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時の加護者のアカネの気苦労Ⅲ~闇を招く手  作者: こんぎつね
2章 永遠の凍結
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覚悟と償い

 私は「時の加護者」アカネ。

 ナンパヒ島へ航海中、魔人ジャクが襲来。相手は空からの攻撃に船の私たちはまな板の上の鯉。だけど戦闘経験の差が未熟な魔人ジャクにシエラが圧勝。魔人ジャクへのお仕置きタイムが始まろうとした時、水を差したのはルカだった。やはりルカは敵側に付くのだろうか?でも私は見たんだ。ルカの炎に触れた魔人ジャクが純真な子供の顔に戻った瞬間を。

—ナンパヒ島 ルル診療所—


 〘 ルル、よろしいのですか? 今ならば、まだ追い返すこともできますが.. 〙


 「いいのよ。誰が故郷に帰って来た子供を追い返せましょうか。ここに来るものはみんな私の子供なのよ。セイレーン、貴方の心配はうれしいわ。ありがとう。でも、傷ついたあの子を通してやってちょうだい」


 キャカのツルでテラスの日除けシェードを編みながらルルはつぶやく。


 そのシェードが2枚目に差し掛かったところで、眠っていたツグミが目を覚まし、手足を振りながら『キャッキャ』と笑い始めた。


 「ようやく到着したのね。じゃ、ルルのスペシャル海鮮スープを温めようかね」


***


 —ナンパヒ島 港—


 カレン調査船がナンパヒ島の船着き場に到着するとレフィスが毒着いた。島を守護する役目のレフィスからしてみれば文句を言いたくなる気持ちもわからなくもない。


 「まったく、魔人なんて面倒な奴を連れてきてくれたもんです。本当ならば、いくら3主様の願いでもお断りなのです。今回は母様が特別というから.. 」


 「うん。わかってる、ありがとう」


 「それより、アカネ様.. 最近、私、あなたに会ったような気がするんですよね」


 レフィスが頬を赤らめながら言った。

 

 レフィスにもわずかに消された6年の記憶が残っているのかもしれない。


 「アカネ様よ、あんたは一応、神聖な人だ。魔人を背負うなんてことは俺の部下にやらせるぜ」


 「ううん、ラオス船長、このルカは最後まで私が安全な場所まで運びたいの」


 背中で深い眠りにつくルカに今は少しでも安心を与えてあげたい。そんな気持ちが私の心にはあった。だからルカをルル診療所まで運ぶ役を誰にも譲りたくはなかったのだ。


 その時、船から船員が声をあげた。


 「船長! 密航者です! 」


 「何? まったく.. いつ入り込みやがった」


 ラオスは急いで船に戻っていく。私も好奇心にどんな人が密航したのか見てみたくなった。


 「アカネ様、やめましょうよ。僕、なんか嫌な予感がするんだ」


 「あら、珍しい。虫以外怖いものなしのシエラがそんな事言うなんて」


 「そうなんですよ。僕も自分でもそう思うんです。でもなんか寒気がするんです。なんか、こう.. なんか.. なんでしょう.... 」


 危険というわけでもないようだ。危険ならシエラは虎の威嚇を始めるわけだし、そうなると、いっその事見てみたくなるってもの。


 貨物室に集まる船員をかき分けるラオス船長の後ろをついていく。


 「船長、あなたしっかりと出向前に船員と荷物のチェックはしているの? この船の船長はあなただけど船の資金を提供しているのは私なんだからしっかりしてよ」


 いつもよりカレンの言葉がとげとげしかった。


 「ええ、それに関しては返す言葉がない.. あれっ? こいつは、確かギプスの死刑囚じゃねーか! 」


 「え? あ、本当.. 」


 その瞬間、船員の目線がカレンに注がれる。


 船員たちの前で船長に言った厳しい言葉。その手前、カレンは立場を無くしそうだった。 何せ、今回も死刑に失敗し、そこから逃げられたのは国の失態なのだから。


 「ギプスの人間なら誰でも知っている死刑囚! しかもこの図体だ。俺は船長として、関係ない奴を船に乗せたことに船乗りとして恥ずかしいぜ。てめーらはどうだ! 船乗りは信用をなくしちゃいけねぇ。これは俺の師匠の言葉だ」


 その言葉に船員は皆うつむいてしまった。


 「カレンお嬢様、俺を含め船員も反省しています。もう一度、俺たちに信用回復の機会をください」


 船長が差し出した右手にカレンは彼の心を受け取り、固く握手を交わした。


 さすがラオス船長だ。かっこいいのはヒュー・ジャックマン似の顔だけじゃない。船員たちに船乗りとしての矜持を思い出させ、カレンの立場をしっかりと守ったのだ。


 さて、さて、話もうまく収まったみたいだし、3回も死ななかったという死刑囚さんはどんな顔をしているのかしら?


 船員の間から顔を押し出して覗いて見たら..


 「あっ、ああー!! これ、ジェラじゃないっ!! 」


 私の声に反応して眠っていたジェラが薄目を開ける。 


 「ア..アカネ、腹減った.... 」


 空腹のジェラは再び気を失った。


 横を見るとシエラが何か凄く嫌な顔をしていた。その理由が今わかった。


 白亜事変においてジェラはツグミを命懸けで守ろうとした。その結果、自らの命を『法魔の加護者』に捧げる事となった。それを悲しんだツグミはジェラを不死人として生き返らせ『法魔の加護者』のトパーズとなったのだ。


 シエラにしてみては生前、小悪党だったジェラが自分と同格のトパーズであることが嫌なのかもしれない。


 その気持ちはわからないでもない。


 でも、私は知っている。ジェラのツグミを守ろうとする覚悟はシエラと同じだということを。


 「船長、こいつどうしましょうか? 」


 「そうだな、ギプスに送り返すか。いや、面倒くさいから海にでも捨てていくか」


 「やめろ、人間ども! そんなものこの辺の海に捨てられ、もしプーフィスが喰ってしまったら腹を壊すじゃないか! 」


 レフィスが大声で反対した!


