児が治癒魔法で他人の怪我を治したら、物凄い騒ぎになるだろうな。下手すれば、教会に取り込まれて、一生誰かの怪我を治し続けるような人生になりかねない。うん、ここは我慢して庭のミミズや虫に治癒魔法をかけてあげよう。


 次は、結核の根治治療をするためのストレプトマイシンを作ろうと思う。確か、ペニシリンって青カビで作るが、ストレプトマイシンは地中の何とか菌とかいうバクテリアの仲間から抽出されたはずだ。


 まず、その準備をしなければ。しかし、ここ、王都では作業はかなり難しい。ランカスター領かメルボルン領で作業をやりたいが、婚約式を終えてから母上かベス嬢に相談してみよう。


 魔導書には、錬金術のことは書いていないので、試行錯誤をしなければならない。特効薬が出来るまでは、治癒魔法で症状を緩和し続ける必要がある。うーん、何か方法を考えなければ。


 色々考えていたら、ドアがノックされ、スザンヌさんが入ってきて、ベス嬢が突然訪問してきたと伝えて来た。どうしたのだろう。メルボルン領の実家にいるはずなのに、何かあったのだろうか?


 階下の応接室に行くと、ベス嬢がソファに座っていたが、私の姿を見ると急にベソをかき出した。


  「フィレ君、ママンが、ママンが。ママンをたちゅけて。」


 それだけで全てが分かった。クリスティーナ様の容態が悪化したのだろう。私がクリスティーナ様を助けてあげると言った約束を覚えていて、藁をも縋る思いでここに来たのだろう。おそらく夜中じゅう馬車を走らせてきたはずだ。


 私は、スザンヌさんにこれから直ぐにメルボルン領に向かうので準備をするようにお願いして、ベス嬢と一緒に母上のところに向かった。


 幸いな事に、母上は在宅していたので、事情を話し、これからメルボルン領に向かいたいと伝えた。


   「フレちゃん、あちらに行って何をするの?」


   「母上には内緒にしていたのですが、実は、私は治癒の魔法が使えるのです。それにクリスティーナ様のご病気を治す薬も作れるかも知れないのです。」


   「えー!フレちゃん、すごーい!」


 うん、こう言う母親でした。母上は、私がメルボルン領に行くことを許してくれ、今日は無理だが近いうちにメルボルン領に行くので、それまで待っているように言われた。


 スザンヌさんが出発の準備が出来た旨を伝えてきたので、ベス嬢と馬車に向かう。馬車の馬は我が家の馬に交代されており、ルッツさん他4名の騎士が騎馬で同行してくれる。スザンヌさんも乗車し、さあ出発だ。


 王都を出るまでは、普通の並足で進んだが、王都の門を出てからは速歩で進んで貰う。速歩で進むと、馬車の揺れは凄まじく、椅子に座ってなどいられない。天井から吊り下げられた紐を掴んでぶら下がり、少しでも揺れを軽減しなければならないが、女性や幼児には無理な乗車方法だ。しかし、私にはある考えがあったので、御者さんには最大速度で走って貰うようお願いした。門を出て直ぐに御者さんの鞭の音が聞こえた。と同時に馬車が激しく揺れ始めた。


   「キャーッ!」


 スザンヌさんが悲鳴をあげる。私は、練っていた魔力を椅子とスザンヌさん達の間に滑り込ませ中に浮かせた。いわゆるエアクッションのようなものだ。もう、よほどの事がない限り揺れることはない。


 スザンヌさんは目を大きく見開いて私を見ている。魔力が見えないスザンヌさんには、私が何をしているのか分からないだろう。ただ私が魔法を使っていることだけは分かっているようだ。


 あのう、ベスさん。自分だけ分かっているようなドヤ顔はやめましょうね。


 町や村に着くたびに馬を変えて、夜8時頃にメルボルン邸に到着した。食事も取らず、馬を交代する間に喉を潤しただけだが、そのままクリスティーナ様の部屋に向かう。勿論、ベスも一緒だが歩けないようだったので、私がおぶって階段を登って行った。


 部屋では、バーン卿と薬師、それにメイド達がいたが、クリスティーナ様は意識がないようだった。顔色も血の気がなく、間違いなく危篤状態のようだ。バーン卿はチラッとこちらを見てから、力無く首を横に振った。もう駄目だという合図みたいだ。


 私は、ベス嬢を背中から下ろすと、ベッドの方に近づいた。馬車の旅で汗だらけだが構っていられない。ベッドの横に立ち、左手でクリスティーナ様の右手を握り、右手をクリスティーナ様の胸に当てた。レディの胸に触るなど許されない行為だが構うもんか。


  「聖なる力で、この者の病苦を癒やしたまえ。ヒール。」


  右手が白く光り、聖属性の魔力がクリスティーナ様の胸の中に吸い込まれていく。結核菌により浸潤して出血している肺細胞を修復していくイメージを魔力と共に流し込む。体内の至る所で結核菌と戦って疲弊している免疫細胞に活力を与えてゆく。


 30分もそうしていただろうか。クリスティーナ様の顔色がピンク色になり、呼吸も安定してきた。私が手を離し、ベッドサイドから離れると、薬師が慌ててクリスティーナ様の脈を取っている。まあ、驚くでしょうね。4歳児が危篤状態の病人を治してしまうんだから。ベス嬢は、泣きながら、


   「ママン、たしゅかったの。もう、ちなない?」


 私は、黙って頷く。バーン卿は、クリスティーナ様を抱えて男泣きに泣いている。もう、聖魔法ことを秘密にしようとか言ってられなかった。でも、これからどうしよう。


 落ち着いてから、一旦、

したの応接室に集まって貰う。スザンヌさんとルッツさんも一緒だ。バーン卿に、現在の状況を説明する。薬師にも同席して貰う。


   「今、クリスティーナ様は小康状態です。クリスティーナ様は、おそらく肺結核という病気に間違いありません。」


 バーン卿と薬師が頷いており、スザンヌさんはハンカチで目を押さえている。この世界でも、肺結核は死の病なのだろう。


   「皆様はもうお気付きと思いますが、私はクリスティーナ様に治癒の魔法を使いました。結核と言う病気は、結核菌と言う目に見えないほど小さな生き物が体内で繁殖し、身体に悪い毒素を撒き散らす病気です。特に肺で増えてしまうと血を吐き、呼吸もできなくなる恐ろしい病気です。」


 私は、お茶を一口飲んでから、話を続ける。


   「先程、私はクリスティーナ様の肺の中の出血している場所や、菌により炎症を起こしている場所を聖なる力で修復しました。それから病気と戦う力も元気付けたのです。」


   「でも、クリスティーナ様は完全に回復した訳ではありません。聖なる力では、結核菌を殺せないからです。」


 私がそう言うと、バーン卿とベス嬢は、一旦喜んだ顔が悲痛に落ち込んでしまった。


  「でも、その結核菌を殺す薬を作れるかも知れないんです。バーン卿、何処かそのための部屋を貸して頂けませんか?また、色々と必要な機材が有りますので、そこの薬師の方も力をかしていただきたいのですが。」


 薬師の男は、激しく首を上下に振って同意してくれた。まあ、一度、薬師の工房に行ってみたいと思っていたので丁度良かった。


   「最後に、今日、私が行った事、これから行う事は誰にも内緒に願います。王家に対してもです。もし、この事が噂にでも知られたら、私はこの身を隠さなければなりませんから。勿論、ベス嬢との婚約も無かった事になります。」


 ベス嬢は、ようやくことの重大性に気が付いたようで、不安そうな目で、私を見つめていた。

これで治癒魔法が会得できそうです。

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