天才
コメディー、目指して三千里。
『友人』の続編。
「俺は天才なのだ!」
クラス公認のアホ代表である僕の友人が、自分を指差しながら言った。
「おい、その向ける指先間違えてないか。その人差し指は学年一位の上田くんに向けるべきだ」
「何言ってんだよ。したら、俺が天才じゃなくなるだろ」
「安心しろ、お前は天才のtの字もかすってない」
「んがっ!?なんだよー、俺は天才だっちゅーの」
「天才に謝れ」
「ごめんなさい……じゃ、なくってついつい謝ってしまったじゃねーか!」
相変わらずノリの良い友人は謝った後、おどけた顔で僕を叩いた。
「さすがだよ。中学入ったら何か成長するかと思ったが、何も変わっていない。というかクラス位は変わって欲しかった」
去年、僕が宇宙人だとバレるかもしれないというヒヤヒヤしたことがあったのだが、あの時と彼は変わってない。
クラスも。僕の隣の席だということも。彼の学力も。家が近いから登下校を共にする、ということも。
「寂しいこと言うなよー!」
冗談のつもりだったが、彼は半ベソかいて僕を見ていた。そんな彼と肩を並べながらあ、と気がついた。
そういえば、彼は変わった。小学生の時ほとんど変わらなかった僕らの背丈。しかし、気がついた頃には頭一つ分の身長差が生まれていた。
僕は宇宙人であるから、地球上の因子で成長はしない。一年に一度、幼い時は二ヶ月に一度、母星に帰り星の空気を吸うことによって成長する。
なら、行けよ。という話なのだが税金が八%に値上がりした今は簡単に行けない。十%に上がる前には行きたいと思っているが……というのは置いといて。
「で、何で天才だと錯覚してるの?」
「錯覚じゃないって。俺は有言実行するんだ!」
「は?天才になるってこと?」
思わず首を傾げると、言った本人も首を捻って不思議そうな顔をしていた。
「有言実行って、言ったことが本当のことになるって意味だぞ?お前、頭良いのに知らないのか?」
「それはお前の辞書にしか載ってない意味だ」
「ははっ、まさか」
笑い方に腹がたった僕は、どこからともなく辞書を取り出した。空いていた手に、重い辞書が突如乗るなんて明らかに異常なことだが彼は気づかない。さすが、アホ。
どこから出たのかは宇宙人ってことで、済ませておくことにしたその辞書を開いて載っていた説明を読んでやる。
「有言実行 意味。口にしたことは、何が何でも成し遂げるということ。……だってさ」
「ん?どういう意味だ」
「つまり、有言実行は言えば現実に起こるというのではなくて、言ったことは何があっても達成させる、ということだよ」
やはり、彼は頭をかいて眉をしかめる。
「俺は間違えていたのか?」
「そうだよ。お前が言った天才という言葉を有言実行するなら死ぬよりも辛い試練が待ってるだろうね。うん、死んだ方が早い」
「だよなー。死んで転生したら、俺きっと美少女になって、超絶チートな人生を送れるだろうから……な訳あるか!!」
「ははっ」
彼のムカつく笑い方を真似して、彼から逃げるように小走りをした。けれども僕にとっての小走りは彼には速すぎたみたいで途中彼の気配が背後から消えたのを確認した後、すぐに戻った。
すると、息の切れた彼がかすれ声でバカヤローと罵ってきた。
ああ、しまった。また制御できなかった。そう思うと、彼の言っていたチート美少女と被るところがあるのかもしれない。当然美形だという点については触れもしない。掠りもしない。遠巻きから見るのみだ。
そういや、二回目だ。と、考えて何が二回目なのか何に対しての言葉なのか、そもそも僕の言葉なのかも分からなくなってしまった。おそらく、宇宙からの交信を誤受信したのだろう。
そんな、僕と阿呆な友人の日常。




