四十九話:ようこそ、ネルソービュー学園へ
「......え............?」
氷のように冷たい手が、背後から私の指先を掴んでくる。
まるで霜が降りてしまっているような、子供の手。
でも、触れても溶けることはなくて、むしろ......一切水分を感じられない。
血の通っていない肌とは対照的に、炭よりも黒い髪が頭を覆っている。
ずっと見つめていると、深海に沈められるような感覚がする、目。
肌に空いた、終わりの見えない穴、穴、穴、穴、穴、穴、
「——~~~~っ」
私はつい彼の手を振り払って、後ずさりしてしまった。
一瞬息をするのを忘れちゃってたせいか、体が勝手に肩で呼吸しようとする。
ここはあの森の中じゃない。幻覚の世界でもないはず。
なんで......っ、なんで本校舎に、っっ
「みず——いろの、おねえちゃん。このまえは——ぼくと、あそんで——くれ——て、ありがとう......ね。」
「ヒ、ナタ......くん......っ......!?」
辺りを見渡す。周りには誰もいない。いない、けど、っ
「だ、め、駄目だよヒナタくんっ校舎に入ってきちゃっっ」
私はヒナタくんの両肩を掴んで、できるだけ自分の背中で彼を隠そうとして、
「み、見つかったら、え、っと、っ」
『消されちゃう』とか『始末されちゃう』よりも子供向けな言葉を探そうとするけど、
でも......今更か。
この子自身、『みなごろしにしよう』とか、言ってた、し......。
............、
「とっっにかく、ここにいたらまずいって!! 早くここから一緒に出」
「ママ——、を......さがしに、きたんだ。」
ヒナタくんは目の穴を細めながら、俯く。
無数の穴が集まっているからか、靴下を履いているように見える素足で、固い床を蹴る。
一回。二回。三回。一定のリズムで、ゆっくりと。
「ママ、ね——ここにいる、って。いるんだって。」
「お......お母さんが? なんで——」
「でもね、うそだった。ママはとっくにネルソービューに、けされちゃ——ったんだ。」
ヒナタくんは淡々と呟いた。
「ママは——あくりょう、だからって。ネルソービューにいちゃだめ——なんだ、って。」
声が低くなったり、震えたりはしてない。
でも、床を蹴る力が、どんどん痛々しくなっていく。
「なん——で? なにがちがうの? ママと、ネルソービューのせいと......ぼくと、ネルソービューの——せいと......なにが——ちがう、の?」
どんどん。どんどん、
「なんで、ママだけ——けされちゃう、の?」
私は口を開ける。
でも、唇が震えて、勝手に閉じる。
何も。
何も......言えない............。
「......、っ......」
「ねーねー。みずいろのおねえちゃんも、うそつきは——きらい?」
ヒナタくんは首をかしげながら、私の顔を覗き込んでくる。
近くにいるだけで、冷気のような、殺意のような......何か、が............。
「ぅ、え、っとぉ......すきではない、かな......」
私はつい目を逸らしてしまいながら、答える。
嘘じゃないはずなのに、何故か嘘をついているような気持ちだった。
それでも、ヒナタくんは嬉しそうだった。
「そうだよ——ね。うそつきはだめだよ——ね。」
ヒナタくんの肌に空いた穴々が、まるで沸騰しているかのようにブクブクしだす。
広がったり縮んだり、消えたり現れたり、冷たかったり熱かったり......。
「ねーねー。このまえは、ほんとのこと——いいそびれちゃったよね。」
「————っっ」
なんの話をしてるのかすぐにわかってしまった自分が、憎かった。
『おしえてあげようか。』
『ネルソービューの、くさった——ひみつ、ぜぇ~~~~~~んぶ。』
「ねーねー。こんどこそおしえてあげよっか。みせてあげよっか。」
『おねえちゃ——んはきっと、しんじつ、から——にげられない、ひとだと、おもうから。』
『しりたいよね? おねえちゃんはまだにんげんだから、おしえてあげる。』
......もう嫌になるくらい、何度も脳で繰り返してきて。
そのせいで心配かけちゃったりして。
「テオもブレイズおにいちゃんも——しってること。」
『じんがいを、みなごろしにしようね!』
本当のことが気になって気になって仕方なくて、
でも、
そのくせ、私は——
「みずいろのおねえちゃん——おいで。ついて、きて。」
ヒナタくんは、私に真っ白で真っ黒な手を差し出した。
口角が、まるで切り口のように広がる。
「シニガミが......きてるの。シニガミと、ブレイズおにいちゃんの——おはなし、きいて——たら、ほんとのこと——わかる......ょ」
彼の両目が、色のない虹のような形になった。
..................怖い。
怖い、こわい......こわい......っ......!!
