小話 初々しかったバレンタイン
バレンタインデーのお話。ちょっと長めです。
「ハイリツさーん……いないんでしょうか?」
僕、シェールはハイリツさんに会いにアイリアさんの経営している喫茶店に来た……んですが。
「うー……」
店内は真っ暗、ドアにはクローズと札がかかっています。どうしましょう。
「仕方ないですね。諦めて……あれ?」
「にゃー」
可愛い黒猫がやってきました。これは、ハイリツさんがおつかいによく使う猫?
「にゃー」
ついて来いと言わんばかりに猫は歩き始めます。ついて行ってみましょう。
「にゃー」
ここは……喫茶店の前、すなわちルーチェさんたちが住んでいるマンション?
「ハイリツさんってここに住んでましたっけ?」
猫はどんどん進んでいきます。仕方がないので僕も進みます。
「すみません。」
「んあ?」
管理人さんに聞いてみましょう。
「ハイリツさんはこちらに住んでらっしゃいますか?」
「あー? ハイリツ=エイジーン?」
「はい。」
「住んでるよ。908号室。」
「あ、ありがとうございます。」
ドアが勝手に開きました。どうやら管理人さんが開けてくれたようです。
「ありがとうございます。」
「いや。」
もう一度お礼を言ってエレベーターで最上階の9階まで。
「おーやっぱりシェールだ。」
「あれ? ハイリツさん?」
エレベーターが開くとその先にはハイリツさん。
「今日は僕徹夜だったんだよね。」
「はあ……」
「薬は喫茶店で作るわけにもいかないでしょ。だからこっちの家で作ってるんだ。」
ああ、なるほど。
「で、廊下に出てみると、にシェール君らしき人がいたからソレ送ってみた。御苦労さまだったね。」
「にゃ~」
猫はにぼしをもらって満足そうです。
「それで、何か僕に用?」
「え、あ、はい。ちょっと相談したいことが……」
「エリオスも一緒でいい?」
「はい。」
「ならおいで。」
ハイリツさんに連れられて、908号室へ。そこはなにやら散らかってはいましたが意外と明るい部屋でした。
「薬作りするのに暗かったら不便だろ? あ、床に散らばってる紙は見ないふりね。論文とか、その他諸々。まあこまめに片づけて入るんだけど、今日は徹夜だったからね。」
ああ、そういうことですか。僕らは二階へあがります。そこはどうやらリビングのようで、とても綺麗でした。
「シェール?」
「あ、こんにちは。エリオスさん。」
「はい、紅茶。相談だってさ。なに?」
「え、ああ、あの……お二人はチョコレートをもらいましたか?」
そう、今日はバレンタインデー。僕もミリエナさんからチョコレートをいただいたんですが……
「え? ああうん。」
「もらったが。それがどうかしたか?」
「えーっと……ホワイトデー、どうします?」
そう、僕は今まで誰からもチョコレートをもらったことがなかったので、お返しに何をあげたらいいのか分からないんです。
「あー……お前、ミリエナからもらったのか?」
「はい。すごく手が込んでて美味しかったんです。で、何を返したらいいのか分からなくって。」
「なるほどね。じゃあ今度一緒に買い物行く? どうせ僕らも買わなきゃいけないし。」
「いいんですか!?」
「うん。いいよね?」
「ああ。」
よかった。これなら安心ですね。にしてもなんだか二人とも楽しそうです。笑顔ですし……どうかしたのでしょうか?
「ああ、何もないよ。ちょっと、ね。」
「ああ。何もない。」
ならいいんですけど……
その後の会話
「いやあ、ミリエナ、チョコ、あげたんだね。」
「あげないとか言ってたけどな。」
「いつになったら彼らはくっつくのかなー」
「さあ。シェールが鈍いしな。ま、後数年はかかるだろ。」
「だよねー……賭ける?」
「よし、いくら賭ける?」
「そうだなー…………」
この賭けの結果が分かるのはもう少し先の話。
暁とかぶった感がありますが皆様スルーでお願いします。いやあ、たまには初々しいのもいいですよね。この続きはホワイトデーで書こうと思いますー。




