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143話:『生憶の蔵』でお泊まり会!?

あらすじ!


ローリエが『例の真犯人を捕まえてん!』とウッキウキで言ってきたから、彼女について行ってみたら......。




「うわ~~~~ん、違うのぉ~~~。わたくしは犯人じゃないの~~~~」

「............」




ミルルンが、天井に吊るされてました。ロープで。




「あら? ウィローちゃん、こんにちは~~」



毛虫みたいになった彼女は、ほわほわ笑顔でゆらゆら揺れた。



「見て見て~~、ローリエちゃんに鉄火巻きにされちゃった~~」

「え......あ......え、え......????」

「それとも、かっぱ巻き? あ~~、もしかしたらモンブランかも~~。ロープがモンブランのクリームにそっくりだわ~~」

「............」



とりあえず私は、首が錆びちゃったブリキの人形みたいに、ギギギ~~~ってローリエの方を見る。


すると、ローリエはもっちもちの頬を赤く染めて......あ、満面の笑み............。



「どうや? ちゃんと真犯人捕まえたで?? これでブレイズが捕まる心配はないやろっ、よかったなぁウィロー!」

「?? え???? ミルルンが犯人なの??????」

「知らん」

「『知らん』!?!?」



どこからツッコめばいいのかわかんなくて、一周まわって笑いが込み上げてきちゃってさ。


とりあえず、しゃがみ込むしかなかったよね。



「......本気であのヒトが捕まってるんじゃないかと期待した私が愚かでした............」

「だってさっ、なんかミルフォイルって怪しくない?? この子のことやし、『なんか倉庫の中に入れちゃった~』『あら~? みんなの記憶があるわ~〜。せっかくなら蘇らせてあげましょ~~』ってやってそうやん!!」

「たっ......確かにミルルンならありえるけど......ッッ」



一応......一応ね? 私は顔を上げて、ミルルンと目を合わせてみる。

ロープでぐるぐる巻きにされちゃったミルルンを、ジト~~~~っと見つめてみる。


すると案の定、返ってきたのは、たまごボーロみたいな甘い笑顔。



「わたくしは犯人じゃないわよ~? 最近犯した罪といえば、勝手にローリエちゃんの苺プリンパフェを食べちゃったことくらいだわ~」

「苺プリンパフェ!?!? 何それ私も食べたいっ、どこに売ってるの!?」

「えっとねぇ~......確かマーケットにある、いたずらグッズ屋さんの近くに——」


「確かにミルフォイルは犯人じゃないかもしれんけどっっ、あーしらに何か隠し事しとるのは間違いないで!!」



ローリエは強く足踏みをしながら、苺プリンパフェのくだりをスパッッと切ってくる。

そのまま、紫のポニーテールも星型ピアスも揺らして、三日月を描くように、



「ミルフォイル!! あんた、ホントは色々知っとるんやろ!? この事件に関係する何かとか!! あーしもウィローも知らんようなこととか!!!!」



え!? そ......そうなの......?



「え~~~? 例えば~~~?」

「それがなんなのか聞いとんねんこっちはっ!!」

「ん~~......そう言われても、よくわからないわ~~」



ミルルンは口を『う』の形にしながら、ゆっくりと瞬きする。

さっきからずっと天井に吊るされてるけど、頭に血のぼらないのかな......?



「う~~~ん......わたくしだけが知ってること......」

「言っとくけどっ、しらばっくれても無駄やで!? 秘密ぜぇ~~んぶ白状するまで解放せぇへんからな!?」

「んふふ~、そうねぇ~~......。............」



重力に従う長髪を見て嬉しそうにしながら、彼女は逆さの猫じゃらしみたいに揺れた。


......でも。よく見たら、少しだけ眉をひそめていて。

逆さになってるせいで気づくのが遅れちゃって、




「わたくしが、最近知ったことと言えば~............」


「相手のことが好きであればあるほど......言えないことが増えていくこと、かしら」





彼女は柔らかく。


それでも、淡々と......呟いた。



つぶあんの粒を握り潰すように。周りの雰囲気を変えすぎずに......それでも、確かに舌触りを変えて。




「と言っても。知ったのは最近、というより......二年生の終わりあたりだけれどね~。つまり去年だわ~~......」




微笑みも。


逆さまだと......こんなに悲しそうに、見える。


私たちを、騙せずにいる。




「......ミルルン............——」


「だーーかーーらーーーっ!!!! そういうとこが怪しいっつってんねん!! 意味深なこと言うだけ言うて物寂しげに笑いよってっっ、明らかに何か隠しとる口ぶりやんけ!!」



ローリエはつま先立ちになると、ミルルンの頬を容赦なくグニーーーってして引っ張って、


ろ......ローリエさん............??



