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日常  作者: 太郎
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腐女

 

「あ、今のショタ可愛かったね」


 突然、彼女が言った。

 ここは街中で一応公共の場であるのだから、ショタという言葉を使うのは止めようか。と、注意すべきなのだろうか、僕はすぐに「どこどこ?」と辺りを見回していた。


「あー、遅いよ。見るの。スゴい可愛いショタだったんだからね」

「うっわ、見たかったー」

「しかも、大きなお兄さんと一緒に手を繋ぎながら歩いてて、今日のオカズ何にする?とか、話し合ってんの。ありがとうございます。ホモですね。私の今日のオカズになります」

「ちょっと待ってー。さすがに、思考飛びすぎ」

「え?男の子が二人いたら想像しちゃうでしょ?」

「君のは想像なんて生半可なものじゃない。歴とした妄想だ」


 いやぁ、照れるなぁ。と彼女は頬をかいた。ご覧の通り、僕の彼女は少しズレテイル。

 僕も彼女もオタク仲間というものなのだが、彼女は永遠に抜け出せない泥沼、ホモという地獄に落ちてしまったのだ。

 ショタ可愛い。ロリぺろべろ。位だったらイケる僕だが、さすがにホモはむしゃむしゃ出来ない。そしたら、僕はそっち系と思われてしまうじゃないか。


「てか、男友達十人で歩いていたらどうなるのさ。ただの友達だろ?」

「え?ただのホモカップルが五組が歩いているだけじゃんか」

「そう考えられる君の頭の中を一回覗いてみたい」

「いやん。ハレンチ」

「あれ、僕セクハラ発言したっけ?」

「うむ。した」


 ニヤニヤ笑う彼女。くるりと、僕を見上げるとおさげが宙を舞った。なんとも言えぬ、イモ臭さ。そこがツボである。


「そういやさ、私のお祖母ちゃん亡くなったんだよね」

「ありゃ」

「でも、大好きなお餅をたくさん食べ過ぎた結果喉に詰まらせて亡くなったからさ、むしろ本望だったのかなって思ったの」

「窒息死って辛い部類だけど、楽しんで亡くなったのなら悔いはないと思うよ」

「貴方は死ぬとしたら、何して死にたい?」


 うーん、そうだなー。と空を見上げた。

 ここはお祖母ちゃんのように好きな食べ物を食べて死にたい、にするかそれともまた別のにするか……悩みに悩んで答えを出した。


「君と一緒に遊んでから死にたい」


 ガラにもなく、歯が浮く台詞に自分まで赤くなってしまった。さて、彼女の反応は?と伺うと眉間にシワを寄せていた。なんでっ!!??


「えー、つまんない。ありきたり」

「僕の初めての甘い台詞返してっ!??」

「むり、キモい」

「それ以上言うと僕悶死するから!!」

「うそうそ。私も貴方のこと好きだから死なないで」


 ぐはっ、と息が詰まった。僕の甘い台詞を越える更に甘い台詞に舌が痺れてきた。

 きっと、僕の耳は告白したあの時と同じ位に赤い。


「でも、どうせならもっと面白い回答を期待してた。ホモに埋もれて死にたい!とかさー」

「さすがにそれは君だけだと思うよ、うん」

「え?貴方も本好きでしょ?違うの?」

「え?君今、ホモに埋もれて死にたい!って言ったからね?」

「ええっ!私、そこまでホモに飢えてたの!?てっきり、本って言ったつもりだった……」

「本だったら確かに正常な部類に入るね。君は、本当に根っから腐ってるね」

「それは我々にとっては最高の誉め言葉なんだよ」

「違うから」


 あえて一蹴すると、彼女はニコニコ笑顔になった。ちょっと待て、腐ってる上にドMなのか?


「あのさ、ずっと気になってたんだけど。ホモが好きってことは男好きってことなの?」

「えっ、え?何急に……そんな訳ないじゃん」

「ホモが好きって気持ちは、男子のことを好きだけど言えない奥手な女子の潜在的にくるものでしょ?」

「違う、とも否定できないのが悲しいところね。現に私は貴方のことが好きだし、貴方がガチムチボーイにがっつんがっつん掘られてるのを想像するのも好きだし」

「あー。あー。後半のは聞きたくなかった!まさか、僕で妄想していたの!?」


 貞操を奪われた気分だわ!と怒鳴ろうとして、彼女の妄想の中の僕は前の貞操を捨てる前に後ろの貞操を捨てているという事実に怖くなった。

 いくら彼女でもこれは……!……でも、許してしまうんだよな。


「うそうそ。ちょっと貴方のことをビビらせたかっただけ」

「おかげさまで、こんなにも鳥肌が立ったのは生まれて初めてだよ」


 彼女は目を伏せ一瞬殊勝な表情を見せたが、すぐに変えた。


「……貴方に会えて良かったなぁ」


 なんて、一人言のように小さく彼女は漏らした。それが余計信憑性を増して、簡単に僕の耳を赤くさせた。


「え、な、何で?」

「だって、私ずっとこの趣味を人に言えなかったのに、貴方は笑って許してくれるから」

「そりゃ、僕も同じ趣味を持ってるし、理解できるから、ねえ」

「うん、やっぱり貴方のそういう所が好きだ」


 超ド球を腹部に投げられたような激しい衝撃がした。素直な彼女の裏のない言葉がこんなにも(こた)えるとは……驚きだ。


「あ、ああ。僕もだよ」


 頼りない僕だけど、君の気持ちに(こた)えようと頑張るから、ね。



 そんな、オタクな僕と腐女子の彼女の日常。


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