5生きてりゃオールオッケー。
「あのっ・・・お話しませんかっ!」
気を抜けば、また寝かされるかもしれない!と思ったあたしが、寝起き1番に発した言葉はこれでした。
なんか違うくね?とも思うが、寝起き+必死だったので、まあ、良しとしよう。うん。
一瞬きょとん、とした顔をした青年だったが、頷きベッドの横にある椅子に座ってくれた。
「遅くなってしまったんですけど、助けていただいて、本当にありがとうございました。」
ぺこり、と頭を下げる。
「・・・いや、俺も助けてもらったからな。」
と、何故か頭をなでられた。
「え、いやいや、そんな。あたし、結局何も出来んくて・・・」
むしろ、なんかすいません。と言おうとした言葉は、青年の言葉と笑顔に遮れた。
「いや。お前は俺を、助けてくれたよ。」
そう言って、頭を撫でていた手が頬を撫でる。
・・・あの、なんかめっちゃ恥ずかしいんですけど。
赤くなった顔を隠すように、少し下を向いた。
「あ、あなたの役に立ったんやったら、良かった、でしゅっ!」
あああ、噛んだ!
「・・・シュウ」
「は?」
え?なになに?噛んだって言いたいん?
「俺の名前。・・・シュウって呼んで。」
「ああ!そう言うことですか!あたしはひなたって言います。ひなたって呼んで下さいね、シュウさん!」
シュウさん、シュウさん。ファンタジーにありがちな長い名前ちゃうくて良かったー。絶対覚えられへんもん。・・・そういえば。どうやって、たぶん異世界から来ちゃいましたー。って伝えようか。信じてくれんよなー。あたしやって信じられへんもん。・・・いや、待て待て。そもそも、異世界トリップしたっていうこと事態、あたしの被害妄想かもしれへん!熱あったしな!うん、そうに違いない!
というあたしの脳内会議は、シュウさんの次の言葉で終了することになる。
「ヒナタ・・・変わった名前だな。異世界人はみんなそんな名前なのか?」
そんな変わってるかなー?シュウさんの名前がシュウっていうくらいやから、普通におりそうやけどなー。あはは・・・
「・・・って、え?今異世界人って言いました?」
さらっと、とんでもないこと言ったよこの人!
「?ヒナタ、違う世界から来たんだろう?」
「え!いや、それはまだ確証がないっていうか、なんていうか・・・」
「・・・ここは、パールティア国。ヒナタの胸元に召喚陣があった。・・・ヒナタ、召喚されたんだよ。」
「え、えぇ!?」
ぱーるてぃあ?召喚?・・・ファンタジーすぎるやろっ!
胸元を見てみると、左胸ーー丁度心臓の辺りに、不思議な模様が赤く浮かび上がっていた。
「え。まじで?」
そっかあー。召喚かあー。誰が喚んだんかなー。何かせなアカンのかなー。・・・面倒くさいなー。
「まあ、しゃーないか。・・・わけわからんけど。」
「・・・憎くないのか?召喚した奴のこと。」
「まあ、何で喚ばれたんかわからないですし、相談しろよ!とも言いたいような気もしますが・・・
召喚されてなかったら、たぶん死んでたんで。」
生きてりゃ、オールオッケーってな感じです。