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バンカラ転生 ~番長の俺が姫だとっ!? 宿敵スケバンまで来やがって、正体バレたら末代までの恥! 切腹不可避!~  作者: くまひこ


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第32話 聖女の帰還

 軍馬を走らせ、森を駆け抜けた俺たち。たった一日でノルディアに舞い戻った。


「作戦決行だ。行くぞ!」


 冒険者ギルドに飛び込み、カウンタの受付嬢に叫んだ。


「転移陣を貸してくれ!」


「一体、何があったの?」


 理由を聞こうとするが、俺たちに残された時間は少ない。


 魔女の魔法陣が発動するまで、あと二日。それまでにアルヴェルト王国に戻らなければならないのだ。


「いいから早く貸せ!」


「わ、分かったわよ。それでどこまで行きたいの?」


「王都ルーメンだ」


「王都って……ここをどこだと思ってるの! 辺境の街ノルディアよ!」


「金ならある」


「お金の問題じゃないの! そんな長距離跳躍、Fランクのあなたたちでは身体がもたないって言ってるの!」


「なら、こっちの冒険者証ならどうだ?」


「これってCランク冒険者証……えっ、リリアナ!?」


 俺の名を口にすると、ギルド内がざわつき始める。


 それもそのはず、クエスト掲示板には俺の似顔絵付きの手配書が貼られているからだ。


 つまりは賞金首。


 にじり寄って来る冒険者どもに、俺は一喝した。


「死にたくなければ、そこを動くな!」


「「「んだと、このアマぁ!!」」


 だが俺はいきり立つ男どもを制止すると、魔力を一気に解放した。


 キイイイイイイインッ!!


 ドオオオオオオオオオオ……ンッ!


 オーラがギルドの屋根を突き破り、真っすぐ天に昇る。


 それを目の当たりにした冒険者たちは、恐怖に腰が砕けてその場に崩れ落ちた。


「なんだ……これは……」


「……こんな大魔力見たことがねえ」


「こんなバケモノ、無理に決まってんだろ!」


 そんな冒険者を尻目に、俺はセラフィーナに指示。


「金を払ってやれ」


「承知しました」


 収納魔術具から金貨の山を取り出すセラフィーナ。だが受付嬢は困った様に、


「ごめんなさい……ここは辺境だから、いくらお金を積まれても王都までの魔石が……」


「足りねえのかよ! ……だったら自分の魔力で飛んでやるぜ」


「そんな無茶な!」


「早乙女、セラフィーナ、早く来い!」


 受付嬢を無視してギルドの奥へ押し入る。


 片っ端から扉を開け、転移陣室を見つけると、早乙女に転移陣を起動させ、俺はその中央に立った。


 セラフィーナが部屋にあったありったけの魔石を転移陣に並べる。


「全員、魔力を解放しろ!」


「よっしゃ任せときぃ!」


「わたくしの全力、とくとご覧あれ!」


 床の転移陣に両手を押し当て、魔力を一気に流し込んだ。


「うおおおおおっ!」


「いくでえええっ!」


「これがわたくしの……ありったけっ!」


「「「いっけええええ!!」」」


 次の瞬間、世界が裏返った。


 今までとは比較にならない長距離転移。


 三人の魔力を無理やり叩き込んだ超高出力の空間跳躍だった。




 ──キインッ!


「着いた……のか?」


 見覚えのある部屋。


 俺たちは無事、王都ルーメンの冒険者ギルドに転移したらしい。


 だが余った魔力が暴走して、ギルドの屋根がまた吹き飛んでしまった。


 ドゴオオオオオオオ!


