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婚外カフェ  作者: 蒼狐
第3部 夜の契約

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第七話 外の夜

剛の質問は、徐々に具体的になっていった。


「昨日の打ち合わせ、どの編集者と? 終電、間に合ったか?」


「最近、香水変えた? 前と違う匂いがする」


由依は毎回、笑顔で取り繕った。剛はそれ以上追及しない。優しいままなのに、その優しさが最近は刃物のように感じられた。ある朝、由依が起床した後、剛が彼女のスマホを手に取ろうとして、寸前でやめたことに、由依は薄々気づいていた。


怖かった。

なのに、黒木への欲求は止まなかった。


『店以外で会えないか。剛の目が、最近きついわ』


由依が送ったメッセージに、黒木はすぐに返信した。


『わかった。金曜の午後、俺が予約する』


---


金曜日、由依は午後の仕事を早めに切り上げ、指定されたホテルへ向かった。派手なラブホテルではなく、ビジネス街の落ち着いたシティホテル。黒木はロビーで待っていて、会った瞬間に由依の手を握った。その手は熱く、微かに汗ばんでいた。


部屋に入るなり、二人は抱き合った。キスは深く、ほとんど必死だった。由依は黒木のスーツのジャケットを乱暴に脱がせ、シャツのボタンを外す。黒木も由依のブラウスを捲り上げ、ブラジャーの上から胸を強く揉んだ。


「店より……怖いな」


黒木が掠れた声で言う。由依は頷きながら、自らベルトに手をかけた。


「ええ。だから、余計に触れたい」


二人はベッドに倒れ込んだ。黒木は由依のスカートを腰まで上げ、ストッキングを引き裂くように下ろした。指が秘部に滑り込み、由依はすぐに甘い声を上げる。ホテルの窓の外では、まだ明るいうちの街の喧騒が聞こえていた。それが、背徳感を一層強くした。


黒木は由依の脚を肩にかけ、ゆっくりと、しかし深く進入した。由依は枕を掴み、声を殺すように喘いだ。店の三号室とは違う、緊張と解放が混じった感覚。黒木の動きは徐々に激しくなり、由依の中を何度も抉るように突いた。


「由依……俺だけを見てろ」


「見てる……あなたしか、見えない」


由依は黒木の背中に爪を立て、何度も達した。黒木もまた、由依の名前を繰り返し呼びながら、深く果てた。二人は汗だくで絡まったまま、しばらく動けなかった。


事後、黒木が由依の髪を撫でながら言った。


「このまま、どこか遠くへ行きたくなるな」


由依は苦く微笑んだ。


「行けないわ。わかってるでしょ」


沈黙が落ちる。快楽の余韻の中に、冷たい現実が静かに戻ってくる。


---


由依が家に帰ると、剛が玄関で靴を履いたまま待っていた。


「今日は早いな。どこに行ってた?」


「……カフェで原稿の整理」


剛は由依の顔をじっと見た。視線が、首筋から鎖骨へ落ちる。由依は無意識にコートの襟を合わせた。


剛は何も言わずに横を通り過ぎた。

その背中が、今までで一番遠く感じられた。


夜中、由依のスマホに黒木から短いメッセージが届いた。


『次も、外で会えるか?』


由依は画面を見つめたまま、長い時間、返信できなかった。

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