四十六話:3
「......随分遅かったですね」
部屋に戻るなり、ブレイズくんの声が聞こえてくる。
彼は椅子の背もたれに肘をかけたまま、軽くこっちを振り返っていた。
「てっきり今日は帰ってこないものかと」
「あ、あははっ、ちょっとね......」
私はとりあえずスマホを自分の机の上に置いて、ちょっと前に買った新しいテーブルランプを点ける。クラゲみたいな形で可愛いやつ。
もうだいぶ遅い時間だし、さっさとシャワー浴びた方がいいよね? それとも先に歯磨きするべき??
あでもちょっとお腹空いて......お菓子......でもチップスは微妙に歯に挟まるんだよなぁ......。
あっ、そうだ! こんなときのためのキャラメルじゃん! キャベツくん大量にくれたし、さっそく一個くらい食べちゃってもいいよね!
この時間のキャラメルは有罪でしかないけどまぁ、ほ、ほら......これは私が幸せになるための選択だから! うん!!
『——おい、ガーディナー。やっぱお前......』
「......、......」
......きゃ......キャラメル、嬉しいな~!
嬉しいよ。すごく嬉しい。
キャベツくん、私のこと......いっぱい見ててくれて......。
......。
「あ、そうだ! ブレイズくんもキャラメルいる?」
「この時間にですか?」
「この時間だから美味しいんじゃーん!」
私はブレイズくんの手に、半ば無理やりキャラメルを一個押し付ける。
「はいっ、これで君も共犯者ねっ!」
彼は驚きで瞳の青い炎を揺らして、呆れで黒目の面積を減らしたけど、なんだかんだ受け取ってはくれた。
「キャラメルは、虫歯になりやすいと聞きますが」
「もしそうなったら、一緒にキャベツくんのせいにしよ」
「わかりました」
あまりにも曇りなき『わかりました』が飛んできて、私は思わず吹き出しそうになる。
なお、ブレイズくん本人は、なんで私が笑ってるのかわからないとでも言いたげに首をかしげた。
私がキャラメルの包み紙を剥がしてる間も、彼はじ~~っとこっちを見てきて——
「ガーディナー......その腕はどうされたんですか?」
「......へ?」
ブレイズくんは私の左手を指差し——......あ......あ~~~、なるほど......。
「んもーーーーブレイズくん、紛らわしい聞き方しないでよ! 普通に『そのブレスレットはどうしたんですか』って聞いてよ!」
「? お前の腕に見覚えのないものが付いておりましたので......」
「別にいいけどさぁ......一瞬『あれ? 私怪我したっけ??』ってなっちゃったじゃん!」
私は制服の袖をまくって、彼にも自分にもブレスレットを見えやすくする。
コーヒー豆色の編み編みレザーと、それを繋ぐ小さな太陽。
銀色だからか、どこか控えめで、静かで、冷たくも......見える。
「これねっ、ホワイトデーのお返しにオリーブくんがくれたの! 可愛いしかっこいいし可愛いでしょ?」
「......ほわいとでー......」
これだけじゃなくて、綺麗な金平糖の小瓶もくれたし......。
『ぼくにとって、ガーディナーさんは太陽みたいな存在、だから......』
『ぼくの、気持ち......少しでも、届いてると嬉しい、な............』
............びっくり、したなぁ......。
最初から、本命だってわかってたはずなのに......。
「......なんだか嬉しそうですね」
「え!? ほんと!?」
「? はい」
ブレイズくんは頷きながら、ほんの少しだけ口角を上げてくれた。
目にハイライトが増えたような気がしたけど......あれかな。メガネに光が反射しただけかな。
「お前は本当にわかりやすいですね」
「え、え~~?? そうかなぁ~......?」
そっか、私嬉しそうにしてたんだ......。
......よかった......。
「っていうか、ブレイズくんも人のこと言えなくない?」
「そうですか?」
「そーだよ、だいぶわかりやすいよ君も」
あっ、照れちゃったのかな? ちょっとそっぽ向いちゃった......。
もっとからかいたい気持ちもあったけど、今日はもう遅いし、この辺にしといてやろう。ウィローさんったら優しい~~~。
私はキャラメルを口の中に放り込んで、ブレイズくんに背を向けた。
「そろそろお風呂入んないとやばいよねぇ......明日も授業だし......」
「......」
「でも最近の『オリエンテーション』さぁ、あんまり行く気起きないんだよなぁ......」
あっそうだ、忘れないように『眠りココア』の準備もしておかないと。
机に粉とコップ置いとけば、お風呂あがりの私 or 歯磨き後の私が、『そうだ! ココア作らなきゃじゃん!』ってなってくれるよね?
