白糸の滝
私は「時の加護者」アカネ。
命をとしたソルケのおかげで王都フェルナンは守られた。魔人ドルヂェは凍結されたが、アコウは深く傷つき、なによりも「運命の加護者」シャーレが行方不明となった。ローキはジイン王の助言にしたがって王都フェルナンから北西山脈にいる光鳥クリルに会いに行くことになった。
—王都フェルナン~北西山脈へ―
ソックスとラインはローキと何故かラヴィエを乗せて王都から続く森の中を走る。
「ラヴィエ様、危険です。魔人は神出鬼没、さらには残虐な魔獣人も作り出しています。どうか王宮内で知らせを待っていてください」
「嫌よ。シェクタのブレス王子は私とカレン、ファシオとで新たな時代を築くと誓った仲間だった。私だって闘うわ。ほら、お父様からこれも借りてきたのよ」
それはジイン王が昔、シャーレの旅に同行した時、授けられた刀燕剣だった。もちろん、ラヴィエはこの剣の使い方さえ知らない。
まぁ、もっとも、いくら魔獣が襲い掛かろうとしても風の速さで走るソックスとラインに追いつける者など皆無だ。
しかし..
[ コノサキ アブナイ ワナ アブナイ ]
何かがラヴィエの耳元で囁いている。
しかも薄っすらと黄金に光るスジのような光が見え隠れしてる。
「ライン、ソックス止まって!! 」
その言葉に従いラインとソックスは2人が投げ出されないように注意しながら足を止める。
「どうしました? ラヴィエ様」
「わからない。ただ森の中で何かが私の耳元に危険を知らせたの。この先に罠があるって」
ラヴィエは注意深く森の中を見渡している。
「わかりました。私の『三世の眼』で森を見てみましょう」
ローキの額の眼が開き森を見渡す。
「危なかったですね。罠は意外にもすぐ近くです。ラヴィエ様のすぐ目の前にあります」
「え? 目の前に? 何もないよ」
[ — イラト・ミズム — ]
するとローキの身体が紫色に光り始めた。
「私を直接見ないように。この光は人の眼の害になります。しかし人の眼には映らないものを映し出します」
ラヴィエの3歩前に巨大な蜘蛛の罠があった。そこだけでなく周りの木々の間にもところどころ巨大な蜘蛛の罠が張り巡らされている。
「危なかった。これに絡まったらまずかったね」
「はい。きっとこの数の罠。何十匹とこの森に蜘蛛の魔獣が潜んでいるのでしょう」
ソックスとラインが罠に鼻を近づけ臭いを覚えたようだ。
[ きゅきゅ~ん ]
2匹は『もう覚えた』と合図をした。
「 誰かわからないけど ありがとう!! 」
ラヴィエが森にお礼を言うと、森の陰で光る人影が見えた。その姿は大人もいれば子供もいる。特徴と言えば、人の耳よりも長い耳を持つ者達だった。
ローキが身体から発する光をおさめると、再び長い耳の者たちは見えなくなった。
「そうか.. そうだったのか.. ドルヂェ.. お前は」
ローキは何かを悟ったように一人呟いた。
再びソックスとラインは風の速さで魔獣の罠を避けながら森を抜けた。
森を抜けると草原が広がり、その先には山脈が連なっている。
この山脈の頂にかつてフェルナン国全土を極寒の地へと変えた冷鳥フロアが住んでいたのだ。今はその冷鳥の血の呪いも、光鳥クリルにより浄化されているのだ。
「光鳥クリルは川沿いを進んだ先に住んでいると言われているわ。進んでみましょう。お願いソックス、ライン」
山に近づくと再び森が広がり、その深々とした森を進むと水がしたたり落ちる音が聞こえて来た。
苔の生えた岩場を通り過ぎると高い場所からいくつもの白糸が降りてくる滝壺へ辿り着いた。
その白糸のカーテンをくぐる様に出て来た冷鳥クリルは女人の姿をしていた。
一糸纏わないようでもあり、薄い光のベールを羽織っているようでもあるその姿は神々しかった。
「あの.. 私はフェルナン国王女のラヴィエです。このローキは—」
「わかっていますよ、ラヴィエ。あなた達がここへ来た理由も。シャーレならば、ここの道を進んだ先の洞窟にいます。シャーレもだいたいの事は把握しています。ですが、ローキ、あなたからソルケの最期を伝えてあげてください」
「わかりました、母上」
その言葉にラヴィエが驚き、ローキを見ると優しい眼差しで涙を流していた。
「ローキ、ちょっと母上ってどういう事?」
ラヴィエの言葉でローキは我に返った。
「し、失礼しました、光鳥クリル様」
「いいのですよ。あなたが間違えるのも無理はありません。ローキ、あなたが母というものは、おそらくは、私の姉、光鳥レイの事でしょう」
「な、何? いったい何が何だか?? 」
ラヴィエは頭を抱える。
「それでは、教えてあげましょう。なぜ、無意識に魔人ローキが光鳥に母親の面影を感じているのかを」
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