表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/18

十二話:良薬は口に苦し

「『砂時計付きのクソデカ観覧車』? あぁ、噂でなら聞いたことあるで」


ローリエは口に含んでたお好み焼きを飲み込んだ後、スマホをささっと操作して、私に画面を見せてくる。


観覧車の、絵、っ



「こ、これ!! これーーーーっ! 私が見たやつこれ!!」



私はローリエからつい携帯を奪っちゃって、まじまじとその絵を見つめた。


七色に光る観覧車。真ん中にある灰色の砂時計。うん、間違いない! あの日見た観覧車だ!



「ネットで調べてみたら結構出てくるよ? これもなんかの掲示板に載ってる絵で、ここの生徒の誰かが描いたっぽいんよな。写真撮ろうとすると映らへんねんて、不思議やなぁ~」



あ、携帯奪い返されちゃった......。



「よ......よかったぁ~~~!! あれ幻覚じゃなかったんだ......」


私は食堂のテーブルの上で手を組んで、なんかの神様に向かってお祈りした。

ありがとう神様!! これで明日は10時間寝れそうだよ!!



もうほんとに私ずっとあの日幻覚見ちゃったのかと思っててっ、だってキャベツくんには見えてないみたいだったし、しかもあれ以降私も見えなくなっちゃったし!


めちゃくちゃ探したけどなかったもん、もう森からこつぜんと消えちゃった感じでさぁっ




「そういえば~、わたくしの『常用魔法①』の先生が、その観覧車の話をしてたわ~」



ミルルンはおにぎりよりも先に食べてたアイスクリームから口を離して、いつも通りにこにこしながら会話に入ってくる。



「突然見えたり、見えなくなったりするんですって~。ネルソービュー学園を卒業するときに乗れるらしいわよ~」

「嘘!? あれ乗れるの!? 乗ってる途中で観覧車消えて落っこちたりしない!?」


いや、でも見えなくなるだけだから落ちることはないのかな......?



「ふ~ん、それはあーしも知らんかったな......卒業する時の儀式的な?」

「わからないわ~。ただ、一年生の間に見れたらとてもラッキーだって先生が言ってたよ~」



ミルルンはテーブルの下からさりげなく私の膝に手を置いて、優しくさすってくる。

近づいてくる緑の瞳は、善意と純粋な愛で輝いてるようにしか見えなかった。



「み、ミルルン? ちょ~~っとくすぐったいかも——」

「ウィローちゃんは特別なのかもしれないわね~」

「————!!」



と、とととととく、......べつ? 


特別? 私が??



......ふ~~~~~ん????



「やだなぁ~っ、そんなことないよぉ~? ちょっと観覧車見えちゃっただけだしぃ~~? ミルルンったらお世辞がうまいんだからぁ~~」

「んふふ~。可愛いわね~」

「ミルフォイル、あんまこいつのこと褒めすぎん方が......」



特別かぁ、なるほどそういうことかぁ! このいかにも特別感溢れるチェリー色の目も、伊達じゃないってことかぁ!!


まぁ確かに?? 私って色んなことに巻き込まれやすい体質っぽいし??

あの例の悪霊さんも私の保管ハットを選んだわけだし? 私のルームメイトもなんかやばそうだし??


そういうのを呼び寄せちゃうのかぁ、なるほどなるほど、だから観覧車もこの私の前に現れちゃったわけね??