「『魔法道具・基礎』もさぁ、最近先生もネタがなくなってきてるのか、なんか最初と比べてつまんないし......」
「......」
「あれかなぁ、やっぱり『基礎』だから、紹介できる魔法道具も限られてくるのかな?」
「......」
「でもさぁ、せめてあの観覧車の説明くらいしてくれたってよくない? だってあれって誰でも目撃する可能性あるじゃん!」
忘れないうちに、『ゆめもりくん』も起動しておこっかなぁ......これはスイッチオンにするだけだもんね。うん。そうしよ。
『ゆめもりくん』って見た目が完全にランプなせいで、机の上に置いてたらダブルランプ現象が起こっちゃうんだよね(?)......やっぱり君の居場所は棚の中だよ......。
「......そういえばさ、時々『ゆめもりくん』点けるの忘れちゃう夜もあったけど、結局何も起こらなかったよね? これも実は『食堂飯は分け合いっこするな』ってやつと同レベルで意味ない掟だったりする??」
「わかりません。何か裏がある可能性はあるとは思っておりますが」
「ひぇっっっこ、怖いこと言わないでよぉ~~」
あれ?? てかやばくない?? 先週『ストレスメーター』の結果提出するの忘れてない??
先週どころか先々週も忘れてない??
やばい!! またお叱りメールが来てしまう!!!! えっとえっと今のうちに測——あれ私『ストレスメーター』どこに置いたんだったっけ?
「ねぇねぇっ、明日の授業サボっちゃってもいいかな? どうかな?? どう思う????」
「俺に聞かないでください」
「うっっでもなぁ......最近サボりすぎだって怒られたばっかりなんだよなぁ......」
「先生にですか?」
「あ......。......う、うん、そうだよ。先生に......」
「......」
『希望している人外が「推奨学科リスト」に載ってほしいのであれば、問題行動は慎んでくださいまし。今後のあなた方の未来がかかっているのですから』
......い、一応校長先生も『先生』だし? 嘘はついてない。嘘ではない! うん!
「はぁぁぁああぁぁぁ......早起きしたくないよぉ......だって今何時? 11時くらい......げっっ12時過ぎてんじゃん!! 0時じゃん!!!!」
「......」
「えっと今からお風呂入るでしょ? そのあと歯磨きでしょ?? そうすれば多分1時くらいに......え~~、只今『オリエンテーション』はサボることが決定いたしました! ミルルンに連絡しとかないと......」
「............、」
「ってことは、お昼までは寝れて......急げば10時間は寝れるっ、よしよしよしというわけでウィローさんは早速お風呂に——」
「ガーディナー。お前は本当にわかりやすいです」
......視界がちょっとだけ揺れる。
背後から手首を掴まれたからか、変に動揺しすぎたせいなのか、どっちなのかわかんない。
「————~~~っな、な、っっなな、にぃ......?」
振り返るのがちょっとだけ怖かった。
でも振り返らないのはひどい、かもしれないから、
私はこめかみの毛で少し視界を覆いながら、ブレイズくんに視線を向ける。
彼はブレスレットを付けてない方の手首を、ギュって、強めに握ってきた。
「......今日、何かありましたよね」
「ん~~~~?? 何が???? なんにもないよ?? ただちょっと先生に怒られちゃったくらいで——」
「いつも通りに振舞ってるつもりなんでしょうが......わかりますよ。それくらい」
「いやいやほんとに大したことじゃないから!! 強いていうなら先生にベコベコ(?)に怒られてしょんぼりしちゃってたくら——」
「今日だけではありません。最近......何か、悩み事があるのではないですか」
「————ぁっ」
『おい、ガーディナー。やっぱお前......最近、なんか悩んでんだろ』
『あの森にいたとき、テオのやつに変なこと言われたのか? それかなんかやべぇことがあったのか? あんときのお前めっちゃ顔色悪かったし!!』
『話せよ!!!! オレたちの仲だろ!?』
......キャベツくんだけじゃなくて、ブレイズくんにまで......。
あ、はは、おかしい、なぁ......
