どうぞこの子にお恵みを
私は「時の加護者」アカネ。
ロッシの失踪にジェラが絡んでいるとロッシの兄モリヤが尋問を始めた。闘いの中、ジェラの心の正直さを感じたモリヤはその場を離れていった。モリヤ、あなたの弟ロッシはもう..
—ナンパヒ島 ルル診療所—
「わっ わぁ! 」
隣のツグミの部屋からジェラの大きな声がした。
私たちは急いで隣の部屋のドアを開けると、部屋の至る所にピンクサファイアの蝶が止まっている。
そして、それらはジェラの身体から産まれ出てくるのだ。
「な、なんだ! これは!? 」
モリヤと闘うジェラを見て、ここまでは予想はしていた。問題はここから何が起きるかだ。
それらの蝶は一斉に羽ばたくと、部屋で何度か渦を巻き、泣き喚くツグミの身体の中に吸収されていった。
同時にツグミが泣き止むと突然、6歳のツグミが姿を現した。
「アカネお姉ちゃん、やっと話すことが出来た」
『こりゃ、どういうことだ? ツグミが成長した! 』と腰を抜かすジェラ。
「アカネ様、どういうことですか、これは!? 」
「たぶん、ツグミが説明してくれるよ」
ツグミは頷くと話を始めた。
「ごめんね、みんな。びっくりさせちゃって。私は今、魔法を使って6年後の自分の姿を借りて話をしているの。本当は自分の身体を成長させたいんだけど、そうすると違う世界の私も成長しちゃうからできないんだ。ジェラ、きっと記憶をなくしてもこの機会を待っていてくれたのね。ジェラ、あなたは私のトパーズ・不死のジェラだよ。だからよろしくね」
腰を抜かすほどびっくりするジェラは目をぱちくりして頷くだけだった。
「まだ魔素が足りなくてあまり大きな魔法は使えないけど、癒しの魔法くらいなら使えるよ。ジェラ、私を抱きかかえて魔人の所へ連れて行って」
ツグミの姿はあくまでも未来の自分を借りているだけに過ぎない。本体は生後1歳の赤ん坊なのだ。ジェラはツグミを抱き上げると、ルカの部屋まで連れて行った。
意識のないルカを前にするとツグミの瞳から涙がこぼれた。
そしてツグミはベッド横に立ち、ルカの右手を両手で包むと詠唱ではなく、この惑星への願いを唱えた。
「星よ、この『法魔の加護者』の願いお聞き入れください。このルカは私の大切な子です。きっと私を通して星のお役に立ちます。どうぞこの子にお恵みを」
辺りがサイフォージュの香りに包まれると『未完の白浜』が純白のエネルギーで輝いた。その光は一瞬ではあったが、青い空が消えるほどの輝きだった。それはこの島の地底にある繭からの贈り物のようでもあった。
その純白のエネルギーはジェラの身体で魔素へ変わり、部屋は再び、ピンクサファイアの蝶で溢れかえる。その蝶の輝きだけツグミの魔素は充実していくのだ。
ツグミの癒しの魔法はルカをエメラルドの光で包み込む。やがて、欠損した手足の指、また剥がされた背中や腕の皮が次第に再生されていった。
「ふぅ.. これで身体はもとに戻った。あとはルカの心が元気になるのを待つだけだよ」
魔法を使ったツグミは4歳児の姿になっていた。
「ルカ、ゆっくり休んでいてね」
そう言うと、ツグミもジェラの腕の中で眠りについた。
ところで、「時の加護者」のトパーズであるシエラは、ジェラが自分と同列のトパーズであることに納得できないようで、彼女の中でひとつの答えを導き出した。
「なるほど、あいつはアレですよ。つまりは.. 現世にあった電池を充電するためのアレです」
「充電器のこと?」
「そう、それです。「法魔の加護者」の魔素充電器です」
まぁ、シエラがそれで納得するなら、今はそれでいいかな。
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