ファングラスタの長靴
私は「時の加護者」アカネ。
ギプス国の地下、円卓の会議での話し合いは力の集結か分散かが話し合われた。結果、魔王アルデンを迎え撃つのはこの私とシエラが引き受けることとした。他の強者たちは各国の守りをする分散方式をとるこになった。しかし、分散と言っても私たちは強い。決して魔王アルデンに後れを取ることはないと思ったのだ。
—ギプス港—
円卓での作戦会議が終了し、私とシエラは早速ナンパヒ島へと出発した。
船はもちろんカレン調査船だ。
今回はラオス船長以外の船員は王都ギプスで待機することになった。
団長であるカレンも魔人レストの介抱に王都に残ることとなった。きっと愛するロッシの魂を持つ魔人レストと離れたくなかったのだろう。
「よう、アカネ様、シエラさん。今回は船長の俺だけだけどよろしくな。ところでよ、ロッシの兄モリヤには伝えたのかい? あの魔人レストが弟の転生した姿だって」
「ううん。カレンと話し合ってしばらく伏せておくことにしたの。だってあまりにも唐突な話だから。レストが動けるようになったらカレンから伝えると言ってたよ」
「そっか。良かったのか悪かったのか、それはモリヤ次第ってことか..」
ラオス船長は自分の船員であるモリヤの気持ちを第一に考えていた。
「ところでさ、僕たち急いでるんだけど、この船じゃ時間かかるよね。それに船員がいないのに大丈夫なの?」
「はははは。シエラさん、今回ばかりは特別動力さ。まぁ、船乗りの俺としてはあまり面白い事ではないんだけどな」
———それは作戦会議が終わった直後、ドライアドがナンパヒ島のセイレーンに念を飛ばし、手配をしてくれた。
やがて船に、ナンパヒ島の守護者のひとり翠のレフィスが空から舞い降りて、こう伝えたのだ。
『人間、今回だけは特別だ。沖合で大人しく待っていろ。白鯨プーフィスが船を運んでやる』———
「いや、俺は初めて見たよ。あれがポルミスの守護者..いやナンパヒ島の守護者か。船を沈めるからどんな怪物かと思ったけど、なかなか可愛らしい女の子なんでびっくりしたよ」
(へぇ..ラオス船長はああいうのが好みなのか....)
すると、甲板に突然、闇色の穴が開き、漆黒の空間から魔人ローキが出現した。
「びっくりした! どうしたの、ローキ? あなたは王都ギプスを警護するはずでしょ」
「いや、すいません。実はフェルナン国のマジムとリズにこれを頼まれたんです。2人がこれをアカネ様に渡す前に船が出てしまいましたので、私が届けに参りました」
袋の中には長靴が入っていた。
「アカネ様、これは新しいネイルコーデンの長靴じゃないですか」
シエラが目を輝かせて言った。
「これネイルコーデンかな? なんかちょっと違うような..」
袋から長靴を引っ張り出すとシエラがさらに目を見開いて興奮した。
「あっ、あっ! こ、これってファングラスタじゃないですか? もしかして」
「なに? ファングラ?」
「ファングラスタです。ネイルコーデンが成長するとファングラスタになるんです。伝説級の生き物ですよ。アカネ様、履いてみてください」
今履いているボロボロのコーデンの長靴を脱いでファングラスタの長靴を履いてみると、皮がキュっと足の大きさに形を変えた。
世界にネイルコーデンの長靴以上の履き心地はないと思っていたが、その上があることにびっくりした。
脚を少し動かすだけで大きな力が脚に加算される気配がする。
その様子を見てシエラが『いいな、いいなぁ』とずっと言っていた。
いつかシエラにプレゼントしてあげよう。
袋の中には一枚手紙が入っていた。それはラヴィエからの手紙だった。
——拝啓、アカネ。
私は今、このフェルナンにいるのがもどかしい。
でも、アコウの傷がかなり悪化してしまったので、私はアコウの近くにいる事を選びました。今は、回復に向かっているから安心してね。
そうそう、アカネの足のサイズは私と同じだったよね。
王都フェルナンにはいまエルフ族以外にもドワーフ族がいます。
そのドワーフ族のジラスという人のよいおじさんが食事のお礼に靴を作ってくれると言うので、アカネの長靴を頼んでみました。
アカネが『時の加護者』だと伝えると、すごい気合を入れて作ってたよ。
よくわからないけど凄い貴重な素材で作ったらしいです。
それを使って、魔王なんてコテンパンにしちゃって!
私は「時の加護者」を信じているから!———
「ありがとう、ラヴィエ」
私はフェルナンの方角へお礼を言った。
「アカネ様、私はギプス港へ戻ります。どうかご武運を」
そう言うとローキは闇色の穴へ消えた。
・・・・・・
・・
レフィスの言いつけ通り、調査船は沖合でプーフィスが迎えに来るのを待った。
帆柱で羽休めをしている水鳥が一斉に飛び立つと、ガクンと船が大きく揺れた。すると、船がもの凄い速さで動き始めた。
「ほら、アカネ様よ。おいでなさったぜ。特別動力機が!」
ズバァーと大きな水しぶきがあがると、さらに速さが増した。まるで白く大きな大陸が動いているようだ。
船は海の守護神白鯨プーフィスの背中に乗っていた。
★作者こんぎつねからのお願い。
この度はありがとうございます。
実は作者はモチベ維持のためにみなさんの感想などをいつでも受け付けています。
ですので、一言二言でも残していただけると励みになります。
厚かましいお願いですがよろしくお願いします。




