喪女
「私、改めて自分のこと喪女だって思ったさ」
突然の彼女の告白に、飲みかけのジュースを鼻から吹き出した。ぐはぁっは、あー、鼻いてぇ。
「なしたさ、急に」
「そもそも山田くんは喪女って言葉知ってるっけ?」
「まあ、一応程度に知ってはいるけど。あれでしょ?彼氏の出来ない痛い女的な……って、佐藤さんには僕がいるじゃんか」
「ちっがーう!!」
「え!??」
それはどっちに対しての違うなの?僕が佐藤さんの彼氏だってこと?だとしたら、僕は今まで相当な恥を晒してきたことになるじゃんか!
「ちゃんとネットで検索してみてよ、違うから」
「ああ良かった。そっちか」
「そっち?」
「何でもない。こっちの話」
「どっちよ」
ぷりぷり、頬を膨らす彼女を一瞥して、グーグルさんに「喪女とは」と聞いてみた。
すると、返ってきた言葉は想像を超えていた。
「喪女と呼ばれる定義は、男性と交際経験が皆無。告白されたことがない人。純潔であること。喪女は、もてない女性のことをいう……」
グーグルさん、一体全体どういうことだい?
彼女が喪女と自身を表する=彼氏いない=僕彼氏じゃない!!
「そっちかぁぁあっ!!!!!??」
「だから、どっちよ」
「いや、何でもなくはないけど、どうしてそんなことを思ったのか言ってみて?」
「なくないのに続けるのね。まあ、良いわ。山田くんは私がバイトしてるの知ってたっけ?」
「ああ、知ってるよ。確か、飲食店の厨房だっけ?」
「そう、よく覚えてるわね。で、厨房は男子が多い訳よ。だから、関わりたくないから出来るだけ一人でこなしてたら、一人の男の子に手を捕まれてさ」
「ほうほう」
「油物は危ないので僕がやりますよ。佐藤さんは別のことしててください……って言われちゃってさぁ」
「へえへえ」
「もう、ずっきゅーん!心臓にきたよね。恋するレベルだよね。しかも、私だけにそういうことしてくれるんだよ?もう、絶対私好かれてるわーとか考えちゃうわ」
「はあはあ」
「あ、ちゃんと現実は分かってるわよ。私なんか、好きになる男の人なんていないから、それは過剰な妄想だってことくらい。でも、期待しちゃうのよ」
えっと、僕の性別って何でしたっけ?男ですよね?間違えてませんよね?そりゃ、女顔と表されることは多々あったが、付いてるし。
彼女は僕を一体なんだと思ってるんだろうか。
彼氏と思ってなかった時点でショックだけど、今の流れから判断すると男だと認識してるかも怪しい。
ちょっと、待ってよ。
「あと、男の人と目があっただけで、その人は私のことを好きなんじゃないかって思うし」
「はー」
「名前を呼ばれただけで、私だけ特別に呼んでくれたの!?と妄想するし」
「ひー」
「電車で席空いてる時に、隣に男の人が座ってきたら、この人私に告白する気なんだって思うし」
「ふー?」
「基本的に男の人はちょいぽちゃが好きって聞いた時には、どうしよう明日から私告白されまくるじゃんとか笑顔になったりしたし」
「へー」
「好きな人に彼女がいても、すぐに私の良さに気がついてすがりついてくるに決まってるって思うし」
「ほー……って、ちょっと待て。どんだけ飛んでるんだよ。頭の中」
「だから、言ったでしょ?喪女だって」
「いや、まあ、聞いてたけど。さあ」
喪女ってここまで酷い妄想を抱いているとは知らなかった。っていうか、やっぱり彼女は僕を男だなんて思ってないよね。
一ミリも。これで、僕、男!なんて言ったりしたら、発狂するのかな?好きになるのかな?
だとしたら結果オーライ?僕と彼女は彼氏彼女の関係に戻るし、お互い好き同士だし?
いやでもなあ、ここでばらしたら喪女の彼女のことだから逃げられてしまうかも。それだったら、女と思われててもこのままで良いや。
しばらくは。
そんな、女顔の僕と喪女発言をする彼女との日常。
また、です。今日は世間一般にいうクリスマスだそうですので、いつもよりも多めに投稿します。(関係ないですが)




