神様
「彼のことは好きなんだけど、死んでもらうわ」
私の指先で踊る彼の腹部に突き刺さったナイフを、同じく私の僕の少女に引き抜かせた。
『まるで、開花のようね』と少女は比喩しながら笑った。そうなるように仕向けたのは私。全ての指揮者である私。
「『彼は意識が朦朧となる中で彼女の妖艶な笑みを見て、勃起させた。』」
ねえ、少女よ。貴女は次はどのように動きたい?勃起した彼の物をしごいてあげる?それとも、ソレを食べちゃう?それとも、……ああ、そうね。それが良いわね。
「『興奮しているのね。貴方って本当に可愛い人ねぇ、と少女は笑った。お礼よ、と少女はもう一度彼にナイフを突き立てた。』」
彼はどう反応するの?少女に刺されて喜んでいる?本望だって思ってる?
「『彼は声にならない笑い声を最期に残すと、少女の頬を撫でて目を閉じた。もう二度と自主的に開かれることはないと、少女は悟った。』」
よし、おしまい。と、携帯を机の上に置いた。ずっと書き続けていて親指が痛い。腱鞘炎になるんじゃないか?
一度書き始めると止まらなくなるのが私の悪い癖だ。いや、良い癖でもあるのか?まあ、どちらでも良いことだ。
あ、自己紹介が遅れましたな。作家の真似事をしている、作家志望の志望の志望でございます。作家志望だなんて大それた紹介は出来ないチキンでござい。
なんてね。キャラ崩壊。
「私は誰に話してるんだか」
ついつい癖でしてしまう。私が物語の主人公で、誰か……つまり読者に見られている状態であると妄想を。
そんな訳ないのにね。私が主人公の物語なんか読んで誰が楽しむんだか。もしも私がお話のキャラだとしたら主人公に関係すらしない通りすがり市民J位だと思う。もしくは、そこら辺に転がってる石か。
「大分親指が休まさったなーっと。じゃあ、さっきの確認してみるか」
置いた携帯を再度取った。先程の画面に戻ると取り合えず書きなぐっただけの改行なしの汚い文章が出てきた。
きっと作家さんは書きなぐっただけだとしても、センスのある格好良い文章なんだろう。だからこそ作家になれてんだろ、っていう話なのだが今は置いておこうか。
「えーっと、登場人物は少女と少年。ジャンルとしては恋愛もの。いや、学園ものにしようか?でも、こいつら不登校だから学校行ってないや。……って」
最初から読み進めて、ふと違和感というか大きな問題点にぶち当たった。
「主人公の一人称、俺から僕に変わってるじゃん」
いやあ。どうしても日頃僕という一人称を使って書いているからついつい癖で僕と書いてしまう。そのせいで、荒々しかったはずの主人公がただの変態野郎になっている。
うん、書き直し☆
「アホか、自分。それに比べ少女のキャラブレ一切なしの変態っ子を貫いているのはきっと少女への愛情が強かったからだよね。気持ちわりぃ」
どうしようもないミスを直していきながら、最後までいくと若干話は変わったが彼もとい少年が殺されることには変わらなかった。
ただこれだけは絶対に変えたくないのである。
「死こそが絶対的な愛。殺すことが無二の愛。亡骸を食べることが永遠の愛。だから、恋愛ものにおいて殺すことは必要不可欠なのよね」
死エンドこそがハッピーエンドに繋がるのだと、私は思う。
幸せな「まーきゅん大好き♥」「僕もだよ、ミーちゃん♥」みたいな血ヘドを吐きそうになるものは要らない。あれはハッピーエンドじゃない。どうせ別れるだろ、一年後にはという未来が見えているじゃないか。
だからこそ、絶対に一年後も二年後もずっと一緒という未来が保証される死エンドにトキメキを覚えるのだ。
……なんて、自分で力説しながら恥ずかしくなるわ。
「つーか、私。この作品で何人の人を殺したことになるんだろうか」
恋愛ものになると結果殺しちゃうからなぁ、と過去の作品を確認してみた。案の定、という結果だった。
「七人って……連続殺人犯じゃん。私、これリアルだったら速攻逮捕されるじゃん」
仕方がないよね。殺さなければ恋愛じゃないもの。そのキャラのことを誰よりも深く知っている私が、キャラと対話を続けてその上でこうなったんだから。
キャラ自身もこの結末を望んでいたということでしょ?そう、さっきの少女のように、彼を殺して自分だけのものにするのを切望していたようにね。
私の掌の中で(実際には親指の上で)動く少年少女を私の思うままにするのでは、味がない。
他の人にはないような、キャラと会話することで尚更キャラが輝くのだと思う。
まあ、キャラを勝手に作り出して勝手に殺していくという事実に柔らかみを含めた言い方であるだけで、本当は会話なんて出来ないし出来る訳ないのだからただの自己満足。
実際私の頭の中の人たちがソコから飛び出して文章となって、人様の目に触れられているのだと考えただけで凄く興奮するイケない気持ちになるし、ザマーミロという気持ちにもなる。理由はわからないが。
「さあて、次は恋愛じゃないものにしよう。それでも私のことだから、誰かかれか死ぬんだろうな」
そんな、神様気取りの私の日常。




