道に迷ったら光へ
私は「時の加護者」アカネ。
ソルケが命をとしてつくった「永遠の凍結」から依り代であるブレスを残し、影から抜け出すことに成功した魔人ドルヂェはもはや穢れた魂であるアルデンの姿をしていた。弱体化したドルヂェは存在する要として魔人ジャクの依り代を喰らおうと考える。しかし、放置していたはずの魔人ジャクの依り代が行方不明となった。
—王都フェルナン 大門—
ローキは王都フェルナンに入ろうとせずに抱きかかえたアコウを衛兵に受け渡した。
「なぜ、入らないのですか? 」
ラヴィエがローキに訊ねた。
「入る事などできません。ここ周辺の村を襲い、今また王都フェルナンにて大虐殺をしようとしたあの魔人は私の弟です。とてもこの門より中に入る資格など私にはありません」
苦悶の表情を浮かべながら語るローキの腕をひっぱると、ラヴィエはローキの足を王都の地へ入れてしまった。
「入ったね。これでもう変なこだわりは無しだよ。ローキ、王宮へ行って私の父ジイン王に事のいきさつを説明してくれない? 」
「あなたはお強い人だ。あのアコウという若者はあなたの大切な人なのでしょ。あなたは魔人を憎むどころか、この私の心を惹きつけてしまった。わかりました。あなたのお父上にご説明いたします」
・・・・・・
・・
—フェルナン王宮 大広間—
「そんな.. リテの村、セイル村が壊滅。しかもそんな惨い」
想像を超えた惨状にラヴィエは手で口を押えたまま言葉を詰まらせてしまった。
「で、その村人の顔をした魔獣はまだ生きているのか? 」
「いいえ、ジイン様、魔獣はあのソルケが一瞬のうちに凍結し白い砂に変えました」
「そうか。そんな姿にまでなって生きているのも不憫だ。よくやってくれた。王として礼を言う」
「私は礼を言われる筋合いのものではございません。どうかソルケに言ってあげてください」
「ソルケか.. 」
「お父様、ソルケをご存じなんですか? 」
「私も直接は会ったことはない。ただ『博愛のソルケ』『冷徹のソルケ』『彷徨いのソルケ』など言われている。この事実は数人しか知らない事だが、ソルケはシャーレ様の実の娘だ。ソルケが何千年と生きているのは『愛する者の幸せを見届ける』という運命を選択したからだという。これはシャーレ様やクローズ様も言っていることなのだが、彼女はこの星の全人類の幸せを願った為に、願いが叶うことなく何千年も生きている。または何千年も生きるために、敢えて無理難題な運命として選択したと言われている。だが、私は違うと思うのだ。ソルケの愛する者とは『運命の加護者』シャーレ様の事なのではないかと思うのだ。『加護者』というまるで呪いのような重責の中、生き続けなければならないシャーレ様。ソルケはシャーレ様と運命を共にしようと思ったのではないのか.. あくまでも私の推測だがな..」
「ソルケは死ぬことを許されない母親とともに歩もうとしていたのか。魔人の私にとっての母は幼いツグミ様だが..その思いわからぬわけではない」
「でも、彼女は本当に愛すべきひとを見つけたのね。それがあのブレス王子か。ちょっと私もいいなって思った事があったのに。妬けちゃうな」
しんみりとした雰囲気の中、ラヴィエの言葉は場を明るくした。
「ところでローキよ。シャーレ様とクローズ様の居所がわからないと言っていたな」
「はい。クローズさんが亜空間を開き逃げたのですが、どこへいったのでしょう」
「わからない時、道を示してくれるのは光だ。フェルナンの北西に山脈がある。そこに行ってみるといい。光鳥クリルが道を示してくれようぞ」
その時、ラヴィエが思い立ったような顔をした。
「カルケン、あの子たちをここへ呼んでくれる? 」
しばらくするとドアの向こうに子供の声がした。
「おっちゃん、本当においしい料理ごちそうしてくれるんだろうな」
「お兄ちゃん、意地汚い事言わないの。ラヴィエお姉ちゃんのお願いなんだから」
ドアが開くとそこにはラインとソックスがいた。
「あっ、お前はローキ!...だよな? 」
「なんか若くてカッコ良くなってない? 」
ソックスは顔を赤らめていた。
「ねぇ、ローキを乗せて光鳥クリルのところまで行ってくれない?」
「いいよ、ソックスは。ラヴィエお姉ちゃんの願いだから」
「嘘つけ、お前、ローキがかっこいいからだろ? 」
ソックスはラインの足を思いっきり踏みつけた。
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