 みんなに嫌われるジェラがすこし不憫..


 「ねぇ、あのね、実は私、その人とは知り合いなの。だから船員さん、その人をルル診療所に運んでくれないかな? 」


 「 わかりましたっ! 任せてください! 」


 「何、勝手に返事してるんだ。お前は新米なんだから黙っていろ。船の事は船長が決めるんだ」


 後ろの方で若い船員がいち早く大きな声で返事をしたが、先輩にどやされていた。


 「アカネ様よ、俺の船に密航して来た奴の処分だ。これは俺に決定権がある。それに俺の船の船員を動かすのもあんたじゃない俺だ」


 「ごめんなさい、船長.... 」


 「いいか! お前ら! アカネ様の頼みだ! その男を運べ!! 」


 「ありがとう、船長! ところで.. 」


 「ああ、あいつだろ。あいつはロッシの兄、モリヤだ。似てるだろ。ロッシが行方不明になった後、船に乗せてほしいと頼み込んできやがった。俺は一回断ったんだが.. 船を持たない自分には、この船で弟を探すしかないって言いやがるからな。まぁ、コック見習いとして働かせているよ」


 モリヤは船から荷物を降ろす作業をしている。時々、自分よりも年下である先輩にどやされながら。その眼には決して揺るがない決意が見えた。


***


—太陽の国レオより、シェクタ国よりも遠い海岸沿いの小さな村


 「さぁ、これを食べなさい」


 痩せ細った子供は、与えられた干し肉を口の中に押し入れると、慌てて飲み込もうとする。


 —ゲホッ、ゲハッ


 「慌てないで、ゆっくり、ゆっくり」


 口に少量の水を与えると、せき込む子供の背中を撫でながら、隻眼の少女は優しく歌う。


~君のこころに 咲く花よ やさしい香りを満たしておくれ ミラジュ香る風のように~ やさしい星のゆりかごは どうかこの子に安らぎを~


 子供は肉を飲み干すと、少女に抱かれて眠りについた。


 「リシュル様、この村にいる孤児はこの子が最後です」


 「そう.. もう少し早く来ていれば.. 」


 「それは仕方がない事です.. それもまた運命だったのでしょう」


 「でも、村の外れの石の数をみたでしょ。あの下には突然、孤児となり寂しく死んでいった子供たちが眠っていたのですよ。これが運命だというなら何て残酷な..」


 「だからこそ、今、リシュル様のような方が必要なのですよ」


 リシュルは腕の中で安心して眠った子供のおでこに頬を充てた。


 その時、死肉をむさぼるマチモチュという巨大な昆虫が土の中から出現した。ルビーよりも固い甲羅に覆われた昆虫は食べた人間の顔に変化するという。


 そのマチモチュの顔は子供の顔であった。


 「 ....なんて事なの」


 リシュルはその浮かび出た悲しみに満ちた子供の顔に驚き、涙した。


 だが、その横でリシュルと旅を共にする付き人が怒りに体を震わせていた。その怒りの波動が脚から伝わり大地を揺らすようだった。


 「き、きさま、リシュル様を悲しませたな。ゆるさん、ゆるさんぞ!」


 付き人の男は大きくジャンプをすると身体を回転させ、そのままマチモチュの固い甲羅に目がけて(かかと)を落とす。


 マチモチュは防衛本能にその甲羅を変形させ、ヤマアラシのような棘を突き立てた。甲羅と思っていたのは、棘の集合体だったのだ。


 だが、男の脚から発する光が触れた先から鋭い棘を空気中に分解してしまう。そして、男の踵が魔獣の甲羅を勢いよく叩いた!


 —バギンッ


 凄まじい衝撃音の後、静寂が訪れる。


 マチモチュの甲羅に亀裂が走る。そして、その亀裂は白い閃光に包まれた。


 浮き出た少年の顔が笑顔に変わると、マチモチュはバラバラに弾けた。その破片は砂になり風に流されていく。


 未だに涙するリシュルの肩に手を置くと付き人は言った。


 「さぁ、涙を拭くのです。今、この瞬間にもリシュル様を待つ子供がいます。行きましょう」


 「わかりました。きっとこれが私に与えられた使命なのですね。ごめんなさい。さぁ、行きましょう、バンク」


 リシュル・レベルス。記憶をなくす前の名はユヅキ・レベルス。


 秩序の加護者の彼女は、誤って時を消してしまった。その罪により彼女は記憶を無くし、能力は制限されてしまったのだ。


 6年間の消された時間に死んだ者は決して生き返らない。


 故に突如、この世界に親を亡くした多くの孤児を生み出してしまった。


 リシュルは記憶を失いながらも孤児を救うために世界を巡っている。


 それは「秩序の加護者」リシュルとしての贖罪なのかもしれない。

★作者こんぎつねからのお願い。

この度はありがとうございます。

実は作者はモチベ維持のためにみなさんの感想などをいつでも受け付けています。

ですので、一言二言でも残していただけると励みになります。

厚かましいお願いですがよろしくお願いします。

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