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日常  作者: 太郎
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不運

 

「僕の人生は不運の連続である、まる」


 なーんてね。と、一人呟きながら夜の自転車を漕ぐ。僕のヘッドライトだけが暗い夜道を照らす。さすが田舎。外灯の間隔が広すぎるぜ。

 田舎だからこそ一人言を言いながら自転車を漕いでても良いんだけどさ。


「ふんふふーん、ふふんふんふーん」


 これでもかとばかりに鼻歌を披露しながら、今日の学校での出来事を思い出した。

 今日も、僕は大量の不運に襲われた。

 まず、学校の自動販売機でジュースを買おうとしたが小銭がなくて一万円札を入れたが自動販売機の方も、大きなお金がなくて全て百円玉で返ってきた。

 お陰で僕は子金持ちである。嬉しくないし、重いだけだけど。いやー、誰か交換してくれねーべかの。と、呟くが誰も返してくれなかった。

 まあ、それも人生だと自分をフォローした。


 あと、三時間目の僕の最も苦手とする古文の時間に船を漕いでいたら、教師にここを読めと当てられた。

 ぼーっとしていてどこを読めと言われたのか分からない挙げ句に、古文を読めない僕にとっては生き地獄であった。

 お前は立っていろ。と言われたので、目立たない地味人間はこんな風に授業中で立ったりしちゃいけないので、僕を座らして下さい。と抗議でもしようと思った。

 当然チキンな僕にはそんな勇気もなく、皆の好奇の視線に晒されながら必死に耐えてました、まる。

 一番辛かったのは僕が密かに好意を寄せていた眼鏡のおさげのあの子が、授業中ずっと斜め前の席の男を見ているということに気がついてしまったことだ。

 なんだよ。あの子はあいつのこと好きだったのかよ。いや、別にあの子のこと何とも思ってねーし? 好きなんかじゃねーし、どうってことねーよ。と、強がりながらも半べそかいていた。


 また、四時間目には体育というこれまた僕の嫌いな教科がやってきた。三時間目と四時間目は僕のことを間違いなく殺そうとしているに違いない。

 体育かー、バレーかな? バスケかな? どっちにしようが出来ないけどな。と開き直って体育館にいくと女子がいた。

 今時珍しく男女しっかりと場所を分けて授業を行うスタイルなので、僕は間違えて女子がいつも使ってる方の体育館に来てしまったのかと確認したが、女子と話す男子を見てここで良かったのだと思い出した。


 そういえば、昨日の放課後。明日の体育は男女混同で行いますなんて鬼畜なことを言っていた様な気がする。そして、今日の授業内容がダンスだった気がする。

 どんぴしゃだった。

 マイムマイムやら、ジンギスカンやら定番の男女混同のダンスを踊らされた。運動音痴はそんな簡単な運動すら出来ないので、ワンテンポ遅れながらついていってたら知らない子に睨まれた。

 いや、同じクラスだけど名前と顔が一致しなけりゃ知らない子なのだよ。

 その後教師は何をトチ狂ったのか社交ダンスを踊ることになった。あの、とぅるとぅるとぅるとぅー、って右左と踊っていくやつ。完璧に男子が女子の背中や腰に手を回しながらリードしていく、危ないやつ。

 教師はそれを踊れと言うのだ。

 恥ずかしいし、緊張するが、それよりもあの子と合法で手を繋げれるという喜びに浸っていたら教師から言われた。


「お前身長低いから女子役に回ってくれるか?」


 僕の学年は女子よりも男子の数が勝っている。だから、普通に考えても女子と男子の数をならすのにも何人か女子側に回らなくちゃいけなかったのだが、それがまさか僕だとは思ってもいなかった。

 手を繋げるから準備段階として、擦り切れるんじゃないかと怪訝される程、手の汗を長ジャージで取っていたというのに僕の努力は水の泡となって消えた。

 当然結果は一つである。女子役である僕は男子にリードされながら右左と動かされ、終いにはターンなんかして楽しい時を過ごしました、まる。

 この時以上に自分の身長の低さを恨めしいと感じたことはない。



 まあ、まあ。こんなもんよ。他の細かい不運は忘れてしまったが、ちまちまと面倒な不運に見舞われたことだけは覚えている。

 たっく。僕は何か呪われているのだろうか。訳もなくチリンチリンと自転車のベルを鳴らしながら走行する合間、くあと欠伸が洩れた。

 もう金曜日だし、疲れが出てきたのだろう。そう自覚すると隠れていた眠気がどっと溢れて小さな欠伸がどんどん大きくなって、目尻には涙が貯まってきた。

 そして、最高潮の欠伸が出て、全身の力が抜けて気持ちよくなった瞬間。正面から同じく自転車に乗った高校生が、通りすぎていった。

 この上なく不細工な表情を見知らぬ人に晒してしまったと気づくのは欠伸を堪能してから数秒後。

 更にその数秒後にはすれ違った人が見知らぬ人ではなくてあの子だってことに気がついた。


「うわあわあわあわあわあわあわ!!!!!!!??」


 今更取り乱してももう見られたし遅いのは分かっているが、驚きで口からは意味のない言葉が飛んで出る。

 何でこのタイミングで、何であの状況ですれ違ったんだ。もう少し後か前なら紳士に対応出来たかもかもしれないというのに。

 くそう。これも、僕の異常なスペックである不運のせいなのか? いや、絶対そうだ。

 今度、霊媒師でもなんでも雇ってこれを落としてもらおう。



 そんな、不運の連続な僕の日常。



また

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