壊れていた破壊者
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「で……精霊はどうする?」
「大丈夫。なんとかしたから。」
いったい、この男は何をしたんでしょうか……精霊たちに同情したくなる。
「エリオスさん。本当にすごいですね。」
その瞬間……今まで静かにしていたものが荒れ始める。少しずつ積もっていたものが抑え切れなくなっていく…………漆黒の獣が起きる。
「……ルーチェ。俺は疲れた。」
「は?」
「幽霊が怖い奴がお化け屋敷に入ったら疲れるだろ?」
「まあそうだね。」
「俺はさっきから怖い思いをしてるんだ。精神的に疲れた。というわけで先帰る。」
「そんなの認めません。」
そんな理由で誰が認めるかっつの。
「何が怖いのよ。」
「自分と他人。」
「……真剣に現在やばかったりする?」
「ああ。というわけで、こっから先はお前が適当に頑張って。じゃ。」
はぁ……さてと――――
「追う。」
「さっきの聞いてた?エリオスが自分から引くってことはよっぽどだよ?」
「知るか。あんな臆病者の言うことなんて聞かない。自分のなかにいる化け物が怖いのも、それを隠して笑ってる自分が怖いのも、そんな自分を信用してる人間が怖いのも、そんな人間を簡単に裏切れる自分が怖いのも、純粋に生きることができる普通の人が怖いのも全部知ってる。気持ちも分かる。それでも勝手に逃げるのは許さない。」
どうせ逃げるのならば……ともに冥府の果てへ。
「なんでそんなにエリオスさんは人間失格って感じなんですか?」
「取り巻く環境が悪かったんだよ。あとは……ま、本人の強さかな。」
「強いことはいいことでしょ?」
シェールは全然分かってない。自分がエリオスや私をズタズタにしてることにも、この汚い世の中の理屈も。何一つとして分かってない。
「あいつは強すぎた。同類以外はみんなあいつを心の底では怖がってた。僕だって最初は怖かったしね。いやまあ後々話聞いたら向こうも僕のこと怖かったらしいけど。まあそれはともかくあいつは皆が自分を恐れることを知ってた。だから人間失格な感じになっちゃってるわけだね。はぁ……怖いものは怖いよねぇ……ま、僕は大丈夫だけどさ。どうせ同類だし。あいつ曰く憎悪の塊だしねー……でも他の人たちは行かせないほうがいいよ。特に耐性のないのはね。ただただ地獄を見るだけだし。」
「全員ついてきなさい。」
冷酷だと思う。私は高所恐怖症の人に高層ビルに屋上に連れて行こうとしているのだから。
「まあ、どこに行くかは分かってる。大丈夫。私は見捨てない。絶対に。怖がらないし見捨てない。裏切らないし痛みを与えることもしない。そのかわり救ってみせる。というわけで、皆さんに危害は加えさせません。だからついてきなさい。」
「はぁ……なんで怖くないのよ。おかしいわ……」
「同類だからかな?私も人間失格っぽいからね。大丈夫。絶対に何もしないようにするから。危害は加えさせないよ。」
絶対にそんなことはしない。もしもエリオスが狂ってたとしてもみんなには危害を加えないようになんとかする。ように努力する。最悪ハイリツ頼みで。
「まあせいぜい頑張ってね。できる限りの援護はするし。ていうか、ルーチェのほうが危ないね。今。」
「何がよ。」
肉体的に破滅に向かっていこうとしてるのは知ってるけど?
「ん?分かってないねぇ。これだから――――は……いいかい?君があいつを救うのは無理だ。分かってる?この世界に救いなんてないよ。あるのは少しの幻想だけ。あいつを救えるなんて傲慢だ。愚かにもほどがある。絶対不可能なんだよそんなこと。この世界では、救われたいのなら、永遠に幻想を見るように自分で暗示でもかけなくちゃ。」
これだから~のあたりは聞き取れなかったけれど、言いたいことは理解した。
「……分かってる。それじゃあ手遅れにならないうちに行こうか。裏山に。」
ハイリツが全然分かってないよと呟くけれど、そんなものは無視。そのかわりにシェールの質問を聞く。
「なんでですか?あそこ危険なんじゃ……」
「野犬がたくさんいるの。だから立ち入り禁止。でもね、何かを壊すのには最適な場所なの。」
私の予想が外れてなければ……裏山で野犬を壊してるはず……なんだけど。
「ビンゴ……みたいだね……」
「うん……」
裏山は真っ赤に染まっていた。おびただしいほどの鮮血で。
「はぁ……本当にもう……」
とりあえず進んでいく。ぴちゃぴちゃと音がする。ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん♪なんて気分ではないけどまさにそんな感じだ。
「うわ……血の海だねこれ。」
そしてその血の海の中心に漆黒の存在はいた。
ハイリツが言った言葉は後々分かる予定。エリオスは過去は克服していますが(ほぼ)自分の本能と恐怖には逆らえません。当たり前ですが。後、ハイリツが恐れられているのは力が云々とか言うよりは精神が一番歪んでいるからでしょう。それにエリオスは壊すだけですが、ハイリツは拷問しますからね。それも嬉々とした顔で。それが恐怖だったのでしょう。いや、そりゃ誰だって恐怖だよ。うん。エリオス、君は正常だ。




