ドルヂェの中身
私は「時の加護者」アカネ。
うわわ。やばい。やばい。運命の祠に突如、やって来たのは騒動の原因である魔人ドルヂェだ。魔人ジャクを吸収したドルヂェの力は未知数。私、ナンパヒ島でリゾート気分している場合じゃないよね。でも運命の祠にはクローズだけではなくあの強いソルケもいるし、きっと大丈夫だ..よね。
—フェルナン国 運命の祠—
「ブ.. ブレス.... 」
『やぁ、ソルケ。久しぶりだね。君がシェクタを留守にしている間にいろいろあったんだよ。ほら、僕を見て。君にふさわしい男になった僕を見てくれるかい』
「ソルケ、騙されるな。あいつは真実を混ぜながら嘘をつくドルヂェという魔人だ」
ソルケの弱点は人であるが故の心の弱さ。それを知って揺さぶりをかけている魔人ドルヂェにシャーレは腹が立っていた。
「 ..わかっています、シャーレ。あいつはドルヂェです。ブレスを侮辱する魔人だ」
うつむいたソルケが顔をあげるとドルヂェへ『不縛の剣』を振るった。『不縛の剣』は最大の威力でドルヂェのいる空間を究極の絶対零度で止めてしまった。
「お前は決してブレスではない」
魔人ドルヂェの周りで揺らめいた光さえも今は虹色の氷のようになっている。それはまるでブレスへの光の棺桶のようでもあった。
「うむ。ソルケ、よくやったな。これで騒動は全て終わりだ」
シャーレが言葉と共にソルケの肩に手をかけると、その肩がわずかに震えているのがわかった。
ピキピキと空間が割れる音がする。いよいよ凍結された空間が粉々になり蒸発する時がきたのだ。さらば魔人ドルヂェよ。
しかし割れた空間から平然と歩むは魔人ドルヂェだった。粉々になった空間のきらめきが、彼が歩む姿を美しく演出していた。
『可哀そうな、ソルケよ。このブレスの顔を見ても攻撃するとは、本当の愛を知らないんだな。愛していればこんな事は出来やしないだろう』
「ば、馬鹿な!こんな事が出来るのは時の加護者くらいなものだ」
その光景に慄くソルケ。
冷静に事の成り行きを観察していたクローズの腕輪が鳴動した。次の瞬間、クローズはシャーレを抱きしめ有無を言わさず、腕輪が作り出した亜空間の入り口に飛び込んだ。
「な、何をする、クローズ! 放せ! ソルケ! ソルケー!」
シャーレの言葉が祠にこだましたまま亜空間が素早く閉じる。
『賢明な判断だ。さすがは運命のトパーズ=クローズといったところだな』
「 ..そうだろ。私の自慢の後輩なんだ」
シャーレの身の安全を第一に考えるクローズの行動をみて改めてトパーズの役目を思い出したソルケは、冷静さを取り戻していた。
『運命の加護者シャーレを追うのは無理だな。まぁ、いい。今日はローキ、お前に用がある』
ドルヂェは右腕をやや上にしてローキを指さす。その指の指し方にソルケは見覚えがあった。
「そうか..ブレスの顔を持ち魔人ドルヂェの強さを持つ、しかしその本質はアルデン王か.... 」
『ほう、何故かわからんが、そこのソルケは、どうしてだか本当の私を察しているな。感心したぞ』
『ソルケさん、貴方はここから離れてください。奴の狙いは初めからこのローキなのです』
「そんな事できるか。あいつは既にまともな強さではない。もしもお前まで取り込まれたら3主の力をもってしても手に負えなくなってしまう」
『大丈夫です。貴方が逃げた後、私も隙をついて闇穴から逃げます。この闇穴は私だけの能力です。奴は追ってくることはできません』
ローキは耳打ちするようにソルケに伝えた。
『ふん。 ローキ、お前、隙を見て闇穴から逃げるつもりだろ。私と闘え、ローキ!そしてお前も私の一部になるのだ 』
ドルヂェはローキの考えを見抜いていた。
「そんなことこのソルケがいる限り絶対にさせない。相手ならこの私がしてやる」
『 忌々しい女だ.... そうだ、おもしろいことを思いついたぞ。追っても逃げるというなら、お前らから私を追わずにいられないようにしてやる。 私はいまから王国フェルナンの村や王都を滅ぼしに行くことにした。もしも止めたければ、追いかけて来るがよい』
ドルヂェは4枚の翼を広げ空中に舞い上がった。
「ローキ! 私を止めたければ私を追って闘うのだ。ははははは」
その瞬間、再びソルケの『不縛の剣』がドルヂェを捕らえた。しかし、ドルヂェは何事もないように翼を羽ばたかせ、王都フェルナンへ向かった。
「くそ、何で効かないんだ」
『いいえ、ソルケさんの「不縛の剣」は恐ろしい剣だ。どんな魔人でも振るわれたら動けなくなります』
「 ....そうか、あいつも運命の次元に入り込んでいるのか。クローズの腕輪のように」
『はい。あいつは「千手の恕」を応用し次元を移動したのでしょう』
そう言うとローキの周りに大きなノイズが入った。ノイズが晴れると、そこには老人のローキではなく40代の紳士が立っていた。
「 なるほど、嫌な奴だな、ローキ。お前も絶えず次元の移動を繰り返しているのか。だからお前の依り代の年齢が変化するのだな」
『はい。用心のためとはいえ、申し訳ございません』
「まぁ、いい。これからドルヂェを追うぞ。フェルナンの人々を守らねばならない。ローキ、お前も手伝え」
***
—未完の白浜 ルル診療所—
「よぉし!ツグミ、次は光鳥ハシルだぞ! トゥルルルルルル!」
ジェラがツグミを頭上に抱えながら白浜を走り回ると、ツグミはキャッキャと喜んでいた。
「アカネ様、僕は少し心配です。今のこの状況は大丈夫なのでしょうか.. 」
シエラが心配するのも無理はない。「法魔の加護者」ツグミ、法魔のトパーズ=ジェラ、魔人ルカがナンパヒ島に集ってしまっている。
さらには「時の加護者」の私とシエラまでいるのだ。この状況に何が起こっても不思議ではない。
だが、トラブルは意外にもロッシの兄モリヤによってひき起こされた。
★作者こんぎつねからのお願い。
この度はありがとうございます。
実は作者はモチベ維持のためにみなさんの感想などをいつでも受け付けています。
ですので、一言二言でも残していただけると励みになります。
厚かましいお願いですがよろしくお願いします。