知っちゃったら、きっともう、戻れない。
ネルソービューを今までと同じような目で見れないって、わかっちゃうの、何もわかんないけどわかっちゃうのっ、
ずっと目を逸らしてきてたことも、
信じたくないって、無視してきちゃってたことも全部、
全部が、、、
「......——............」
で、も......
っ
私は、ヒナタくんの手を取った。
自分の方から触れたくせに、鳥肌が立つ。
「え——へ、......いこっか。みずいろの、おねえ——ちゃん。」
......思っちゃったんだ。
私。
もう。
真実を知って、とっとと楽になりたい、って......。
***
やっぱり、あの森の中に誘われた。
でも、ヒナタくんの手を振り払う気は起きなかった。
......三回目の森の冷気は、いつにも増して刺すように感じる。
もう遅い。
もう引き返せない。
これから、お前は知ってしまう。
そう、言われているような。
咎められて、いるような————
「ブレ——~~? 甘いのと——いの、——っちが————?」
「ですから——って——————な」
奥の方から響き出した声は、私に心の準備をする時間も与えてくれなかった。
心臓が震える。
寒い。冷たい。寒い、痛い、くる、しい、っ
今、私......誰にも見せられないような顔、しちゃってるんだろうな......。
「も~~~~——れないなぁ! ちょっと——い良いじゃ~~~~ん!」
「さようなら」
「ブレイズよぉ、そんなんだからモテないのじゃぞ?」
「いいから早くその手を離せ。撃たれたいんですか?」
ブレイズくんと、もう一人は知らない声、だけど......間違いない。
シニガミさん。死神さん......。
「そんなに僕ちんとお茶するのが嫌ぁ? うぇえ~~~ん僕ちん泣いちゃう~~!」
「勝手に一人で泣いてろ」
「相変わらずのツンツンツンツンツンツンツンツンデレですn——~~っとぉ、軽率に銃抜くのやめよっか?」
霧の中から、少しずつ二人の姿が見えてくる。
シルエットの解像度が上がって、青白い空気に馴染んだ色が浮かんできて、
いつも通り制服を着てるブレイズくんと、
そんな彼の手を掴んでる死神さんは......まず、腕が包帯だらけだった。
枯れ葉と同じ色の、フード付きケープ......?を羽織ってるけど、ブレイズくんの手を引っ張ったり暴れまくったりしてるから、包帯まみれの腕がよく露出してる。
ケープの下に着てるのは、カーキ色のズボンと......黄色の半袖パーカー、かな?
寒そうなのか暑そうなのかわからない格好してるけど、本人は気温なんて気にしてなさそうな顔してる。
普通の人間と、あまり変わらない見た目をしてる、けど......。
「ねぇ知ってるぅ~? 死神に銃口を向けるのは縁起が悪いんだよ~~?」
「適当なこと言わないでください」
「今回は適当じゃないってば! 死神に喧嘩売ったら死期が早まるってよく言うじゃん!」
「......」
死神......それも確か、ネルソービューで選べる人外の一つだったはず。
でもなんとなく、あの死神さんはネルソービューから来たわけじゃないって、わかる。
制服着てないのもそうだけど、雰囲気がもう......なんていうか......溢れ出る余裕というか、上位存在感というか......。
「ね? だから銃し~~~まおっ? ほら見てよぉ、この僕ちんのつぶらな瞳を~~~!」
「さらに殺意を沸かせるような顔をしないでください」
死神さんが両手を広げながらニコ~~~っと笑うたびに、フード下の藍色の髪が揺れる。
遠くてちょっと見えづらいけど......ブレイズくんより童顔っぽい......?