「ふ......ふふふ......ウィローさんって呼んでもいいよ??」

「ほらだから言うたやん、この子す~~~ぐ調子乗るから——」


「おーーーーーーい! ガーディナー! チビロリーーー!」



振り返らなくても、声だけで誰なのかわかった。あとローリエの『げっっ』って顔だけでもわかった。わかったけど、結局私は仕方なく振り返ってあげた。


キャベツくんは片手にお茶、もう片方にうどんを持ちながら、食堂のテーブルの間を駆け抜けてくる。

そのまま私の向かいの席に座って、ちょっとだけスープがこぼれてたけど一切気にしてないみたいで、



「よっ! お前らこんなとこに座ってたのかよ~」

「おい!! なに当たり前のように座ってきよんねん、散れっ!!!!」



テーブルの下でローリエが何かしたのか、ガンッて鈍い音がすると共に、キャベツくんは顔をくしゃって歪ませた。


うどんのスープもすっごい揺れてたし、あれだね。ローリエ、多分キャベツくんのこと思いっきり蹴ったんだろうね。



「いっっっってぇなっ、何すんだよ!? いいだろ別にどこで飯食ったって!!」

「どうせまたあーしに喧嘩売りに来たんやろうがワレっ、こっちは優雅に昼飯食っとるんやから邪魔すんなボケ!!!!」

「テメーの飯には『優雅』の『ゆ』の字も無————い゛っっっっ」

「世界中のお好み焼き職人に謝れ!!!!」



そういえば、何気にキャベツくんとご飯食べるのは初めてだな~。キャベツ料理とか頼めばよかったかも(?)。



「あ、そうそう!! 聞いてよキャベツくん、前言ってた観覧車さっ、あれ幻覚じゃなかったよ! 特別な人にしか見えない観覧車なんだって!」

「ふーん」

「反応薄っっ」

「いやだってオレそれ見てねぇし興味ねぇし......」


ボロクソじゃん......。


「んなことよりよぉ、そこの女は初めましてだよな?」

「そうね~。はじめましてだね~」



キャベツくんがミルルンの方を指差すと、ローリエは「指差すな!!」って言いながらキャベツくんの足を蹴る。


彼は怨霊みたいな顔でローリエを睨んだ後、何事もなかったかのようにミルルンの方を見た。だいぶ笑顔が痛みで歪んでるけど。



「オレはオレだ! よろしくな!」

「わたくしはわたくしよ~。よろしくね~」

「あんたらちゃんと名乗る気ある??」



キャベツくん、未だに自分の名前言うの嫌なんだなぁ......仕方ない、ここはウィローさんが助け船を出してやろうではないか!



「ミルル~ン、こいつはキャベツだよ~」

「おいっっ!!!!」

「キャベツく~ん、この子はミルル......」


自己紹介だし、流石にミルルンのほんとの名前言ってあげるべきかな?えっと......


「ミ......ミルフォ......ユ......ミルルンだよ~」

「何諦めとんねん」



うぅぅぅうう!! 未だにミルルンの本名が覚えられないよぉ!! だってミルルンはミルルンだもん、その方が可愛いし言いやすいしミルルンだもん......(?)



()()フォ()()()はなぁ、無害そうな顔してるけど頭おかしいから気ぃつけや?」



うっっっローリエさぁん......そんな目で私を見ないでぇ......。



「『頭おかしい』? またまたぁ、どうせチビロリよりはマシで——」

「なんかの拍子でキスされへんようにな?」

「ゑ」

「んふふ~、キャベツくんなら全然アリよ~」



キャベツくんはどんな反応をすればいいのかわからなくなったのか、口をつぐんだままミルルンの方を見る。

ほわほわ笑顔が返ってくると、キャベツくんは眉をひそめながらフォークを手に取って、ゆっくりとうどんを口に運ぶ。



「......マ?」

「ふふ~」

「......」



最終的にいたたまれなくなったのか、キャベツくんは気まずそうにミルルンから目を逸らした後、わざとらしく咳払いをした。



「が......ガーディナーが食ってる天丼、うまそうだなー!」


露骨な話題変え......。


「一口寄こせよー!」


しかもさりげなく私のご飯もらおうとしてるし......。



「え~~、仕方ないなぁ......あっっっエビは食べないでね!? かぼちゃかナスしか食べちゃだめだからね!?」

「へいへーい」

「あっっっちょあんたら——」



隣に座ってるローリエが拳を握りながら立ち上がったけど、キャベツくんは見向きもせずに天丼をかきこん、で、ちょっっっ



「ねぇ! そんなに食べていいなんて言ってない!!」

「っんだよ、ちゃんとエビは残しておいてやって——」



すると、ローリエの方から思いっきりおでこを叩くような音がして、私もキャベツくんも振り返った。


ローリエは本当におでこに手を当てていて、今までで一番火力の高い(?)呆れ顔を浮かべていて。私たちと目が合うと、彼女は口を栗みたいな形にしながらため息をつく。



「あ~~~~あ! あ~~~~~~~~っあ! やりよった! やりよった~~~! 知らんで? もう知らんであーし?? 知らんからな????」

「は? な、なんだよ急に......?」



キャベツくんは私の方を見て説明を求めてくるけど、ご、ごめん、私もわかんない。


でもなんだろ、なんか......デジャヴ? 前にも似たようなことあったような??



何か、大切なことを忘れてるような——




「あ!! あーーーーーーっ!!!!」

「うわびっっっっな、なんだよお前まで!?」




ネルソービュー学園の掟:食堂で自分がもらった料理は、ぜっっっったいに、他の生徒に分け与えてはならない。



そ、そうだった、この前ミルルンにあーんしてもらおうとしたらローリエに怒られて、


......あ......あ~~......。



「......??......???? なんでガーディナーまでそんな顔......??」



ま、まぁ、食べたの私じゃないし? 


ルール破ったのはキャベツくんだし? 


食べたいって言ったのはキャベツくんの方だし??


わ、私のせいじゃないし! うん。う、うん......