「「「きゃあああああっ!」」」


 馴染みの受付嬢さんたちが悲鳴を上げて、床に頭を伏せる。


「あ〜あ、やり過ぎてもうたな」


 早乙女がわざとらしくため息を吐き、セラフィーナは優雅に羽根扇を取り出した。


「わたくしたちの魔力が余ってしまったようですわね」


「またギルドを壊しちまったぜ」


 天に駆け上る魔力の柱。


 それが王都の空へ広がり、王都を守る結界が破れて警報が鳴り響き、その震源である冒険者ギルドに王国騎士団が出撃を始めた。



         ◇



「この魔力は!」


 ルーメン大聖堂。


 執務室にいた枢機卿が、おもむろに立ち上がった。


「間違いない……」


 その表情に歓喜の色が浮かぶ。


「聖女リリアナ様がお戻りになられた!」




 王国騎士団本部でも、騎士団長が仁王立ちに立ち上がった。


「この魔力はリリアナ姫! 早く拘束……いや私が直接出向こう」




 王城では侍従長が窓の外を見つめる。


「……間違いない、姫が王都に戻られたのだ。さらに強力な魔力を手にしてっ!」



         ◇



「サマトリア王国騎士団旗が見えるが、攻め込んでこない所を見ると、誰かの到着を待っているようだな」


「作戦は上手くいきましたわね」


 王国騎士団に包囲される冒険者ギルド。


 彼らを無視して国境の街エレンザに跳躍することもできたが、俺たちはあえてここに留まった。


 なぜなら、大魔力でギルドの屋根を吹き飛ばしたのは、ヤツラを呼び出す作戦だったからだ。


 しばらく待っていると、三人の男が俺たちが冒険者ギルドの中に入ってきた。


 一人はルーメン大聖堂の枢機卿。


 もう一人は、サマトリア王国騎士団長。


 最後の一人は、サマトリア王家侍従長。


 この三人が恭しく頭を下げる。


「お帰りなさい、聖女リリアナ」


「良く帰って来た、我が同志よ!」


「ご無事で何よりでした、側妃殿下」


 そんな彼らに俺が告げる。


「てめえら来るのが遅え! 三人のケンカに付き合ってる時間はねえし今から一人ずつ話を聞いてやる。まずはテメェだ枢機卿!」


 俺はそう言うと、枢機卿の腕を引っ張ってギルドの会議室に連れ込んだ。



         ◇



 ソファーの向かいに座った枢機卿が、得意げに話し出す。


「我が教会は世界中に信者を持ち、サマトリア王国などその一つにすぎません。教会の聖女になれば世界中の信者たちの尊敬を集め、王の妾などとは比べ物にならないほどの権力を持つことができます」


「俺は権力に興味ねえ」


「ですが」


「それより聞かせてくれ。お前らの図書館にあった『人体魔石化』の魔術について」


「なぜそれをっ!」


「テメェらには見せていなかったが、エルナが邪神教徒と疑った証拠がこれだ」


 すると、セラフィーナが懐からメモを取り出し、枢機卿の前で広げた。


「ああっ!」


「枢機卿……テメェ、魔女の手先か?」


「な、何のことでしょうか……?」


「とぼけるのもいい加減にしろ! エルヴァリア王国を滅ぼした魔女の仲間かと、俺は聞いてるんだ!」


「な、なぜその国のことを……」


「やっぱり隠してやがったな! 魔女の仲間は容赦しねえ。教会ごとテメェをブッコロしてやる!」


 ゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「待ってください! すべて誤解なんです!」


「……なら説明しろ。もし納得いかねえ説明だったら、お前ら教会の悪事を騎士団長と侍従長の二人にぶちまけてやる!」


「誤解だから、それだけはやめて!」


「なら早く言え!」


 すべてを観念した枢機卿は、ポツリポツリと話し出した。




 魔女はかつて、教会の聖女だった。


 だが、教会所蔵の古文書の中に『人体魔石化』の魔術を見つけ、永遠の若さ欲しさに姿をくらました。


 そして当時隆盛を誇っていたエルヴァリア王国に目をつけ、王侯貴族の魔石化に成功。


 そこで得た大量の人体魔石を少しずつ消費することで、永遠の命を手に入れた。


 一方の教会は、権威失墜を恐れて魔女の記録を全て抹消。エルヴァリア王国の存在すら消し去ろうと、歴史書からすべて削除。


 徹底的な焚書が行われたのだ。


「でも、どうして魔女の存在に気づかれたのですか?」


 真っ青な顔の枢機卿の前に、俺は魔石を突きつけた。


「これが人体魔石の魔術によって姿を変えたエルヴァリア王国第一王子アルフォンスだ」


「ひいいいいっ!」


挿絵(By みてみん)


 脈打つように赤黒く光る魔石に、枢機卿は一目で本物だと理解する。


「そ……それをどこで?」


「アルヴェルト王国、その王家宝物庫に転がっていたのを俺が見つけた」


「なぜそんなところに……まさか!」


「あと二日後に魔女が再び、今度はアルヴェルト王国で人体魔石化の魔法を発動する。手持ちの人体魔石を使ってな」


「そんな……バカな!」


「それを阻止するため、俺はここに舞い戻った。俺に協力する気はあるか?」


「協力って……何をすればよろしいので」


「聖堂騎士団を貸せ! 俺が魔女を倒す!」

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