表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚外カフェ  作者: 蒼狐
第2部 地下の契約

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/21

第八話 網は静かに

雪乃が地下に来て三日が過ぎた。


澪は彼女の「接待」を任されたまま、部屋で雪乃と向かい合っていた。雪乃の目はまだどこか虚ろで、新しい名前「氷室 雪」を呼ばれても反応が鈍い。


「怖くないの?」と澪が尋ねると、雪乃は小さく首を振った。


「怖い。でも……地上に戻る方がもっと怖いわ。夫の顔を見るだけで、自分が消えていく気がしたから」


澪は胸が締めつけられた。自分が誘ったという事実が、重くのしかかる。零が隣で静かにワインを傾けながら、澪の反応を観察していた。


その夜、零は澪を激しく求めた。いつもより荒々しく、まるで澪の心の揺らぎをねじ伏せるような抱擁だった。澪は快楽に身を委ねながらも、頭の片隅で思った。


『零は、本当に私を守ってくれているのだろうか? それとも、ただの道具として見ているだけなのか』


行為の後、零がぽつりと言った。


「雪乃は早く馴染む。お前が上手く導いたおかげだ。佐伯も評価している」


澪は零の胸に顔を埋めたまま、答えられなかった。


---


一方、地上では事態が動き始めていた。


白峰和也は探偵を増やし、店の周辺を徹底的に監視させていた。ある夜、探偵から緊急の連絡が入る。


「店の奥に隠し通路がある可能性が高いです。女性が数名、夜中に姿を消し、翌朝には戻らないケースが複数確認されています。奥様とほぼ同じパターンです」


和也は拳を机に叩きつけた。


「警察を動かす。失踪事件として届け出る。店を強制的に調べさせろ」


探偵が慎重に言った。


「ただ……店主の佐伯という男は、かなりのコネを持っているようです。簡単には踏み込めないかもしれません」


和也は冷たく笑った。


「コネだろうが何だろうが、俺の妻を奪った以上、絶対に許さない」


---


地下に戻った佐伯は、澪と零を静かに呼んだ。


「地上で、白峰和也が本格的に動き始めています。警察を動かそうとしているようです」


澪の顔が青ざめた。


零が低く呟いた。


「予想より早いな」


佐伯は穏やかなまま続けた。


「心配いりません。こちらで対処します。ただし……澪さん、あなたが契約を破って地上と連絡を取ろうとした場合、代償は即座に執行されます。理解していますね?」


澪は震える声で頷いた。


「……わかっています」


佐伯が去った後、零が澪の肩を抱き寄せた。


「俺がいる。大丈夫だ」


しかし澪は、零の手がどこか冷たく感じられた。


地下の空気が、さらに重く沈んでいくのを、彼女は確かに感じていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