「なに?? なんなのお前ら???? 怖ぇんだけど??」

「キャベツくん......南無(なむ)......」

「ほんとになんなんだよ!?!?!?」




***


死亡フラグを建てまくってたキャベツくんだけど、結局無事みたいだった。


かぼちゃの天ぷらとお米アレルギーではなかったみたい。やっぱりあの掟、意味ないと思うんだよなぁ......。



ご飯を食べ終わった後は、『ポーション学①』の授業。


またまたキャベツくんとローリエと同じクラスになって、で、案の定......。



「あんっっっった今あーしの足踏んだやろ!? 踏んだよな!? わざとやんな!?」

「なぁ~~んのことだかわっかんねぇなぁ~~?」

「いい加減にせえあんた胸ぐら掴んだるぞコラ」

「もう掴んでんじゃねぇか!!」



だけど、先生が全く授業しないタイプの先生(?)だったおかげで、二人とも怒られずに済んでた。



「魔法薬なんてねぇ、レシピ本読んでりゃあ誰にでもできるんですよ? だったら俺いらなくないですか? なんでポーション学の先生なんかやんなきゃいけないんですか?」


講義室に入ってきた先生の第一声がそれ。


それで、先生は素早く私たちにレシピ本と黒い釜と色んな材料?を配布した後、そのまま地面に倒れたと思ったら寝ちゃった。

一応悪魔の翼で体を(くる)んでるけど、布団もかけずに固い床ですやすや寝始めちゃった。


しばらく私たち生徒はシーンとしながら彼を見つめてたけど、やがてみんなレシピ本を開き始めたり、隣の子と話し始めたり、釜の中に適当に材料を注ぎ始めたり......


クラスが賑わっていく中、私は取っ組み合いを始めたローリエとキャベツくんを眺めながらレシピ本を開いた。



わぁ~~、すごい! 色んなポーションが載ってる! これ何作ってもいいの? もう作り始めちゃっていいの?? えっ、何作ろ~?



最初の方のページにあるのは、『疲労回復薬』と、『1センチだけ浮けるようになるポーション』......普通はここら辺の簡単そうなやつから作り始めるんだろうけど、せっかくなら面白そうなのがいいな~。



「おいキャベツ!! それあーしの大麦やぞっ、勝手に盗まんといて!!」

「いいだろ別にちょっとくらい!! オレが作ろうとしてるやつのレシピ、やたら『大麦入れろ』って言ってくるんだよ!!」



最後辺りのページのレシピも見てみよっ!

ウィローさんは『特別』みたいだからねっ、ちょ~~っと難しいポーションでも、ちゃちゃっと作れるでしょ! 多分!



「大麦? なんで? 何作ろうとしてんのあんた??」

「え、っっっと......『体が一時的に透明になるポーション』......」

「なに照れてんねん気色悪」

「うるせぇ!! 男のロマンだろうが!!!!」

「しょーもな」



やっぱりキャベツくんもレシピ本の最後の方に載ってるやつ作るんだなー。じゃあ私は......

『右と左をわからなくするポーション』も面白そうだし、『見えちゃいけないものが見えるようになる薬』も気になるし......『じゃがいもになる薬』!? なんで!? でも気にな——



————————あっ



こ......これは......!!





「これだーーーーーーーっ!!!!」

「うわっっな、何!? どしたんウィロー!?」

「あいつすぐデケェ声出すよなー」



勢いのまま上に掲げちゃったレシピ本を降ろして、そのページを開いたまま机の上に置く。



『嘘をつけなくなる薬』。



こ、これだ......これだ!! これさえあれば、あの忌々しい某メガネルームメイト野郎に怪しいこと全部白状させられるぜ!!!!


もうルームメイトくんのこと考えないって決めたけど、前言撤回! やっぱり気になるもん!

なんで悪霊のこと聞いてきたのかとか、なんで私の名前知ってるのかとか、なんでよく怪我してるのかとか、色々! あとなんで私のこと嫌いなのか!


材料はスズランの葉と、砂糖と、妖精の粉......うん、先生がくれた材料だけで足りそう!



「ぐへ......ぐへへへへ......」

「なにあの子一人で笑い始めたで、こわ......」

「今あいつの頭の上にキメラの糞置いたら気づくと思う?」

「やめたげて」



よっしゃーーーー! ウィローさんのポーション学の腕、見せちゃるわい!!



失敗した。




......うん、失敗した。これ以上ないくらい失敗した。





「あ、あれ......あれぇ............?」




本来は綺麗なオレンジ色になるはずなんだよ?


なのに......なんていうか、紫と茶色が混ざったような?色してるし、なんかすっごいブクブクしてるし......オイルっぽくなってるのか、もはや汚い虹色の膜が張ってあるもん。


お、おかしいなぁ~?? ちゃんとレシピ通り作ったはずなんだけどな......? なんで魚の胃袋みたいな匂いするんだろ......????



「ガーディナーは調子——うわっっ」



流石のキャベツくんのドン引きだったみたいで、手に持ってた大麦を危うく落としそうになりながら後ずさりした。



「ぎゃ......逆に何をどうしたらそうなるんだよ......?」

「......」

「あーしにも見せ——......やっぱ見なきゃ良かったわ」

「............」



ま......まぁでも? レシピ通りには作ったし? ちょっと色とか匂いが違うけど、ちゃんと効果はあるんじゃないかな? あるよね? あるよね??


ほら、見た目があれでも美味しい料理ってあるでしょ? それと一緒!!



良薬は......なんだっけ、すごく苦い?って言うし......


......。



「よーっし! これをルームメイトくんに飲ませるぞーっ!」

「あんたルームメイトのこと殺す気か?」





次話:ぶっ倒れました


です、ぶっ倒れます。よろしくお願いいたします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