月下の白浜
『法魔の加護者』ツグミの魔法「転・法魔櫂生」によって、魔神の魔法は強制的に解除されてしまった。
「さぁ、これであなたは魔法を使えないね。どうする?」
「ふん。そんな魔法などなくても『時の加護者』など粉砕してくれる!」
魔神はローキの能力で地中より『龍の顎』を発動する。全ての者を闇に飲み込む龍が大きな口を開けて向かってきた。
—ブゥゥゥ
まるでスマホのバイブレーションのような音がする。
「アカネ様、失礼します!」
シエラが私を抱えると地面から飛びのいた。
クローズの約半径5mの砂浜が砂紋描き沸きだしている。それはクローズの振動波だった。
突如、現れた龍がクローズを飲み込んだ。
天に上昇する龍だが様子が変だ。まるで龍が二重、三重に見えたかと思うと、突然破裂した。
クローズの振動波に揺らされた龍は、電子レンジにいれられた卵のように破裂してしまったのだ。
そして、血で赤くなったクローズが舞い降りて言った。
「おまえの運命は今、閉じた」
久しぶりに聞くクローズのきめ台詞だ。
「『今、閉じた』じゃないよ、相変わらずグロいな」
シエラが顔に飛んできた血をぬぐいながら悪態をつく。
—バギギンッ
天から降り落ちる青く太い脚をシエラの脚が頭上で防御する。
「無駄だよ。僕のアカネ様には触れさせないよ」
「シエラめ! ならばお前を攻撃すればいい!」
返しの脚が鋭い刃のようにシエラを両断しようとする。
—ギギンッ
「それももう無駄みたいだよ、アルデン。なぜか私が考えるよりも前にファンタンの長靴が反応しちゃうんだよね」
このファンタグラスという生き物がどのような生物かは知らないけど、「ファンタンの長靴」がここぞという時に奇跡的な動きをして助けてくれるのだ。
「この! ふざけるな! 小娘」
魔神の背中の腕が大槌を振り降ろすと、私とシエラはまるでリンクしたように寸分たがわぬ速さとタイミングで大槌を蹴りぬく。
衝撃は静かに深く伝わり大槌に亀裂が入るとその亀裂が分岐してそのまま魔神の腕から背中まで粉砕した。
「ぐぁあああ」
そしてそのまま足を着くと半身を回転させその勢いのまま魔神を地面へ蹴り落とした。
砂浜にめり込む魔神。
「魔神アルデン、もうどうやってもあなたは私に勝てない。頼りの魔法が使えないあなたはこのまま朽ち果てるしかない」
「む..ぐ..ぐぐ。そうか。魔法が使えぬ私は負けるか....」
「うん、覚悟して」
「くくく。ならば魔法が使える場所に行けばよい。お前を連れてな!」
空間に穴が開き『千手の恕』が現れると、魔神アルデンとアカネを掴んで消えた!
「アカネ様、アカネさまぁああ!!」
皓々と光る満月美しき未完の白浜。シエラの叫び声だけが虚しく響いた。
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