「は、あははっ、そんなぁ~......悩み事なんて、大げさな~......」
私......やっぱりちゃんと、笑えてないんだ............。
「全然元気! 元気だから! 確かに最近考えることが多くて頭パァ~~ってなっちゃってたかもしれないけど、ほ、ほんとにそれだけでっっ」
「......」
『あなたたちは、選ばれし人間です。人外に成る権利を与えられた、特別な人間です』
『賢い選択をしてくださいまし。今後、あなた方が幸せになれるかどうかもかかっているのですから』
『じんがいを、みなごろしにしようね!』
私は何度も何度も何度も何度も何度も何度も首を振った。
もっとちゃんと笑わなきゃ。
口だけじゃなくて、目も、心も全部。
「心配してくれてありがとね!! でもほんとのほんとに平気だから!!!!」
「............」
「そっ......そんな顔しないでよぉ~~~~! せっかくのイケメンFACEが台無しだぞっ! なぁ~~~んて......」
『どうか......取り返しのつかない間違いだけは、犯さないように』
『ネルソービューの、くさった——ひみつ、ぜぇ~~~~~~んぶ。』
『私、アポネ・ネルソービューは......すべての生徒たちの幸せを、願っておりますの』
『しりたいよね? おねえちゃんはまだにんげんだから、おしえてあげる。』
キャラメルをたくさんたくさんたくさんたくさんたくさんたくさん噛んで飲み込んだ。
危うく喉に詰まるところだった。
苦しくなったのに、何故かちょっとだけ安心しちゃったの。
「っっげほっ、ンン゛......ほ、ほら! この通り!! 超超超超大丈夫だからっ!!」
「私のことは!!!! 心配しないで!!!!!!」
「ねっ!!!!!!!!!!!!」
『
許さナイ!! 人外を
『選ばれし人間で
『人外さえいなければっっっ
『すべての生徒たちの幸せを、願って
『 キャラメルなら小腹を満たすのに
『 ガーディナーさんなら、そう言ってくれる、よね
『 おねえちゃ——んはきっと、しんじつ、から——にげられない
『ネルソービューに来る前——記憶を失う前のあーしは、全然違う体やったんやないか、って
『 何も覚えてねぇくせに
『 な、んで............その曲を
『 こんな簡単なことに、四年経っても気づいてないやつだっている
『 両手を使うのがね、好きなの~
『 ここ最近になって、ネルソービューに人間の悪霊が現れ始めたのは、誰か
『 ポエナに裏切り者がいることに気づかれるのも、このままでは時間の問題で
『——~~~っさわらないで
『 高いとこ行っ゛たら頭わけわかんなくなるからっ
『 もし、その声に従いたいって思ってしまったら......どうすればいいの......?
』
「 おねがい」
『人外へと、生まれ変わっていただきマス』
「い゛~~~~~~~っっった゛ぁ゛!?!?!?!?!?!?!?!?!?」
両手でおでこを押さえる。
え、え......え? え? え?? ゑ?? エ????
い、痛い、痛い、痛いですあの、え、えっと、え
「そうですか。そうやってお前は誤魔化すのですね。話したくないのですね」
ブレイズくんは上げていた手をそっと下ろした。
ま、まさか......まさかこやつ、私にデコピンを......っ......!?!?
「なななななっ、なにすんねーーーーん!! 痛いでしょうが!! めっちゃヒリヒリするんですけど!! ねぇっ!! 暴力反対児童ぎゃくた——」
「なぜ話そうとしないのですか? 俺を信用していないからですか?」
口をつぐんで、眉間にしわを寄せて、
瞳の炎をゆらゆらって、
お、
怒、って......?