「なに!? つまりあーしらのことが大好きやから、何も言えへんってこと!? なんやねんそれウッッッッザッ、こっちは知りたい言うとんねんから大人しく吐けやゴラッッ!?」

「いひゃいっ、んふふ~~、いひゃいよろーりえひゃ~~~ん」

「嬉しそうにすな!!!!」




あ............。

ミルルン、もう寂しそうじゃない......。


ローリエもキレてはいるけど、なんだかんだ笑いそうになってる。



............すごいな。


ローリエの、こう、雰囲気に流されないところ......いつでもどこでも我が強いところ......やっぱり、ちょっと憧れちゃう。



まるで、あんなちゃん


みたい



......で............



....................................。










「ねぇ、ウィローちゃ~~ん? あなたは、あのオッドアイの男の子が犯人だって、思ってるんでしょ~~?」


「————————え、」




後ずさる。


でも無意識に、すでに部屋の隅にいたみたいで、翼が壁にぶつかっちゃって、





ミルルンは。



あの子の、こと、




「な、んで............知って——」

「よいしょっと~~!」




すると、ミルルンは小さな魔女帽子の姿に変身する。


緩んだロープの間をくぐり抜けて、金色のリボンを髪のように揺らして、



と思ったら、またすぐ人間の姿に戻って......。




「あーーーー!! 抜け出しよったなアンタっっ、それは流石に卑怯やろ!!!!」

「ウィローちゃん」



ミルルンは軽い音を立てながら着地すると、珍しくローリエをスルーする。


気がつけば、彼女は私のすぐ近くにいた。

ふわっと、その存在をワープさせるみたいに。



「ウィローちゃんは......真犯人さんが、本当にあの男の子なのか、知りたいんだよね~?」

「、も......ちろん、だけど......そもそもっ、なんでミルルンはあの子を——」


「それなら今夜、『生憶の蔵』で待ち伏せすればいいわ」



いつもそう。


ミルルンは、いつものふわふわモードじゃなくなったとき............蜂蜜みたいな笑顔を浮かべるの。



秘密を味わうように。舌を出さずに、舌なめずりするように......。




「せいおくのくら、って......まさか、」

「あの『記憶の瓶』を保管する倉庫のことでしょ~? ウィローちゃんも知ってたのね~」



彼女は、パンケーキのような肌に手を当てて、笑った。



「多分なんだけどね~? 今夜はね~、真犯人さんがまた『生憶の蔵』に侵入する予感がするの~。だから、わたくしたちみんなで出迎えてあげましょ~?」

「え......!? い、いきなり!?」

「だってそうすれば、犯人さんに直接会えるじゃん~」




............私は。

また。ゆっくりと、ローリエの方を向いた。


彼女はしかめっ面のまま、肩をすくめてくるだけだった。




えっと。



ミルルンは、あのオッドアイのヒトのことも、『生憶の蔵』のことも知ってて。

犯人が今夜、倉庫に行くかもしれないことまで知っていて。


他にも、私たちが知らないことを知ってて。それを教えてくれるつもりはなくて。



だけど、私たちが『生憶の蔵』に待ち伏せするのはオッケーで......????