もうちょっと近くで見ようと、あと一歩だけ進もうと
した、
けど、
ヒナタくんに手を引っ張られて、結局踏み出せずに終わった。
私は上げた足を下ろしながら、後ろを振り返る。
すると、ヒナタくんは微笑みながら、パッと私の手を離して、
「ぼくは——ね。もういくね。シニガミにみつかりたくない......から。」
「え!?!?!?!?!? 一緒にいてくれないの!?!?!?!?!?」(小声)
「それじゃあ、ね。ふたりのはなし——ちゃんと、きいててね。」
「まっ、まままままま待ってヒナタくん!!!!」(小声)
私は急いで手を伸ばしたけど、彼の手をもう一度掴むことはできなくて。
ヒナタくんは私に背を向けたが最後、あっという間に森のどこかへ消えてしまった。
「えっ、え、え、......えぇぇぇぇええぇぇ......????」
というわけで、突然森に取り残されました。
ムキィーーーーーっ!!!! どいつもこいつもなんの説明もなしにぃーーーーっ!!!!
も、もし今ブレイズくんたちに見つかったら、私が一人でストーカーしに来たみたいになっちゃうじゃん......!!
ヒナタくんに連れてこられたって言っても信じてもらえないかもしれないじゃん!!
「そんなことよりさぁブレイズ、辛いのと甘いのどっちが好きで——」
「ですから、お前と茶を飲む気はないとさっきから言っているでしょう」
「そんなぁ~~~!! 先っぽだけ!! 先っぽだけでいいから!!!!」
私は太めの木の後ろに隠れて、そ~~っと二人の方を覗き続ける。
バレたら本当に終わる......バレたら終わり......!
「......では、その指先を切り落としてもよろしいのであれば、良いですよ」
「おっけーー! 指なら別にいいよ! また生やせばいいし!」
「......。............」
「ちょっっっドン引きしないでよ!! 僕ちんが指の一本や二本生やせることくらい知ってるでしょ~~??」
......それにしても......。
この二人、さっきからずっとコントみたいな会話続けてるなぁ......。
「でしたら、心臓の先っぽを貫いてもよろしいのであれば......」
「それは流石に死んじまうよぉ親分~~」
「心臓を一個増やすことくらい、お前にとっては造作もないでしょう?」
「いやそこまでいくと錬金術なのよ」
「では死んでください」
「なにぃ!?!? 僕ちんが死んだら困るのはそっちなクセに!!!!」
ブレイズくんのこの態度......もしかしてこの死神さんが、いつもブレイズくんがテレパシーで話してる相手だったり?
ブレイズくんったら相変わらず冷たい目してるけど、死神さんの方はずっと楽しそう。
「ねぇねぇねぇねぇねぇねぇっ、そんなに僕ちんとお茶会するのが嫌ならさっ、せめて世間話しよーーよ!! 学校どう? 楽しい? ネルソービューってどんな感じ??」
......あ。ブレイズくん、やっと銃下ろした。
「......、......はぁ......。......その質問になら、この間答えたはずですが」
「答えてないでーーーす!! いっつも事務的な報告しかしてくれないじゃん!! もっとこう、なんか、ねぇの?? ネルソービューで半年以上過ごした感想的な!」
「そう言われましても......」
ブレイズくんは乱暴に死神さんの手を振り払った後、何度もため息をつきながら俯く。一応考えてはあげてるみたい。
死神さんは目に流星群を宿らせながら、何気にじりじりとブレイズくんに近づいていた。餌を強請ってる猫ちゃんみたいな顔してる。
「ほらほら、楽しくないの? 学園生活! お前が生きてた頃は経験できなかったんだろ?」
「......楽しくないですよ。あそこは偽善に溢れていて、閉鎖的で、不気味で......」
『シニガミと、ブレイズおにいちゃんの——おはなし、きいて——たら、ほんとのこと——わかる......ょ』
って、ヒナタくんは言ってたけど......今のところ、そんな気配は無さそう......?
熱いのと、冷たいのと、温かいのが同時にくる。
早く知りたい。でも知りたくない。
楽になりたい。でも怖い。
まだ......まだ、知らなくていい。
少なくとも、心の準備をする時間はまだありそう。
「んじゃもっと具体的に教えてよ~~。キラキラのネルソービュー学園での生活が、どうして不気味だって思うのさぁ?」
「具体的に......ですか?」
と、とりあえず、深呼吸しよう。
指震えちゃってるもん。ちょっと息が怪しいもん。
そもそもこんなに緊張するなんて、らしくない、だろう、し。
変だろうし。
自分の意志でここに来たくせにさ。
「そうですね、まずは......」
息を吸って、三秒止めて......って違うっけ、これしゃっくりの止め方だっけ?
