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時の加護者のアカネの気苦労Ⅲ~闇を招く手  作者: こんぎつね
4章 神と月
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戦略会議と丸薬

 私は「時の加護者」アカネ。

 魔人ダリを吸収した魔王アルデンはダリの記憶を覗き見た。そしてナンパヒ島への行き方を手に入れたのだ。今度はナンパヒ島にいる「法魔の加護者」ツグミを吸収しようと奴は考えていた。絶対思い通りなんかにはさせないわ!

—シェクタ国 西の塔—


 ケイキ港での闘いで魔王アルデンは投影魔法を使い、自分は全てを予測して動いていたようにアカネ達に告げたが、あれはまったくの強がりだった。


 本当の所、アルデンはこの異世界アーリーの加護者たちの力の限界を計り切れていないのだ。


 特に「時の加護者」アカネの垣間見せる無限の力が恐ろしかった。


 アルデンは魔人ダリを吸収したが、案の定、思うほどの力を得ることはできない。1+1が2になるとは限らないのだ。


 とにかく魔王アルデンは魔素を使いすぎた。


 今は「千手の恕」により魔界の魔素を手に入れ体に蓄えておくことが先決だった。


 魔王にも休息は必要なのだ。


—王都ギプス—


 王都カイトからは「秩序の加護者」リシュルとバンク、王都フェルナンからは近衛兵マジムとエルフのリズ、そして私とシエラ、魔人ローキ、魔人ルカが遅れて王都ギプスに入った。


 王都の地下深くには、秘密の会議室があった。王国の運命を左右する重大な決断がなされるとき、その円卓にて話し合われるのだった。


 私たちは、ギプス国王スタンに状況を報告した。


 今回、王都ギプスは魔人の襲撃に会うことはなかったが、それでもスタン王は私たちの奮闘に対し『よくやってくれた。君たちは世界の誇りだ』と熱く労ってくれた。


 しかし、私たちが本当に知りたかったのは、円卓に座る見知らぬエルフ族の女性だった。彼女はリズと名乗り、自分は弓隊の隊長であり不老不死で1800歳だと言った。


 だが異世界アーリーの歴史にはエルフ族は存在しない。彼女たちエルフ族もまた魔人たちと同じく創られた記憶を持っているのだ。


 魔人ローキは自分に重ね合わすと胸に痛いものを感じた。


 「そんな切ない顔しないでください、ローキさん。大丈夫です。私たちは皆、全てを知っているんです。私たちの記憶が創られたものだと」


 「うむ..」


「そんな記憶よりも私たちは偉大な光鳥クリルより頂いた英知と身体で運命を切り開いていくことを大切に想っています。それこそ光鳥クリルが私たちに託したものだと思っているのです」


 リズが明るく誇らしく言うと、どこから紛れ込んだのか1匹の永久蝶が円卓の真ん中に舞い降りた。その蝶が羽を広げるとエメラルドの光がまばゆく輝いた。その光はドライアドの姿となった。


 「これは..光鳥ハシル様、いえ、ドライアド様お初にお目にかかります」


 ドライアドはかしこまっているリズに近づくと、彼女を抱きしめて「ありがとう、あのクリルの想いをわかってくれて」と伝えた。


 ドライアドは涙を拭うと、永久蝶から得た情報を皆に伝え始めた。


 魔王アルデンは「不縛の剣」のソルケと「時の加護者」アカネに辛酸を嘗めさせられたことに強い恨みを持っていた。そのため、彼は王国フェルナンと女王国カイトに攻撃の重点を置いたのだ。


 結果的に世界の被害は最小限に抑えられていた。しかし、それでも魔獣の襲撃は各地で頻発し、人々の被害は後を絶たなかった。


 魔の国シェクタからほど近い太陽の国レオの被害が少なかったのは奇跡に近いことだったが、実はレオ国を守っていた男がいたのだ。彼の名はロウゼ。オレブランの隊を率いるグレイブ使いだった。


 会議はこの先の闘いをどう展開していくのかが焦点となった。


 魔人ローキは「三世の眼」で世界を見渡した。


 魔人獣や魔獣の動きが鈍くなっていることからローキは魔王アルデンが魔素切れを起こしていると推測した。


 「私は魔王アルデンが回復する前に攻め込むべきだと思う。こっちには「時の加護者」アカネがいるんだ。魔王アルデンを討ち滅ぼすのは今しかない」


 マジムの意見にスタン王も頷いた。しかしその意見に魔人ルカは反対した。


 「魔王アルデンは思ったよりも策士です。きっとシェクタ国王アルデンの性格が色濃く出ているのでしょう。総力を挙げてシェクタ国に攻め入れば、魔王アルデンは無理をせずに『空間の扉』を使い逃げるでしょう」