「せっかくなら、あの倉庫の中でお泊まり会しない~? わたくし、今から先生に許可取ってくるわ~」

「ちょ——」

「んふふ~、楽しみねぇ~~」



ミルルンは鼻歌を歌いながら、そよ風のように部屋の外へ出て行った。




「えっ、あ......え......えぇえぇぇ............!?」



....................................なんというか。


ローリエが、ミルルンを天井に吊るし上げた理由が......やっとわかったような気がする......。





***


「へっっっくしぃゃあ!! うぅううぅ寒いぃいぃいぃいいっ、パジャマはやっぱり寒いよぉおおぉおおおおお......!」

「ホンマ......よく許可降りたなぁ............?」



『生憶の蔵』の入口の前で、ローリエは真っ白なため息をつく。ついでに、私にティッシュを渡してくれる。



二月の暮れ特有の、刺すような抱きしめるような寒さの風が、私たちの足元を撫でてくる。


先生から許可が降りたって言われても......一ミリも実感が湧かない。どうしても、ホントは歓迎されてないんじゃないかって思っちゃう。



「ミルフォイルあんた、一体どんな話術使ったんよ......?」

「魔法でも話術でもないわ~。トモル先生に許可をもらいに行っただけよ~」



ミルルンは両頬に手を添えながら、照れくさそうに笑った。

......いや......もしかしたら、頬が赤いのは寒さのせいかもしれない。



「トモル先生は優しいからね、基本的になんでも許可してくれるの~」

「あ~~、確かにチョロそうやもんなぁ。キャベツの話によると、あいつはもはや『笑顔拡散委員会』のおもちゃと化しとるみたいやし」

「その通りなんだぜぃ!!」



すると、一角先輩は後頭部を掻きながら、照れくさそうに笑った。

頬が赤いのは、多分寒さのせいじゃない。



「誰かの許可が必要なときは、とりあえずトモルに頼めばいいんだぜぃ! そうすりゃあ他の先生に怒られても、全部トモルのせいにできるぜぃ!!」

「ふーん。じゃああーしも、校内で箒飛ばしてええかアイツに聞こっかなぁ~......」

「いいと思うぜぃ!!」



..................。



「じゃ、じゃあとりあえず、倉庫のドア開けるよ? ミルルンが鍵ももらってきてくれたみたいだし......」

「わかったわ~。んふふっ、お泊まり楽しみね~~」

「遊びに来たわけちゃうからな????」



私は倉庫の扉に近づいて、鍵穴にそっと銀色の鍵を差し込む。

心臓は一応バクバクしてるけど、後ろから聞こえてくる楽しそうな声のおかげで、あんまり気にならなかった。



建物の中は、相変わらず真っ暗闇で。差し込む月光すらも濃く見えるほどで。


だけど、私は知っている。一旦中に入ってみると、そこまで暗くないことを。



「みんなーーー? それじゃあ一列に並んで、ウィローさんの後ろに——」

「わーーい! わたくし、実際にこの中に入るのは初めてなの~~~」



遠足のときの先生ごっこしたかったのに、ミルルンはくるくる回りながら中へ入っていく。ローリエと一角先輩まで私を置いてさぁ、別にいいんだけどさぁっ......。



「うぉっ、お、......おぉ......へ......へぇ~......? まぁまぁすごい感じやん......?」

「ローリエーー? 別にテンション上がってないフリしなくてもいいんだよー?」



彼女は当たり前のように私を無視すると、口をちいこい三角形にしちゃって、目をキラキラ輝かせながら辺りを見渡した。



......あのときと変わらず、辺り一面に広がる星灯り。


瓶に閉じ込められた夜空が一つ一つ、チョコレート色の棚に飾られている。

出入口のドアが閉められると、唯一の光源になった『記憶の瓶』たちは......明らかに、私たちを歓迎してないみたいだった。



図書館みたいに並ぶ棚の間を、私たちは一列になって歩く。倉庫の中も全然寒かったから、私はとりあえずミルルンに引っ付いた。



「はぁぁああ、ミルルンあったか~~い......」

「ちょ、んな引っ付いたらミルフォイルも歩きづら——」


「ねぇねぇみんな見て~~~。この瓶の中に入ってる液体、わたくしが触れようとすると離れていくわ~~」

「......全然気にしてなさそうやな」



ミルルンの言う通り、瓶の中に入ってるジャム(記憶)は、私たちの存在に反応する。


私たちが近くを通ると、中身がふわ~~って波みたいに浮かび上がったり、瓶の側面に貼り付いたりするの。私たちから逃げようとするの。



でも......私の名前が書かれてる『記憶の瓶』は確か、逆だった......よね?


記憶の液体の方から、私に触れようとしてた。私の中に......自ら戻ろうとしていた。



............何か関係あるのかな。




「んふふっ、面白いわ~~。スライムみたいで可愛い~~」

「これって開けたらどうなるんだぜぃ?......いやいや、流石にヒトの『記憶の瓶』を開けるのは......だぜぃ............」



すると、一角先輩は瓶を一つだけ取って、シャカシャカ振って......



......。


............。


........................。




「あ......あのぉ~~~......ものすっごく今更なんだけどさぁ......」



みんなの視線が集まる。

だけどもうツッコまずにはいられなくて、私はつい一角先輩を指差しちゃって、



「ミルルンとローリエが来るのはわかってたよ?? でも、あ、あのね、別に責めてるわけじゃなくてね? ただ純粋に疑問に思っただけというかっ、」




幻覚じゃないよね?? みんなも普通に先輩と話してたもんね??