まずは息を吸っ
「ネルソービューの生徒の大半は、自分がすでに死んでいることに気づいておりません」
............え?
「ネルソービューの運営側が意図的に隠しているのでしょう。全生徒の記憶を消去しているのも、おそらくそのためで.......本来の目的を隠すためでしょうか? 反吐が出る......」
「まっ、その方が色々やりやすいのかもね~。知らんけど~~」
あ......あはは。
いやいやいや。そんなわけない。そんなわけないでしょ。
「お前は本当に、ネルソービューの内情を何も知らないのですか?」
「知らないよ~~! 僕ちん、ポエナ在住のしがない死神さんだも~~ん! ネルソービューには時々仕事で来てるだけだも~~~ん!」
私が......もう、死んでる?
ネルソービューの生徒は、もうすでに死んでる?
ないよ。そんなわけない。
だって私、ちゃんと食べて、
ちゃんと生きて、
こうして息も吸って、
魔法も使えて、
友達もいて、
その友達もみんなちゃんと生きて、
笑って、
毎日楽しく過ごして、
て、
私は、ブレイズくんとは違
『ママと、ネルソービューのせいと......ぼくと、ネルソービューの——せいと......なにが——ちがう、の?』
「っっちがう、ちがうよっ、私は幽霊なんかじゃないっ」
そんなわけないじゃんっ、ありえないじゃんっ、
ネルソービューの生徒が、実は全員幽霊?
あはっ、あはははははっっ、幽霊いすぎでしょっ
そんなわけない
私たちは選ばれた人間、なんでしょ?
人外になるために、ここに入学したんでしょ?
みんな記憶消されちゃってるけど、ずっとなんでなのかわかんなかったけどっ、
そんな、死んでることを忘れさせるためとか、
あまりにも、
そん、
な
「あっ、は......は......っは、ははっ、はぁっ、っぁ、は」
『キャ......ベツ......「キャベツ・グッドネス」......』
『わたくしは......「ミルフォイル・バターフィールド」って言うんですって~』
『あーしはローリエ。「ローリエ・ビューリュー」』
『ぼくは「オリーブ・メイベリー」だよ。す、好きなように呼んでくれて大丈夫......』
......ちがう。
みんなが。もうとっくに死んでるとか。絶対。ありえないから。
信じるわけない。信じないよ。そんなの。
だって、みんなは、っ
「いき、て、わたしたちは、いき、て」
『全員馬鹿で、無知で......こんな簡単なことに、四年経っても気づいてないやつだっている』
「違う!!!!!! 私たちは死んでない!! ちゃんと、ちゃんと生きて——」
銃声が鳴った。
樹皮が砕かれる。
耳が熱い。当たったわけじゃないのに、どこも怪我してないのに熱い、熱い冷たい熱い熱い熱い熱い熱い
「そこにいるのは誰です? お前はネルソービューの生徒ですか?」
「————っ、ぁ、っっっ!!!!」
走った。
ロリータ制服の裾の部分が何回も何回も枝に引っかかっちゃって、何回もつまづいたり転んじゃったりして、
でもそんなのどうでもよくて、
這いつくばうように、
ゾンビみたい、に、っ
「待ちなさい!!!!」
銃声
ブレイズくんの声
右と左ってどっちだったっけ
どっちに行けばいいんだっけ
苦しい、い、たい、咳したいけどそしたら息できないっ
「やっっっだ、やだっまって、まってうたないで、うた、な、っっはぁっ」
振り返るのが怖い
ブレイズくん、だよ、ブレイズくんだから大丈夫だよ、
私だって気づいてないだけだよ
死にたくない
早く伝えてあげないと
死にたくない
私だよって、大丈夫だよって、敵じゃないよって、
でももう死んでるんでしょ?
違う!!!!!!!!!!!!
「————っっひ、ぁ」
落ち葉が目に入りそうになる。
落ちてた枝が腕に刺さりそうになる。
土の匂い。
血の匂い。
い、たい、いたいよっ
立て......な、い......なんで......っ......?
「う゛っ............っい......!」
ふくらはぎには、赤い線がたくさんあった。
靴下が破けちゃってた。
いつの間にかローファーも片方なくなってる。
片方の足だけドクドクいってる。
一番おっきい赤い線から、たくさん流れる。
下に降りるカーテンみたいに。
う、たれ、
わたし......うたれた、の............?