 「だが、そんな事を言っていては埒が明かない」マジムが立ち上がる。


 「マジム、落ち着くんだ。僕にはルカが言おうとしていることがわかる。アルデンを討つには戦力を一点に集中する必要がある。しかし瞬時に空間移動が出来るアルデンにそれはあまりにも危険。そういうことだろ、ルカ?」


 「はい。しかも魔素が充実したアルデンの行先は、おそらくナンパヒ島です。それこそ私たちは王手をとられることになるのです。あそこにいらっしゃる「法魔の加護者」ツグミ様に危険が及びます」


 「わかったわ。ナンパヒ島には私とシエラが向かうわ」


 「ならばこのローキも。魔人が起こしたことは魔人の手で始末を付けさせてください」


 「ローキ、お前はアカネ様の真意がわからないのか。アカネ様はここにいる皆を信じているからこそ、アルデンが現れるであろうナンパヒ島へ行くんだ」


 「ありがとう、シエラ。みんなは各地で守りを万全にして。心配しないで、私は「時の加護者」アカネだよ。それに頼もしい「闘神」シエラだって一緒なんだから」


 シエラがうれしさから鼻孔を広げた。


 ドライアドが私の前に来て言った。


 「またアカネに頼ることになりますね」


 「やだなぁ。そんな申し訳なさそうな顔しないで。魔人なんてパッパとやっつけて解決しちゃうから」

 

 私は明るく勢いよく言ったけど、直ぐに魔人であるローキとルカの気持ちに配慮が足りなかったと反省した。


・・・・・・

・・


 作戦会議が終わると、エルフのリズが傷ついた魔将レストに会いたいと言った。


 レストは王宮内の特別室のベッドで寝ていた。


 胸の骨を砕かれたレストは時々血を吐いた。


 カレンはその血によってレストの気道が塞がれてしまわないように細心の注意をしながら看護を続けていた。


—カン カン


 「カレン、入るね」


 「アカネ!」


 カレンは私の隣にいる耳が長く白く美しいエルフのリズに驚いていた。なぜならばカレンもエルフ族を今まで見たことがなかったからだ。


 「この人は?」


 「厳密に言うと私は人ではありません。光鳥クリフよりこの世界に存在を許されたエルフ族のリズと申します」


 リズは堂々と自信に溢れたことばで自己紹介をした。


 「ガハッ.. ヒュ.. ガフッ」


 突然、レストが血を吐くとカレンがすぐにレストの顔を横にし、血を吐き出させた。


 「カレンさん、ちょっと失礼していいですか?」


 リズはその長く美しい手でレストの頭に触れる。その指先は翠の光を放っているようにも見える。


 「やはり、このレストさんは私たちと同じですね」

 「え?どういうこと?」


 「カレンさん、レストさんが転生された事はご存じですか?」

 「はい。以前、魔人ダリから..」


 「魔人ダリは行き場の無い傷ついた魂を癒し浄化する能力を持っていたそうです。そしてその魂を転生させるのが本来の魔人ドルヂェの能力であり役目だったのです。ローキさんがおっしゃっていました」


 息を吸うとリズは続けて大切な事を伝えた。


 「私も転生されたひとりなのです。いや、新たに誕生した種族は皆そうなのです」


 その事実に私もカレンも驚きを隠せなかった。

 

 「私も初めて聞いたよ! じゃ、リズさんも昔は人間だったの?」


 「はい..マジムさんが私を知っているようでした。私をみた時のマジムさんの顔は今も覚えています。それに私も何故かとても懐かしく思えるのです。ですから、カレン様、そのレストもおそらくは前生の記憶の欠片を持っているはずです。きっとカレン様を想う心を今も持っているはずです」


 「うん、そうだね。リズさん、ありがとう」


 リズはお礼を言うカレンに気高く頭を下げた。


 そして手の平を2、3度振ると大気中のキラキラが集まり渦を作り、翠の丸薬へと変化した。


 「これはエルフ族が持つ能力です。空気中にある森の恵みを物質化させ凝縮した丸薬です。これをレストさんに与えてみてください」


 飲み込むことが出来ないレストにカレンは咀嚼し口移しで流し込んだ。するとレストの胸が淡く光りはじめた。レストの呼吸が深い呼吸へと変わり穏やかな顔に変わった。


 「あと3日程眠ればきっと目が覚めるでしょう」


 カレンはリズに抱き着いた。


★作者こんぎつねからのお願い。

この度はありがとうございます。

実は作者はモチベ維持のためにみなさんの感想などをいつでも受け付けています。

ですので、一言二言でも残していただけると励みになります。

厚かましいお願いですがよろしくお願いします。

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