「俺に話しても意味がないと思っているからですか? 時間の無駄だからですか?」
「えっっっそ、そんなことっ」
「ではなぜ言わないのです? なぜ相談しようとしないのです?」
彼は口を開くたびに、一歩、一歩と私に向かって足を踏み出してくる。
「なぜそうやって一人で抱え込もうとするのです?」
「な、んでって......そりゃあ......だって......」
「目を逸らさないでください」
ブレイズくんは私の手を掴っ、う、うわぉっっっ
ち、近い......目の圧がぁ......。
「ぶぶぶぶぶブレイズくん落ち着こう一旦餅をつこうっ!! な、なんで、なんでそんな怒って、っ」
「怒ってません」
「嘘つけーーーーい!!」
後ずさろうとすると、彼は容赦なく手をグイッて引っ張ってくる。
に、逃げれんっっ、ウィローさんピンチっっ!!
「ぶ、ブレイズ、くん、な、なんでっ」
「怒ってません」
「あ~~わかったわかった、怒ってないねぇそうだねぇっ、ぜ~んぜん怒ってな......——」
ブレイズくんは鼻で息をついた後、視線を落としながら、メガネをクイッて上げた。
その目は、やっぱりどう見ても怒って......いや、怒ってるというよりは......いやでもやっぱり怒って......
......。
「ブレイズくん、も、もしかして......だ......だいぶ拗ねていらっしゃる......?」
「拗ねてません」
「めっちゃ食い気味に否定するじゃん」
「拗ねてません」
「そんな何回も言われると余計」
「拗ねてません」
「ちょ」
「落ち着」
「拗ねてません」
「わかった!!!! わかったから!!!!」
ブレイズくんはまた私と目を合わせてくる。
口は......つぐんでるというよりは、ほんのちょっとだけ尖らせてるように見えて。
目の中の炎は燃え上がっていたけど、怖い感じではなくて。
気のせいかもしれないけど、肩を落としちゃってるようにも......。
......拗ねてるじゃん。
どう見ても拗ねてるじゃん。
私がちょ~~っと誤魔化しただけで、子供みたいに拗ねちゃってるじゃん。
そんなに? そんなに言ってほしいの? そんなに相談してほしいの?
ブレイズくん......そんなに、私のこと............。
「ふ、......えへへっ......」
「何を笑っているのですか」
「んーん? ただ、こんなことで拗ねちゃうブレイズくんが可愛」
「拗ねてません」
「へいへい、そういうことにしてあげますよーーっと」
ブレイズくんはめちゃくちゃ不満そうな顔をしたけど、口を開けたり閉めたりを繰り返すだけで、結局何も言ってこなかった。
......あれ?
なんか......なんか、ちょっとだけ、......軽くなっちゃった。
まだ何も言ってないのに。
まだ、言えるって、思えてないのに。
頭のぐちゃぐちゃも、完全に消えたわけじゃないけど......ちょっとだけ解けてくれた。
解けて、ただの糸になって......小さな火に一瞬晒されて、焦げて灰になる。
灰になった場所が、温かい。
あったかい......。
「......相談......相談、かぁ............」
「やっと白状する気になりましたか?」
「う......う~ん、うぅぅう~~~~ん......まだ心の準備がぁ、と言いますかぁ......」
「またそうやって誤魔化すのですね」
ブレイズくんはさらに不機嫌そうにする。
でも、そんな彼を見ても......何故か、心がギュってなったりはしなかった。
むしろ............。
「............」
「......」
「......その......私......」
「......」
「私、ね......」
「はい。聞いていますよ」
ブレイズくんは私の手を握ってくれる。
今度は、優しく包み込むように。
焚火の周りの空気のように。
まだ少しむくれちゃってるけど......目が......優しい。
『......ガーディナー......』
『今......だけでいいんです』
『............手を......握っていただけますか』
......あのときの私の真似をしてくれてるのかな、なんて。
流石に自意識過剰かな......。
............
......
...
