一番の被害者だった奴隷
長めです。ちょいとグロい……ですかね?
「エリオス、何やってんの。」
「破壊活動。」
「来るなとは言わなかったから来たの。」
「……出ていけ。」
「無理。野犬がかわいそうだからその破壊活動をやめなさい。」
「さっき言っただろ。今大変なんだよ。体内で欲求やら衝動やらが荒れ狂ってる。野犬を壊してもまったく収まる気配なし。むしろどんどん荒れていく一方。今ならこいつら全員殺す危険性がものすごく高い。今すぐ出ていけ。死ぬぞ。」
それはそれは……理由はシェールの影響とストレスだよな。多分。
「今は抑え込んでるんだ?」
「一応な。でも、お前らが来たことによって抑え切れなくなってきた。人間が来たからだろうけど。」
「はぁ……なんで抑え込むのかなぁ?」
「は?」
「いや、だってそれなら今ここで私を壊せばいいでしょ?ここなら生徒も先生もいないしね。だれにも見つからない。私を壊すのは確かものすごい快感だったよね?なら壊せばいい。誰でもわかる簡単な理論。どうせ奴隷だしさ。私。」
「ちょっ……ルーチェさん!死にますよ!」
「エリオスに殺されるなら本望かな。ま、この世に未練とかないし。それにこのまま放っておいても野犬がかわいそうなだけだしさ。」
まあ我ながら今回はちょっとヤバいかなって感じだけど。普段なら死ぬほど壊されないんだけどね……
「ルーチェ。とりあえずそれ以上言葉を発するな。今の台詞でどれだけヤバいことになってると思ってる。」
「抑え込まなきゃいいの。そのまま衝動に任せればいいの。そうすれば救われるよ。」
とりあえず野犬が。
「おい!」
「もう……エリオスが刺した程度じゃ死なないって。」
嘘です。普通に死にます。というか壊れます。
「大丈夫。ほら、ここにナイフもあるから。」
昨日研いだばっかりのが。
「これで刺せばいい。刺して、抉って……ね?絶対に気持ちいいよ?」
あぁ……ヤバい。こんなこと言わなきゃよかったかも。まったく……私はなんて馬鹿で愚かなんだろう。こんな奴の奴隷になんてなるんじゃなかった。こんな奴に、すべてを捧げるんじゃなかった。こんな奴を信頼するんじゃなかった……心を許すんじゃなかった。
「死なないから。絶対、死なないから。だから、壊しなさい。」
私はマゾじゃなかったはずなのにな。むしろサドなのに。
「ただ……約束が一つあるんだけど……えーとですね……これで薬の貸しは返したってことに。あと他の人壊したりしないでね。」
「絶対の安全ってそれだったの……それじゃ意味がないじゃない。ルーチェ。あんた死ぬわよ?本当に……死んじゃうわよ。」
「大丈夫だってば。死なないから。人間絶対の自信があればなんとかなる!」
はず。よし。決めた。後でシェールを殴ろう。こうなったのは全部あの純粋すぎる馬鹿のせいだ。すごいですねなんて言わなきゃよかったのに。まあそれ以前に会ってからずっとエリオスは影響を受けていただろうけど。自分と全く逆の存在に。純粋すぎるソレに。悪意の欠片も持っていないソレに。
「さ、楽になりたいでしょ?救われたいでしょ?それなら完全に堕ちたらいいの。」
ゆっくりと私の持っていたナイフがエリオスの手に渡って……グサッと、グチャリと音がした。痛いです。まさか最初から抉られるとは思わなかったよ!
「もうやめてください!」
痛い……痛い痛い痛い。それ以外の言葉は浮かばない。
「やめてください!」
痛い。でも本当に痛いのは壊してる本人だってことは知ってる。だから痛いなんて言わない。心配してるのがシェールだけってのが悲しい。何度も刺される。でも痛みには屈さない。そんなことしたら私もエリオスも傷つく。それでは先ほどまでのすべてが水の泡だ。叫ばない。泣かない。屈さない――――
そして、十分後。
「……ごめん。」
「いいって。けしかけたのは私だから。」
「でも!」
「まあシェール。あんたとりあえず謝りなさい。」
治癒によって復活した私がいた。
エリオスが本当に壊れたら、こんなもんじゃすみません。だいたい奴の武器は大鎌ですしね。ちなみに本当に壊れるには色々と手順を踏むか、理性が完全に飛んでしまうくらいの感情に支配されるか、まあもう一つあるのですがそれはおいおい……その三つのうちのどれかが起こらなければなりません。一番頻度が高いのは三番目だったり。
ルーチェは本当はエリオスのことを信頼してよかったと思っています……よね?うん、思ってますよ。多分……




