シロクマ
モンスターを倒し終えたので大仁田さんに声をかける。
「長袖にした方がいいんじゃ」
「わかってないっすね。これは俺のアイデンティティにかかわる拘りです。長袖だと筋肉がわかり辛くなるっす」
どうやら大仁田さんの拘りは、この寒さをも凌ぐものらしい。
人にはそれぞれあるから俺がとやかく言う問題ではない。
「いや~寒いっすね」
そんな調子で夕刻までモンスターを狩ながら奥へと進むと周囲の気温はゼロ度に近づき、スーツを着ている状態でも肌寒く感じてきた。
この調子で進めば氷点下に突入するのも時間の問題だろう。
ダンジョンの壁や地面には薄っすらと霜のようなものも見受けられるようになっている。
「グアアアアッ」
前方から地響きのような大きな声が聞こえてくる。
モンスターの声に違いはないが今までのとは違う。
「ようやく歯ごたえのあるのが出たっぽいっすね」
どうやら大仁田さんにはモンスターの正体がわかっているようだ。
この階層ではあまり用をなしていない錆びた剣を構え声のした方へと進んで行く。
眼前に現れたモンスターは三頭。
大きい。
熊。ホッキョクグマを思わせる大型の熊。
ただ、ホッキョクグマよりも大きく、その口からは長い牙が覗いている。
オーガキングとは比べるべくもないがその存在感は際立っている。
おそらくは強い。
「すべてを焼き穿ち燃やす。火は礫、眼前の敵をその礫で炭となせ。五指にその礫を宿し放て『ファイアバレット』」
炎の弾を指に3弾灯す。
「俺はこっちをもらうっす」
「では、私はこっちを」
俺は一番右端の奴だ。
まずは人差し指の炎弾を飛ばす。
その巨体に炎弾を当てることは容易い。
「グオオオオオオオオオオ」
炎弾はその白い毛を焦がし肉を焼くが消滅することはなかった。
どうやらその巨体に似合うだけの魔法耐性を備えているらしい。
続けざま中指の炎弾を飛ばす。
「ガアアアアアアア」
二発目を浴び一瞬怯んだ様子をみせるが、その双眸に怒りの色を浮かべこちらに向け突進してくる。
三発目の炎弾を顔に向け放ち動きを留める。
「おおおおおおッ」
気合の雄たけびをあげ剣を上段へと構え、全身の魔力の流れを感じ剣先にまで意識を通す。
熊のモンスターへと歩を進め、気合と共に剣を首下に沿い振り下ろす。
仏のモンスターであればスパっと斬れるところ、毛に触れた瞬間僅かに抵抗を感じ剣圧が鈍るがそのまま力を込め引き斬る。
「ガアッ」
魔法耐性だけではなく体毛の耐久力が相当に高いのだろう。
さすが、身体が大きいだけあってこれだけ手数を必要としたのはこの階層では初めてだ。
その場へと崩れ落ちたところをとどめをさす。
大仁田さんと湊隊長はまだ交戦中のようだ。
「ボケッとするな! その翼は敵を裂き、その吐息は空を穿つ。幾千の刃を纏いしその気高き咆哮を敵に示せ『ウィンドスピア』」
「助かります。はああああああっ」
湊隊長がクマの側面へと回り込み刀を突き立てる
。
「爆ぜよ。種火を灯したその小さき礫は破壊の烈火。その激しき炎で焼き尽くせ『バーニングボム』」
湊隊長の刀の刃を伝わりクマの身体が内部から爆ぜる。
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急遽、書籍作業が入りモブから共々しばらく更新が遅れます。
1ヶ月くらい籠ります。
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