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バンカラ転生 ~番長の俺が姫だとっ!? 宿敵スケバンまで来やがって、正体バレたら末代までの恥! 切腹不可避!~  作者: くまひこ


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第6話 湧き上がるパワー

 飯を食い終えて一息つくと、ようやく身体に元気が戻ってきた。


 そんな俺に王子は、


「長い眠りについていたから、栄養が足りていなかったようですね」


「つまりガス欠だったってわけか」


 どうりで身体が動かねえ訳だが、身体はまだ鉛のように重い。


 たぶん純粋に筋力が無く、小柄で俊敏だった以前の感覚に比べて格段に動きが悪い。


 歩くだけでも一苦労だったが、やっと茨の城から出発できた俺たちは、深い森をどんどん進んでいった。




「なあ、アルトゥール王子」


「なんでしょうか、リリアナ」


「この森、どこまで続くんだ?」


「ここはとても深く、僕の足でもまる二日はかかります。ですので、リリアナだとさらに時間が……静かに!」


 突然王子が立ち止まると、口に指を押し当て黙るように促す。


 ――グルルルル。


 すると、低いうなり声とともに、草むらがガサリと揺れた。


「……下がっていてください」


 俺たちを後に下がらせ王子が杖を構える。


 それと同時に、黒い獣が姿を現した。


「狼……いや、普通の狼じゃねぇ」


 全身は黒い毛に覆われ、目は真っ赤。口から煙のような息を吐いている。


「何だコイツ……」


「シャドウウルフ。魔素に侵され、狂暴化した狼の成れの果て……魔獣です」


「これが魔獣か……」


 そのシャドウウルフが大地を蹴った。


「うおっ……!」


「リリアナ、危ない!」


 ドンッ!


 王子に突き飛ばされて地面に倒れる。


 直後、俺がいた場所を黒い牙がかすめた。


「首を……狙われていた」


 王子に命を助けられた俺は、すぐに立ち上がったものの、足がふらつきバランスを崩す。


「クソッ……この貧弱な身体め」


 俺の喧嘩スタイルは、真正面からの殴り合い。小柄な身体で相手の懐に潜り込み、必殺『メガトンパンチ』を叩き込む。


 それだけで街中の不良をブッ飛ばし、高校二年で総番長まで上り詰めた。


 だが今の身体は、あり得ねぇほど非力。


 そんな俺をかばうように、早乙女が前に出てきた。


 セーラー服を翻し、メリケンサックを握り締めるスケバン総長。腰を低く落とし、飛びかかってきた魔獣に拳を叩き込んだ。


「ゴージャス、パンチィィーーーっ!」


 バゴォォォォォッ!


「ギャウンッ!」


 メリケンサックが魔獣の顔面に炸裂し、その躯体ごと軽々と吹き飛ばした。


「どや、リリアナ!」


 早乙女がニヤリと振り返る。


「見てみい。ウチ、強いやろ!」


「くそっ……それぐらい俺だって!」


 だが、別のシャドウウルフが容赦なく俺に襲いかかってきた。


「リリアナ、こっちです!」


「うおっ?」


 王子が俺を抱き上げると、お姫様だっこで駆け出した。


 だが、シャドウウルフの脚は速い。あっという間に鋭い牙が背後に迫る。


 ――バゴォォォォォッ!


 その瞬間、再び早乙女の拳が炸裂すると、魔獣の頭を一撃で打ち砕いた。


 ドス黒い血しぶきが舞い散る。


 それでも、早乙女は仕留めた魔獣を気にも留めず、次の獲物を見据えていた。


「強え……それでこそ俺のライバルだ」


 しかし魔獣は2匹で終わらず、草むらからさらに数匹が姿を現した。


「ヤベェ……さすがに数が多すぎるぜ」


 それを見た王子は、走りながら呪文を唱え始める。


(魔法で一掃するつもりか……だったら!)


 王子の腕から飛び降りた俺は、落ちていた太い木の枝を拾って身構えた。


「ダメだ、リリアナっ!」


 呪文が中断。王子が慌てて俺を止める。


 だが俺も男だ。


 王子に振り返ることなく仁王立ちになり、魔獣を睨みつけた。


 逃げるくらいなら、死んだ方がマシ!