、
「............ブレイズくんは......さ............」
「はい?」
「ネルソービューのこと......どう、思う......?」
これは......『言えた』って、言えるのかな?
相談できてるって、言えるのかな。
それともまだ、逃げちゃってるのかな。私。
わかんない。わかんないけど。
ブレイズくんは目を見開いた。
そして......
「クソです。人外共はやはり我々人間を侮辱することしか脳がないのですよ。人間を人外に変えるだなんて、腐った脳みそでは腐ったことしか考えられないのですね」
「うぉわぁぁああおっっ、ま、まぁブレイズくんはそうだよね、幽霊だもんね、そう......言うよねぇ......」
真顔でポンポン暴言を吐いてくるもんだから、つい笑いそうになっちゃったじゃん......多分笑っちゃ駄目なやつなのに......。
『ブレイズおにいちゃんは——とっくに、しって——るこ、とだよ。』
『ネルソービューの、くさった——ひみつ、ぜぇ~~~~~~んぶ。』
「......ねぇ......ずっと気になってたこと、聞いてもいい......?」
「それは、ガーディナーの悩みに関係することですか?」
「うん......」
「..................いいでしょう」
ブレイズくんは私のすぐ隣に移動する。
今もずっと、ず~~~っと、優しく手を握ってくれてる。
ブレイズくんって、私よりも子供っぽいイメージだったけど......
こうして見ると......ちょっとだけ......ほんのちょっとだけ、お兄ちゃんっぽい、かも。
ほ、ほんのちょっとだけだからね......?
「こ、答えたくなかったら、答えなくてもいいんだけど......」
「......はい」
「ここってさ、人外に『成る』学校でしょ? 人外に『成る』人間が集まって、二年生くらいから本当に人外になっちゃう学校でしょ?」
「そうですね」
「それで、ブレイズくんはこの学校に潜入してる幽霊でしょ?......どのくらい長い間、ここにいるつもりなの......?」
彼は顎に手を当てながら考える。
しばらくすると、再び私に視線を戻した。
目つきが、ちょっとだけ鋭くなってる......。
「俺の目的が遂行されるまで、でしょうか。何年も掛かることはすでに想定済みです」
「......その『目的』って、あの観覧車の砂時計を壊すってやつ?」
「............」
......それは答えられないんだ......。
「えっと、じゃあ......つまり、このまま長い間ここにいるん、だよね? 生徒として......」
「......それは避けられないでしょうね」
「き、気になるんだけど、ゆ......ブレイズくんも、その......人外になれるの?」
「なれますよ。幽霊だろうが、悪霊だろうが」
「なれるの!?!? へ、へぇ......」
「......」
幽霊と人外って違うの?
っていう質問は、なんとなく地雷な気がしたから、聞くのはやめておいた。
それに......答えは多分、『違う』、だろうし。
『人間の幽霊』と『人外の幽霊』って分けて言うくらいだもん。
『幽霊』はただ、『死んじゃった人間、または人外の魂』って意味なんだろうな。
そう。だから......。
............。
「そ、そうそう、それで......最後の質問なんだけどね、ブレイズくん......」
「......」
「ブレイズくんも、人外のことは大嫌いなんだよね?」
「......」
「い......いいの? このままネルソービューに生徒として潜入してたら......多分、無理やり人外にされちゃうよ......?」
「..................」
聞かれるってわかってたのか、彼は特に驚いたような顔はしなかった。
むしろ......少しだけ、微笑んで......
でも、いつもの彼の笑顔とは程遠くて、
影が落ちてて、
炎がギラギラ光っていて——
「ご心配なく」
一瞬、全てが静寂に包まれたような気がした。
「目的のためなら、手段を選ばない。......ただそれだけです」
「そのためなら、人外にでもなってやる」
「どんな手を使ってでも、俺は必ず」
「だから」
「ですので」
「......」
......彼の瞼が、ほんの少しだけ震えた。
「ご心配なく。」
その声は。
私に言っているようにも。
自分自身に言い聞かせているようにも。
遠い遠い、他の誰かに言っているようにも、聞こえた。
次話:2
です、何かが起こりそうです