気づけば当たり前のように一緒にいてさぁ、私たちと倉庫に入ってきてさぁっっ、




「な、なんで............一角先輩もここにいるの......??」

「あぁ、こいつ? あーしが呼んだんよ」

「おう! 邪魔してるぜぃっ!」



あんまり驚きすぎないように口を押さえたけど、それでも喉から「ぴぇぇえええぇぇええ」みたいな声が出ちゃった。



「ろ、ろろ、ろ、ろ、ローリエが?? ローリエが!?!?」

「アカンかった? だってこいつも『笑顔拡散委員会』なんやろ? 事件のこともう知っとるはずやし、別に呼んでもええかな~~って」

「いいけど、も、もちろん大歓迎だけどっっ」



そっっっっっっ..................っか。



ローリエと一角先輩は、知り合い。


そ、そういえば一角先輩この間っ、




『お前たちの友人の、ローリエってやつに......恋しちまったんだぜぃ......』


『まずは相手に話しかけることから始めるぜぃ! パーティーには誘えなくても、クリスマスまでにはマブダチになってみせるぜぃ!』




......それで......そっか......もう今はバレンタインも過ぎて......。


いつの間に......ローリエの方から、こういうのに誘うくらい............!




「ふ......ふーーん? ふ~~~~ん? へぇ~~? へぇ~~~!」

「え、えへ、えへへっ、だぜぃ......」

「え何? 何あんたらニヤニヤしとんの?? こっわ......」


「みんな~~! この辺りに丁度いい空間があるわ~~! 布団はここに敷いちゃお~~~」



なお、何も知らないっぽいミルルンは、ニッコニコで保管ハットから布団を取り出してた。



そのまま私たち四人は、入口からそう遠くない場所にそれぞれ布団を敷いて。



別に、ルー〇スみたいな魔法で杖を光らせて置いてもよかったんだよ? なんならスマホのライトとかでもよかったんだよ?


だけどミルルンが、『せっかくならこの雰囲気を楽しみましょ~』って言って、勝手に棚から瓶をいくつか持ってきちゃって。



よって。

私たちはそれぞれ、勝手にヒトの『記憶の瓶』を隅に置きながら、お泊まり会を開催したのでした。





「「「「............」」」」




......ほ......ほんとに始まっちゃった......。


『生憶の蔵』で、お泊まり会............。





「え~~っと......これからは、ただ待つだけだよね? 真犯人さんがここに来るまで......」




瓶の灯りがあるとはいえ、みんなの顔がくっきり見えるわけじゃない。

布団に口をうずめながら、体を左に向けてみるけど......この人影はローリエ? それともミルルン?



「ま~......しばらくは誰も来なさそうやけどなぁ......。まだ夜9時やし......」



あ、ローリエだった。



「あんたは寝とってもええで? 誰か来たらあーしが起こしたるから」

「ね、寝ないもん!! ウィローさんのこと馬鹿にしてる!?」



この状況で寝れるのは、影武者かキャベツくんくらいだよぉ......!



「ねーねーみんな~、まだ眠くなるような時間じゃないし~、がーるずとーく?ってやつでもしない~?」

「ガールズトーク? ええやん! なぁライケル、今日だけ女子になってくれへん?」

「いいぜぃ!」

「いいんだ......」



今夜。真犯人さんと対面するかもしれない。


あのオッドアイのヒトと、四人で戦わなきゃいけなくなるかもしれない。

そう考えるだけで、心臓が喉から出てきそうになる。



......でも............。




「ガールズトークっつっても、具体的に何を話すん? やっぱ恋バナとか?」

「こ、恋バナ!? べべべべ別にウィローさんどどど動揺なんてしてないけどっっっ」




みんなでこうして、布団に入って......本来いちゃいけない場所にいて......


ブレイズくんもキャベツくんも、オリーブくんもいないけど......こうして女子たちだけでワイワイ話すのは、なんか......


楽しい、......かも............。



な、なんて、ちょ、チョロすぎるかな?? 楽しいってなるのまだ早い? 早すぎ??

流石にもっと緊張感持った方が良い......? だって、いつあのヒトが来るかわかんないしっ




「恋バナ~? それならわたくし、良いのがあるわ~」



布団がこすれる音がする。多分、私の右隣にいるミルルンが手を上げた音。


きっと彼女は今も笑顔を浮かべて、この中の誰よりも楽しそうにしてて————




「わたくしね~。小さい頃、お母さんに右腕を食べられちゃったんだけど~......」





次話:※これは恋バナです

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