「逃げても無駄です、観念なさ————っ!?」
目が合った瞬間、ブレイズくんは足を止めた。
霞んだ視界の中でも、彼が青ざめていくのがわかる。
「っ......が、ーでぃ......なー......? どう、して............」
そうだよね。やっぱり私だって気づいてなかったからだよね。だから撃っちゃったんだよね。
大丈夫だよ。怪我したの、足だけだよ。
死にはしないよ。大丈夫だよ。これくらい、治癒魔法でなんとかなるよ。
って。言わなきゃ。
言わなきゃ。言わなきゃ。言わなきゃ。言わなきゃ、言わなきゃ、言わなきゃっ
「っ......ぶ......れいず、く............」
「お、れ......っなんで、なんでここにいるんだよっ」
「..................」
「け、怪我をしたのは足だけですか? じっとしていてください、今——」
「わたし......死んじゃってるなんて、うそだよね......?」
ブレイズくんは息を止めた。
びっくりしただけ、だよね。私が急に変なこと聞いたから。
目を見開いてるのも。炎が見たことないくらい揺らいでるのも。
ごめん。ごめんね、こんなこと聞いて。そんなわけないのにね。
そんなわけないよね。
そんなわけないよ。
そんなわけないよって言ってよ。
おねがい
おねがい、だから、っ
「ね、ぇ......ちがうよね......? だって、わたし、わたしぜったい生きてるもん、みんなも生きてるもんっ」
「. . . . . .」
「みんな死んじゃってるなんてうそだよっっ、た、しかに記憶ないけど、なくなっちゃってるけどっ、だからってそんな、わ、け」
「......」
「だって、だってほら、いたい、よ? 怪我もちゃんと痛いよ? 血いっぱい出てるよ? 死んでたらこんなに出ないよねっ、痛くないよねっ、ねぇっっ」
「......」
「死にたくないって思ったよ? こわかったよ? こわかったからにげちゃったんだよ? もう死んでたらこわくないはずだよね? そうでしょ、だからわたしはっ」
「...」
「ほらみて、みてよブレイズくん、冷や汗とまんないよ、っっ息だってくるしいよ、生きてなかったらこんなことなんないよぜったい、ありえない、よ、ありえないよっっ!!」
なんで?
なんで目逸らすの?
なんで何も言ってくれないの?
「みて、よ、とまんないよ、涙とまんないよぉっ、とめられないよ、死んでたらこんなことなんないもん、っっっぅ、ぜったいなんない、っっもん、」
「......、」
「生きてないなら私はなんなのっっみんなはなんなのっっ、ネルソービューってなんなのっ、なんでみんな死んでるのっなんで死んでるのに人外にしようとするの、どういうことなのっ死んでたらなんにもなれないんじゃ」
『なれますよ。幽霊だろうが、悪霊だろうが』
「っっっっしんでないもん......いきてるもん......わたしもみんなも......いきてるもん......っ......」
『............お前からなら......なんでも嬉しいから......よォ........................』
『ぼく......好き、なんだ。ガーディナーさんのこと......』
『あら~! ウィローちゃん、ハムスターみたいで可愛いわ~』
『あんたにはあーしがおる』
「っっう、......~~っっ......しんでるわけ......ないもん..................」
『私、アポネ・ネルソービューは......すべての生徒たちの幸せを、願っておりますの』
「ガーディナー」
落ち葉が潰れる音がする。
焚き火のような匂いがする。
「信じられないのであれば......自分自身を、見つめてみろ」
ブレイズくんは前にかがみながら、そっと私の肩に触れた。
初めて見た。怒ってないときに、敬語が崩れるところ。
蝋燭周りにいるような、感覚......
みんなといるときと、おな......じ......。
「っ............わたし、を......?」
「はい。ご自身の目で、確かめてみてください」
私は制服の袖で目をこすった。土のせいで、もうすでに湿ってた。
そのまま、言われた通りに見つめた、
私の手のひら、には。
「 . . . . . .」
ぽつ、ぽつと。
画鋲で開けたような。
光を吸うような穴が、空いていた。
『え~~、レディース&ジェントルメン、とでも言うべきでショウカ?』
『それでは改めまして......新入生の皆様方、ようこそ』
『人間を人外へと生まれ変わらせる楽園——ネルソービュー学園へ』
すでに勘づいていた方はすごいです、甘えびのお寿司をあげたいです
次話:死神さん
です。まだまだ続きます、よろしくお願いします




