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世間知らずだった少年

「ま、ここで壊すのはやめておいてやるよ。俺は優しいから。」

「え?本当に?」

これで嘘だったら……ショックだ。

「これは本当。」

これは……ね。

「はぁ……まあ騙されていいんだけどさ。面倒だしね。疑ってかかるのも。」

「なら騙され続けろ。」

「ごめん。それはそれで嫌だ。」

ていうか騙され続けろって……なんだその命令は。いくら私が従順な奴隷でもそれはちょっと従えないよ。

「嘘で塗り固められた愛もそれなりにいいものだと思うんだ……どう?」

「いやだ!なんかいろいろといやだ!そんな愛、悲しすぎる!」

「大丈夫。騙されてるって気付かないようにするから。」

「全然大丈夫じゃないじゃん!」

でもまあ気付かないだろうなぁ……普通に信用しちゃうしなぁ……はあ。いつからこんな子になったんだ私。

「安心しろって。そんなことしないよ。だって俺はお前のものだから。」

私はエリオスだけのものだ。それと同時にエリオスは私だけのものでもある。愛情という名の鎖によって互いが互いを雁字搦めに縛り付ける。

「所有者に嘘の愛なんて……捧げられるわけがない。そんな後が怖いことなんてできない。」

「まあ自分の身を引き裂くのとおんなじだよね。」

しかも自ら。自分の手で。ただの自殺行為だ。自傷行為で自虐行為。

「まあそのことは置いといて……シェール、どうかした?」

「この世の中には僕の知らない世界が山ほどあるということが分かりました。」

どうやら、質問することが多すぎて、質問するのをやめたみたいだ。賢明な判断だね。

「まあね。この世の中は広いからね。」

「それを抜きにしてもシェールは世間知らずっぽいけどね……」

「失礼な!僕は世間知らずなんかじゃありません!」

「……アルファデンテは知ってた?」

めちゃくちゃ初歩的な質問。この国でアルファデンテを知らない人はおそらくゼロ。

「知ってたに決まってるじゃないですか!ていうか僕のことめちゃくちゃ下に見てるでしょう!」

「じゃあジェーランスは知ってた?」

これもものすごく初歩的な質問。

「ルーチェさんは意地悪です…………」

一瞬意識が飛びかけた。かわいすぎだ。なにこの子。そこらの女の子より可愛いって……ええと、シェールは男の子だよね?それであってるよね?

「可愛いよぉ……」

ほら、リインもうっとりしてるよ。なんか小動物とか愛でる目だよあれ。

「腹が立つわね。」

嫉妬してる奴が約一名。うん、気持ちは分かるよ。

「で、知らなかったんだ?」

「急にハードルあげちゃやです……」

「うん、上げてないから。むしろ下げたかもだから。」

というかこの世にジェーランスを知らない人がいたなんて……驚き。

「あぅう。」

なんだろう、めちゃくちゃSっ気をそそられるんだけど!

「シェール、ぜんっぜん世間を知らないんだね。」

「あぅ。」

「いいんだよぉそのままで。かわいーもん。男の子なのにね。」

「はぅううぅ。」

うん、やっぱりここにいる奴らはSだ。もっというとドSだ。

「そもそも山奥で育った僕が世間知ってたらおかしいじゃないですか!」

「いいわけはいいから。」

「いいわけじゃないです!」

「とりあえず、世間知らずなことこの上ないシェールにジェーランスのことを説明してあげるよ。」

「だってさ。よかったねシェール。あ、そうそう。嘘ついたことは忘れてないからね?」

シェールの顔が青ざめる。まあ普通そうなるよね。

「大丈夫だって。そんなひどいことをするつもりはおそらくないから。」

「今おそらくって言いましたよね!」

「……で、ジェーランスの説明だよね?」

「あ、はい。」

「破壊魔、以上。」

「お前それだけで説明済ます気か。」

「だってそれ以外に的確な言葉ってないだろ?」

「なんとなくわかりました。」

「ほら、わかっちゃってるし。」

まあエリオス見てたら分かるよね……だいたいは。

この話のヒロインって誰でしたっけって言いたくなるのは私だけじゃないと信じています。


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