長かった電話
長め。
「エリオス?」
『あぁ。なんか用か?』
「とりあえず、もう少し早めに電話に出ようね?」
待たされる側の気持ちになってほしいものだ。本当に。
『で?何の用?』
スルーかよ!
「ちょっとばかしお願いが。」
『どんな?』
「薬を作ってほしいなぁと。二日酔いの先生がいてね。かわいそうに思って……。」
思ったのは私じゃないけどね。
『で?対価は?』
やっぱりそう来たか。最悪だ。対価なんて……ボランティア精神がない奴だ。
「ボランティアで。」
『そいつは無理な相談だな。』
あぁ……これだから交渉は嫌いなんだ。
「3万。」
『家の中で金回してどうする。』
ですよねぇ。えーえーわかってましたとも。ダメもとで言っただけですとも。
「じゃあ暇つぶしってことで。」
『薬作りは暇つぶしのうちに入らない。』
「……そこをなんとか。」
『そもそも俺は薬剤師じゃねーし。』
「そうだけど!」
知り合いに薬が作れる人があまりいないんだから仕方がない。いや、私は作れるけど材料がないし。もう一人いるんだけどそっちは事情により夜しか薬を作らない。その人は本当の薬剤師なんだけどね。
『それだけか?』
「うん。」
『じゃあ、切らせてもらう。』
「ストップ!」
私は必死で考える。どうしたら薬を作ってもらえるか。いや、どうすれば最小限の被害で薬を作ってもらえるか。
「その先生美人だよ。」
『んなこと関係ないね。』
だよね。困ったなぁ……・
「美人から感謝されるんだよ?」
『どうでもいい。興味ない。まあ、お前が俺に泣いて懇願するってなら別だけど。』
この男、たぶん史上最悪なんじゃないのかな……いや、私の叔父のほうが最悪だけど。
「泣くわけないでしょうが。」
『しかも泣くとしたら俺のためじゃなくてその先生のためだもんな。うわ。急にムカついてきた。その先生壊していい?』
どうしてこう、たいして欲がない――――というかどう考えても欲っていうものが欠如しているくせに、独占欲と破壊欲だけは強いんだろう。食欲も睡眠欲もないくせに。ていうか、なんで私こんなのの標的になったんだ。
「うん。だめだと思うよ。しかも泣かないって。そこまで先生と仲良くないよ。そんなに泣いてほしいなら死ねば?エリオスが死んでくれたら絶対に泣くよ。」
『それは嬉し泣き?』
ひどい奴だ。分かってるくせに言わそうとする。
「さすがにそこまで冷たくありません。というか、多分狂って壊れるよ。」
『つまり、俺のためだけに泣いて狂って壊れてくれると。今から死んでいい?』
「だめ。絶対。何が何でも。そんなことしたら、速攻で世界を壊す。」
『冗談だよ。で?どうするんだ?何を対価にする?』
「はぁ……とりあえず貸しってことで。」
もうこれぐらいしか思いつかない。こんなことばかりしてるのが平穏を崩す原因に違いない。
『了解。適当に休み時間に持ってく。』
「じゃあよろしく。」
あっけないよな……今まで知恵を振り絞っていた時間はなんだったのだろうか。いや、そういう奴だって分かってたんだけどさ……
題名を電話(のコール音)ととるか、電話(での交渉)ととるかは皆様の自由です。
もう一人の薬剤師の事情はあほらしすぎる事情。後々出てきます。




