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時の加護者のアカネの気苦労Ⅲ~闇を招く手  作者: こんぎつね
2章 永遠の凍結
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レストの涙

 私は「時の加護者」アカネ。

 王都フェルナンを守るため、愛するラヴィエを守るために「アリアの剣」を手に、魔人ドルヂェの前に立つアコウ。そんな覚悟を見たドルヂェは、アコウと同じような思考をもった人間の魂で魔人をひとり創り上げた。魔人の名はレストと名付けられた。レストに残った人間の頃のかすかな記憶。それは愛する者のもとへ帰ることだった。

—王都フェルナン—


 レストの体術は縦横無尽。


 アコウは「アリアの剣」を手加減して使う余裕などなかった。本気で身体を断ち切る覚悟で剣を振るった。


 「アリアの剣」の軌跡は空間ごとレストを切り裂いているのだ。しかし、次の瞬間にはレストの鋭い手刀がアコウの脇腹を裂く。


 これは体術などではない。どこかアカネが使う何本もの足が不規則時間で攻撃してくる柳烈蘭脚(りゅうれつらんきゃく)に似ている。


 「(時間....か)」


 アコウはレストへ剣を振り、素早く2撃目を誰もいない所へ剣を突いた。


 その剣が偶然にも身をかがめ脚への攻撃をしようとするレストの顔をかすめた。


 レストの頬から赤い血が流れた。


 「へぇ、魔人とやらもちゃんと血があるんだな」


 アコウの感は偶然にも的中した。今、レストへ与えた傷はレストには当たっていなかった。剣は間違いなく空を切っていた。


 アコウは一連のレストの身体裁きから動く軌跡を予想して剣を突き出しただけなのだ。


 レストは三次元では動いていない。アコウはそう判断した。


 アコウはドルヂェの眉間がわずかに動いたのも見逃さなかった。そのわずかな反応は勘を確信に変えるには十分だった。


 「アリアの剣」の斬撃は次第に深くなっていった。深く、深く、空間の先にある何かを斬り始めているのだ。


 体術の命であるレストの脚は次第に血まみれになっていく。だが、一方でアコウの身体も血だらけになっている。レストの手刀は槍の様にアコウを傷つけていく。瞼を切られ、アコウの片目の視界は塞がれた。


 2人の実力は拮抗しボクシングで言うところの泥試合になり始めていた。


 ドルヂェが大きなあくびをすると、いきなり「千手の恕」が現れアコウの背後を切り裂いた。


 「 ガ.... 」その斬撃に、アコウはひざまずいた。


 「まったく。レスト、貴様には俺と同じ能力をくれてやったのに詰まらない勝負しおって、飽きたぞ。さぁ、さっさと首を切れ」


 地面に刺さった「アリアの剣」が慟哭している。その振動が大地からレストの脚に伝わった。


 まるで剣が『その男を見ろ』と言っているようだった。


 レストの片目から涙が流れていた。


 レストが見たのは、愛する人を守る為、痙攣する足を拳で打ってまでも立ちあがろうとする姿。自分の命を犠牲にしても愛を貫こうとする姿。そのアコウの姿がレストにある記憶を思い出させようとしていた。


 「 ..カレ....ン」


 レストが何かを呟いた時、空間の穴から「千手の恕」がレストを鷲掴みにして連れ去って行った。


 「この役立たずが! アコウ、規定の変更だ。お前はこの王都がバラバラに破壊されるのを見る。そして私はおまえの悔し涙を楽しむ。どうだ、これのほうが面白い」



 [ アクサタナトール・ラードン ]



 雷雲が光り、荷電粒子がパリパリと音を鳴らし始めた。


 だが、突然静寂が辺りを包みこむ。そして空間にひびが入り、バラバラと割れていくと青い空が広がった。


 「そうか。やっと追いついたのか」


 そこには「不縛の剣」を握るソルケと魔人ローキが立っていた。


この度はありがとうございます。

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