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時の加護者のアカネの気苦労Ⅲ~闇を招く手  作者: こんぎつね
2章 永遠の凍結
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行き場の無い42億

 私は「時の加護者」アカネ。

 魔人ルカの存在には思った通りレフィスは懸念を抱いていたが、セイレーンの温情で許された。私たちはナンパヒ島へ上陸出来たのだ。一方、ルカの炎に触れた魔人ジャクにある変化が起きていた。彼が魔人たちにどんな影響を与えるのだろうか。


—シェクタ国 西の塔—


 今はまだ3主の加護者とトパーズには勝てない。


 仮にダリが魔獣を呼び寄せ、ジャクが天候を操ろうと、そして自らの「軸を蹴る足と乱を打つ手」を使っても、今は闘神シエラひとりに苦戦するだろう。


 だが、ドルヂェは日々強くなっている。そして、強くなればなるほど、魂に宿るアルデン王の邪心が強まるのを感じていた。


 その邪心にもっとも影響を受けているのが魔人ダリだった。


 本来、魔人ダリは清い心を持つ魔人なのだ。彼女はその清き心のもとに、死した後に行き場を無くした魂を導くことが出来る魔人だ。彼女が最も清き心がある時、魂は安らぎのもとに天に昇るという。


 だが、魔人は正と悪を持ち合わせる。


 彼女は清き心はもっとも濁りに影響されやすい。彼女の心が汚れていくたびに、首にかかる五つの聖なる耀輪(ようりん)がひとつずつ消えてしまう。その代わりに髪、爪、手首、足首、ピアスなど他の部位への装飾が増えていくのだ。そして彼女は淫らな誘惑の花香を放つようになっていく。


 「ダリよ、今日も私の為に可哀そうな魂を集めてきてくれたかい」


 「ええ、今日は異世界でルカの炎に消された人間と繋がる魂がたくさん漂っていたわよ。それに戦争で死んだ者の魂もたくさんあったわ。どれも無念が執着した魂。あなたの好物でしょ」


 現世の世界の人口は約80億人に届く勢いだ。そして世界の死亡率は9%と言われている。年間の死者の概算は少なくとも7億人。現世と異世界アーリーは魂で繋がっている。つまり単純な計算で言えば異世界アーリーにおいても年間に7億人ほどの死者がいるのだ。


 そして突如、異世界アーリーの6年間は取り消された。無い過去とされた。死を取り消され、生きる事も許されない6年間の死者の魂42億もの魂はどこへ行く?


 「ダリよ、私に甘い唇を吸わせておくれ」


 ダリは淫らにドルヂェと唇を交わす。その唇から今日も集められた魂がドルヂェの体内へ流れていくのだった。


 「どう? ドルヂェ、私の唇は美味しかったでしょ」


 「ぐ、ぐふふふふふ! はは.. ははははは.. もう少しだ 」


 今、ドルヂェの目尻に隈取りのような模様が浮かんだ。そして、額が縦に割れると金色の光彩を持つ瞳が輝いた。


—リィ リィリィリリリリィ —


 冷鳥フロアの鳴き声がするとジャクがフラフラと塔の中へ入って来た。


 「ダリ.. ダリ 」


 「あら、ジャクじゃない。どうしちゃったの? ここに入って来てはだめよ。ここはドルヂェと私の愛の巣なんだから」


 「 ..ダリ、俺と一緒に行こう。なんか変だ」


 「嫌よ、行くってどこへ行くの? 」


 「わからない。でもここじゃないところに」


 ジャクはダリの手を引いた。


 「嫌だってば」


 「ジャクよ、嫌がる女性に無理強いはいけないぞ」


 「お前は.. ドルヂェ なのか? だけど.. 何かが違う」


 「ははは。それは私がドルヂェのさらに先をいく存在になりつつあるからだよ」


 「お前は、ドルヂェじゃない.. 誰だ? 」


 ジャクは身構えた。


 「ジャク、どうしたのだ? 」


 「どうもしない。俺は.. いや、俺は何しているんだ。なぜ、ここに..? わからない..」


 「そうか、君はルカの炎に触れたのだな。君の体の中でまだルカの炎がくすぶっている.. なるほど、あの船にルカが乗っていたのか。ならば、もしかして.. 」


 ドルヂェはほくそ笑んだ。その顔は何処までも続く底のない闇を感じるものだった。


 「ダ、ダリ、俺と一緒に..」


 「それは許されないな。今の君をこれ以上ダリに近づけるのは危険だ」



 [ ——ギリアル ザクル ネモレス リシ—— ]

 


 ドルヂェが詠唱を唱えるとダリの身体は青い炎に包まれた。


 ダリに向けて瞳を潤わせながら声の出ない叫びをあげるジャク。


 やがてジャクの背中に浮く4枚の羽根はドルヂェの背中に漂った。


 「君の能力は私が使ってあげよう、ジャクよ。最後に君の質問に答えよう。私は『多くの者』だ」


 同時にドルヂェの額の瞳の中にもうひとつ赤い光彩をもつ瞳孔が加わった。


 横たわるジャクの周りでダリが舞を踊っていた。


 ダリの口から流れる歌はジャクに捧ぐレクイエムなのか、それともさらに進化したドルヂェへの歓喜の歌だったのだろうか?


 だが、無意識にダリの瞳からは涙が流れていた。


★作者こんぎつねからのお願い。

この度はありがとうございます。

実は作者はモチベ維持のためにみなさんの感想などをいつでも受け付けています。

ですので、一言二言でも残していただけると励みになります。

厚かましいお願いですがよろしくお願いします。

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