「俺が時間を稼ぐ! その隙に魔法をぶち込んでやれ!」


 隣に並んだ早乙女がニヤリと笑った。


「ええ作戦や!」


 メリケンサックを握り締め、俺と同じ構えを取る。


「行くぞ、早乙女!」


「ウチから離れたらあかんで、リリアナ!」


 不倶戴天のライバル。


 だが今だけは違う。


 認めたくねぇが、コイツほど頼れる相棒はいねぇ。


「「うおおおおおっ!」」


 二人同時に大地を蹴って、真正面から魔獣の群れへ突っ込んだ。


 俺は木の枝を力いっぱい振り抜く。


 バギャッ!


 枝は真っ二つに折れ、だが、俺は手元に残った枝を魔獣の顔面に突き刺してやった。


「ギャウンッ!」


 怯んだ隙に、折れたもう一方を拾って魔獣の口へねじ込んだ。


「ギャオオオオンッ!」


 血反吐を吐きながら魔獣は地面をのたうち回り、やがて力尽きる。


「やるやん、リリアナ!」


 早乙女が親指を立てて笑顔をみせるが、魔獣は待ってくれない。数匹が一斉に襲いかかってきた。


「早乙女、次だっ!」


「分かってる!」


「「うおおおおおお!」」


 腰を低く下ろして、全ての力を拳に集中。それを魔獣の顔面に叩きつけた。


「ナメんなコラァ!」


 ドゴオッ!


 互いの勢いが真正面から激突するが、体重は俺の方が上。


 力負けして地面に転がる魔獣に馬乗りになると、渾身の拳を振り下ろした。


 ドガッ!


 華奢な手が血に赤く染まるが、そんなことなど気にしてられねえ。


 俺は番長。


 たとえコイツが魔獣だろうと、犬っころには負けられねぇ!


 ドガッ!


 ドガッ!


 ドガァッ!!


「グルゥッ……!」


 昔の俺なら、一撃で仕留められた。


 だが今は――非力。


 折れてしまいそうな細い手首に、情けなくて涙がこぼれそうになった。


「上等だコラァ! だったら何発でもぶち込んでやらぁ!」


 気合だけは負けねぇ。


 何度でもぶん殴る。ただ、それだけだ。


「おんどりゃあ!」


 悔しくて涙が滲むが、それでも俺は止まらねぇ!


 常勝無敗。


 男の中の男。


 それが硬派番長――黒崎鉄也だ!


「うおおおおおおっ!」


 気合を入れ直した、その時だった。


 俺の両拳が、うっすらと光り始める。


「……何だ、この光は」


 真っ赤に腫れ上がった両拳があっという間に回復すると、同時に身体の奥底から熱い何かが込み上げてきた。


 身体が軽い。


 拳を振るたび空気が震える。


 全身の血が沸騰するように熱が駆け巡る。


 一撃ごとに拳へ力が宿り、シャドウウルフの表情が恐怖にこわばっていく。


「……この湧き上がるパワーは、なんだ!」


 今まで感じたことのねぇ感覚。


 だが分かる。


 ――この力があれば勝てる!


 全身を駆け巡る不思議な力を、俺は両拳に集中させた。


 キイイイイイイインッ!


「これが──俺のっ!」


「メガトォォォォン、パァァァァンチ!」


 ドゴオオオオオオンッ!


 グシャーーーッ!


 俺の右拳が魔獣の顔面を粉砕。そのまま地面に突き刺さった。


 大量の返り血を浴びた俺は、だが立ち上がりざま、飛びかかってきたもう一匹に左拳を叩きつけた。


「喰らえっ!」


 ドゴオオオオオオンッ!


 魔獣のどてっぱらにクリーンヒット。


 血反吐をまき散らしながら空高く舞い上がった魔獣は、地面に叩きつけられそのまま動かなくなった。


「っしゃあ! これで二匹目!」


挿絵(By みてみん)


 そんな俺に、早乙女が目を丸くする。


「……どないやったんやリリアナ! アンタ今、メッチャ光ってんで!」


「そんなことより次、行くぞ! 俺たち二人で魔獣を引き付けるんだ!」


「そやった! アルトゥールはんの魔法を援護するんやったな!」


「魔獣を全部引きずり出すぞ!」


「派手に暴れまわったるでぇ!」


 目で合図を交わした俺たちは、魔獣の群れへ突撃した。

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